本当の理由
お片付け!
「お片付け!、お片付け!」
パタパタとスリッパの音を立てながら居間と台所を行き来する。
「一寸話が有るから此処に座れ!」と言っても聴く耳を持たず作業を続行している。
「今お片付で忙しいの、お風呂涌いてるから先に入っちゃって!」
「その前に、さっきの話を聞きたいんだ」嘘を付いた真意が解らない。
「その話なら後で聞くから、明日は仕事でしょ時間が勿体ないよ?」
確かに明日は仕事だが、気に為り其れで気が散った状態で乗務に当たりたくない。
其れで接触事故を起こした事を思い出してしまった。
「じゃあ、後で聞くからな、気に為って事故を起こすのはもう御免だから。」
「お兄ちゃん、事故に遭った事が有るの?」手が止まって居た。
「嗚呼、一度だけな、もう一瞬気付くのが遅れたら大怪我してたかもな?」
「怪我は無かったの?」両手でエプロンの裾を掴んでいた。
「怪我と言うのかは分らんが、今も其の痕は残っているけどな」凹んで仕舞った足を摩った。
「見せて‼、見せてよ‼、ヤダヤダ‼お兄ちゃん、お兄ちゃんが・・。」涙目に為っていた。
「そんな心配する事は無いから、落ち着けよ。」脇に座った頭を撫でていた…。
震えはずっと止まら無かったが…。
「先に入って来るから、後で聞かせてもらうぞ。」
言い残し風呂に向かった。
湯船に浸かり此処後何であんな事を言っていたのか、なにを言って来るのか考えた。
まあもうすぐ解る事だ、温まったし頭を洗うのに湯船を出た。
やはり狙って居たんだろう、お約束通り入って来た。
想と違ったのは・・・。
「お兄ちゃん、どこを怪我したの?どうして教えてくれないの?」と泣きながらだった事。
「馬鹿何で入って来た‼」と当たり前のセリフが出ていた。
「こっちなの、どこなのよ!」と泣き声を上げていた。
「教えてよ!痛くないの?本当に大丈夫なの!お兄ちゃん教えてよ!」叫び声に為って居た。
「馬鹿そんな所に触るんじゃない!」接触した左太ももを撫で続けている。
いくら妹とはいえ抑えが利かなくなってしまう、これ以上罪を重ねてしまう訳にはいかない、
「お兄ちゃんが、お兄ちゃんが怪我してる!」両親にも顔向け出来なくなってしまう。
「あたしが我が儘言ったから、あたしが我慢しなかったからお兄ちゃんに怪我させた、ごめんなさい!、ごめんなさい!」と繰り返し完全にパニック起こしてる。
擦る度に手が触れて仕舞い、刺激され反応し始めた、<もうこれ以上は抑えが利かない>。
そして「キャッ」と短い悲鳴が上がった。
「落ち着け、正気に戻ったか!」シャワーで冷水を頭から被った。
勿論二人とも、コイツを正気に戻すのと、俺自身を諫る為だった。
「お兄ちゃん寒いよ…」震えて居るので直ぐに温かいシャワーを浴びた。
躰の震えが止まらないので、浴槽に入り抱いて上げた、冷えた体を温めてた。
「ごめんなさい、あたし怖かったの…。」
その後の言葉は暫く待ったが出て来なかった…。
お互いに全て晒してしまったので、幼少の頃の様に気負う事無く躰を拭いて上げていた。
邪心無く<本当に綺麗に成ったな、これからもっと綺麗に成って行くんだな・・>
兄として嬉しくは在ったが、何処の誰かが何時か拐って行くんだな・・。
アイツら見たいには為らないでほしい、生涯愛する人だけに抱かれ添い遂げてくれる事を。
其れだけを願わずに要られ無かった。
「お兄ちゃん今日も一緒に寝てもいい?」
恐る恐る聞いて来た。
何を今更とは思ったが
「おいで」
とだけ伝え手招きし心地良い重みが左腕に戻る。
漸ようやく笑顔が戻って来た、でも今日の会話の真相は聴かない訳に行かない。
親に嘘を付いたのだから、どう話を切り出すか考えていたのだが・・。
「お兄ちゃん怒ってるよね?お母さんに嘘付いたから。」
本人が語りだした。
「お母さん達心配してる、お兄ちゃん一度も帰ってこないから騙されて悪い女に捕まったんじゃないかって。」
まあ実際その通りなんだよな、騙された訳では無いのだが・・。
「お仕事忙しくて帰ってこれないなら安心してくれる、あたしが言えば信じて呉れるから!」
不味いな、これ以上コイツには心配させられない。
「お兄ちゃん、帰って来れない本当の理由教えて呉れる?何でなの?」
真っ直ぐ俺の眼を見つめている、もう誤魔化しは通用しないんだな・・。
知らないで居て欲しかったのだが、そうしないと納得して呉れないんだろうな・・。
「俺・・、人を殺してしまってるんだ、一寸違うか?手を貸したと言った方が正解だな・・。」
眼を丸くし、躰の震えが伝わって来る。開きかけの唇からは言葉は出て来ない・・。
「あそこで、習った教えに反して仕舞って居る、だから怖くてあの地に帰れない。」
見開き見つめ続ける其の眼から、次々溢れ続けていた、泣き声すら上げられずに居た。
「勘違いするなよ、別に犯罪に手を貸した訳じゃ無いから、其処は信じてくれよ。」
瞬きもして居ないし、溢れる物も止まらなかったが、小さく頷いた。
「あのバカ女なんだが、俺と別れた後も変れずに居て、目を付けられて輪姦され誰のか判らん子を身籠った、犯罪に在ったと言えば可能だが、其れも出来ずに此処に来た…。」
「おまわりさんの所に何で行かなかったの?、何でお兄ちゃんの処に来なきゃ為らないのよ!」
声は震えていた、悲しみでは無く怒りの籠った声だった。
「俺の仕事は分るよな?、その目に逢った者が周りに如何言う扱いをされるのか、其れを証明させる為に警察にどういう事を聞かれ、答えなければならないか俺は知って居る。」
一瞬で震えが止まり、更に眼は見開かれて、涙も止まった。
「犯罪以外で、子供を堕ろすには父親で成人して居るものか、親の同意が必要なんだ。」
賢い子だ其れで全てを理解した筈だ、
ただ、
頷きはしたが怒りに満ち溢れた声が続いた。
「あたしのお兄ちゃんに何して呉れるの、そんな事したんだから殺されれば良かったのよ…。」
耳を疑った、
この子からそんな言葉が出て来た事に・・。
怒りに満ちた鬼の顔に変わって居た・・。
耳を疑った、




