悪趣味
「勇者……?3代目……?」
変身を解いた銀髪の青年は、自分が元勇者だと名乗った。
そんなことあるはずない。今回の勇者である雪斗くんで8人目。
3代目勇者の召喚なんて、千年以上も前の話だったはず。
「あの、冗談はいいので、本当のことを教えてもらっていいですか?」
「本当だよ! 」
「3代目の勇者なら千歳超えてることになるんですけど」
「うん、今年で1026歳だよ」
何を言ってるんだ……?
自称3代目勇者――ユミルさんはどう見ても二十代前半にしか見えない。
「ほら、魔王倒したら女神様に願い叶えてもらえるでしょ? 俺それで不老にしてもらったんだよね。だから肉体は26歳で止まってるんだよ」
確かに、女神様に願いを叶えてもらったのならあり得るかもしれない。
でも、この軽薄そうな人が千年以上生きた元勇者だとは思えない。
「歴史の教科書とかに載ってたでしょ? 3代目勇者ユミル=ルーシアって」
「載ってはいましたけど」
3代目勇者は歴代勇者の中でも群を抜いて変わっていたから覚えている。
私たちとは違う、魔法のある世界から召喚された、魔法工学の元研究者。自ら魔道具を開発し、魔王を弱体化させることで、戦わずして魔王を倒した唯一の勇者だと書かれていた。
ただ、写真も肖像画も無かったから、この人がその元勇者なのかは判断できない。
いや、今はそんなことで話し合っている場合じゃない。雪斗くんのことを聞かないと。
「分かりました。3代目勇者でいいので、雪斗くんがどこにいるのか教えてください」
そう聞くと、ユミルさんはちょっと不満げに眉をしかめた。
「えー? 館のところらへんにいるんじゃない? 結界壊しといたから直さないといけないだろうし」
やっぱりこの人が原因なんだ……危害を加えないとか、人質じゃないとか言ってるけど、信用ならない。
「……強盗が爆発を起こしたっていうのは、嘘だったんですね」
「うん、ユキトとミユちゃんを一旦引き離そうと思ってね」
「なんのために……? 」
引き離して一体何を? まさか……!本物の元勇者なら、魔王の核に気づいて止めようと……?
「ユキトって、ミユちゃんのことすごい大事にしてるんでしょ? 戻ってきてその大切にしてる子がいなくなったらどれくらい怒るかなって思って」
「うわ……」
違った。ただの悪趣味な人だ。
「てか、そろそろ戻ってきそうじゃない?ねぇ、せっかくだから小屋の近くに隠れて様子見てこようよ」
戻ってくる!? やばい、私外出るなって言われてたんだった。
まずいまずい、雪斗くんに怒られる。
「嫌です! 」
小屋に戻ろうと走り出すと、ユミルさんが腕をつかんできた。
「待ってよー、反応気にならない? ちょっとでいいから様子見てみようよー」
しつこいな。今それどころじゃないのに。
「反応? 雪斗くんがキレて、あなたがボコボコにされて、私がめっちゃ詰められるだけです。それのなにが楽しいんですか?」
「俺負ける前提なの? 」




