家に帰ろう
散々暴れて満足したのか、雪斗くんとユミルさんは地面に座って初級回復薬を飲んでいる。
無言で一気に回復薬を呷る二人を、夕日がオレンジ色に照らす。
ユミルさんのせいで、何も解決しないまま日が傾いてしまった。
早く魔王の核を回収したかったけど、夜の森は危ないし、ユミルさんもついてきそうだ。
「雪斗くん、もう帰ろう」
そう言うと、雪斗くんは頷いて立ち上がった。
「待って待って」
ユミルさんが慌てて私たちを引き留めた。なんなんだ今度は。
「家に泊めて」
何を言うかと思ったら。泊めるわけないだろこんなトラブルメーカー。
「そんな嫌そうな顔しないでよー」
そう言いながらユミルさんはポンポンと服についた汚れを払った。
「君たち元の世界に帰る方法探してるんでしょ?俺の力が必要になると思うよ」
ユミルさんは自信満々にほほ笑んだ。
「ふたりがこの世界にいる間家に泊めてくれたら、その研究に協力してあげるよ。元勇者かつ千年間生きた研究者である俺を逃していいの? こんなチャンスもう二度とないよ? もちろん給料も研究費も貰うけど」
なんだか胡散臭いセールスみたいだけど、ユミルさんが本物の元勇者なら破格の条件だ。外交、政治、国防など、様々な面で利益を生む勇者は、魔王討伐後も国が取り合うレベルの人気だ。この人と同じ家に住むのはすごく不安だけど、この機会を逃せば次はないかもしれない。
「嫌だ」
色々考えている間に、雪斗くんがキッパリ断ってしまった。
「雪斗くんお願い!話だけでも聞いてみよう? 」
そう言うと、雪斗くんは心底嫌そうな顔をしてこちらを見た。「そうだそうだー」と間に挟まってくるユミルさんに冷たい視線を向けた後、眉間にしわを寄せて首を振る。
ユミルさんほんと黙っててほしい。
「試しに一日だけでいいから! 」
雪斗くんの気持ちは痛いほど分かるけど、これに感しては私も譲れない。
帰るためのヒントになるなら、どんな些細な情報でも欲しい。
必死に目で訴えると、雪斗くんは深くため息をついて口を開いた。
「とりあえず話だけは聞く。必要ないと思ったら明日追い出すから」




