あたしが壊したんだよね?
そう伝えた・・。
此の悪い流れ、雰囲気を変える必要が有った。
「そんな言葉を使うな!俺の可愛い妹はそんな事を言わない!、そして言わせない!」
頭を軽く小突き我に返った様だが、今度は声を上げて泣き始める。
「ごめんなさい、ごめんなさい、でもあたし悔しい。そんな人の為にお兄ちゃんが帰って来てくれないのが、お兄ちゃんの帰りを待ってる人も居るのに、あたしも良い子にして褒めて貰えるように寂しいのずっと我慢してたのに!」
聞いた此方まで悲しくなる声…。
「悪い兄ちゃんでゴメンな、でも自分に嘘が付けなくて、罰当たりな事をしてしまったし、此の世から消えて仕舞った、その命も見てしまった。多分帰れないと思う・・」
そう伝えた・・。
更にその声は大きく為り、其の背を撫でて上げる事位しか出来なかった…。
暫くして、気持ちも落ち着き涙も泣き声も収まって居た。
「おにいちゃん怪我した所見せてよ、本当に大丈夫なの?」
忘れて無かったのか。
「大丈夫だよ、傷も無いし、ただ触ると判るよほら。」
手を触れさせた、勿論服の上からだが。
「えっ、こんなに為って仕舞ったの?」
反対と触り比べて解った様だ。
左の太腿の左側、右と比べるとハッキリ判る、抉れた様に凹んでいる其処だけ見たら気付かないが。
「こんなに為ってるのに痛くないの?本当に?」
「嗚呼、大丈夫だよ心配しなくて良い」
頷いて肯定して上げると漸く理解し、安心したのか少し微笑んで呉れた。
「お兄ちゃん黙ってれば誰にも判らないよ?、一度帰ろうよ!、そうすれば気持ちも変わるよ?」
有難い言葉だった、家族の言葉はやはり温かい、気持ちも揺らぐでも未だ怖い。
帰る事を考える度にフラッシュバックだろうか看護師が手に持って居た景色が現れる。
まだ無理な様だ首を振った。
まだ無理だと判って呉れた様だ、でも何でこんなに親身に為るんだ。
普通妹は、ある程度の年齢になると兄の事を避けるようになるとよく聞くのだが?。
「普通お前位の歳になると、兄貴を嫌うもんじゃ無いのか?よく聞くぞ?」
「何でそんな事聞くの?あたし昔も今も大好きだよ!今はもっと好きに為ってるけど…♥」
<まあ、嫌いと面と向かって言われるよりは良いに決まっているが…。>
「ずっと前からお兄ちゃんに謝りたかった事が有るの。」
俺が謝る事は山程有るが、謝られる事等などとんと見当が付かない?
「お兄ちゃんのオートバイ、あたしが壊したんだよね?」
俺のバイクを壊した?、嫌、全く覚えが無い?、壊れてた事も無い?、コイツ何の事を言って居るんだ?。
不思議そうな顔をして居たんだろう、諭すように語り始めて居た。
「あたし、右の前のところが壊れたオートバイ見てすごく悲しく為った・・」
嫌、そんな処壊れていた記憶が無いぞ?、何を言ってるんだ?、思わず顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃん解って無いんだ、確かにあたしが直接壊した訳じゃ無いけどね・・・。」
直接壊した訳じゃ無い?、何を言ってんだ?
「お話に行ったのに、幾ら起こしても起きなくて、怒ってお母さんに文句言ったの!」
話が繋がらないんだが?・・、お袋も出て来たし、ますます訳が分からんぞ?。
「お母さんが、寝かしといて上げてって言うし、起きたら絶対文句言ってやろうって!」
「はいっ?」
「おかしいよね?、さっき迄はお礼言おうと思ってたのに、今度は文句言うだって。」
嫌、お前本当に何言ってんだ、今の処全く見えて居ないんだが?。
「それで、もう良いって怒って、まー君連れて外に出たの・・。」
ますます頭が混乱する、然しかも新しい名前も出て来た、まー君て誰だ?、遥か昔に俺をお袋がそう呼んでは居たが、寝てて起きないって言ってるし、全然話が見えてこない。
「やっぱり、お兄ちゃん分らないか?」
クスクス笑っている。
「表に出て、見えた途端に悲しく為った、さっきお兄ちゃんに事故に遭ったって聞いた時、その時も全く同じ気持ちだった、あたしの知らない所で危ない目に逢ってた・・。」
風呂でさっき言って居た言葉に繋がるのか是?、取り乱して訳の分からん事言ってたよな?。
「あたしが我慢出来なくて、お兄ちゃんに危ない事させたんだって・・。」
「全く覚えが無いんたが?」
「周りのみんな不安そうだったし、まー君居ないし、お父さんとお母さん困ってたし。」
何なんだ一体?、コレって謎掛けなのか?、俺が頭が悪いからなのか?、何を言ってるか分からない。
「まだ分らない?、そこはお兄ちゃん変わらないよね、今も困ってる人ほっとけないもんね。」
寂しそうな顔に為って居た・・。
「ウインカーだっけ?、そこにテープが巻いて在ったの、これで分かった?」
嗚呼、そうか台風の日の事言ってたんだ、でも何でコイツせいに為るんだ?。
「今なら分るよどんな危ない中お兄ちゃんが走って行ったのか、あの時は分らなかったけどね…。」
「風雅お前台風の時の事を言ってるんだよな?」
小さく頷いた。
「大人の人でも不安に為ってたし、凄い風の音、叩き付ける雨の音、あたし怖かったからおかあさんにしがみ付いて泣いてたのを覚えてる、本当に怖かった・・・。」
まあ、あの大型の台風じゃ怖くてもしょうが無い、外海側に出て行く時俺でも恐怖したから。
あの打ち上げる波に俺も引き返すことを頭を過ったんだから・・。
「熊さん持って来るからな、そう言って頭撫でて呉れたの今でもはっきり覚えてるよ・・。」
<あの時も中断する事考えたが、届けると約束してるからと自分を奮い立たせたのだから。>
「だから悲しかった、壊れた処見てお兄ちゃんがみんなが恐がる中を危ない思いして走って居たんだと判った、あの時あたしが恐がらなきゃ危ない事しなくても良かったんだって分かったから」
「だから危ない事も辛い事もしないでよ、もう良いから傍に居てよ、お仕事は仕方ないけどそれ以外は必要無いでしょ、ずっとあたしと居てよ、ずっとあたしのお兄ちゃんで居て・・。」
声を上げて泣き出していた、いつまでも…、また背中を撫でていた泣き止むまで・・・。
「でもな、何時かは俺もお前も相手を見つけて結婚するだろう、何時までも子供みたいな事言ってられ無くなるんだぞ、其れは判るよな?」
すすり泣きに変わって居た、そう兄と妹こればかりは永遠に変わらない、どこ迄行っても交わる事の無い平行線。
逆に死んでも兄妹であり続けるが。
「やっぱりここから学校に行く、そしてお兄ちゃんの面倒みる!」
判って無いのか?。
「駄目に決まってんだろ、親父たちが許す訳無いだろ?」
「やって見なきゃ分らないでしょ!、高校出たら結局どこかに行くんだから!」
言い出したら聞かなく為って居た、何でこんなに頑固なんだ、コイツ誰に似たんだ?
まさか俺か?・・。
コイツ誰に似たんだ?




