27. 揺れる思いと揺れる町
その日、フレッドは所長に呼ばれて所長室に来ていた。そこには所長と副所長の2人が居り、向かい合って座るフレッドを含め、重たい雰囲気を漂わせていた。
フレッドが町中や町の外でも処理してきた人の数はそれなりに多かった。それだけ敵認定された人が多かったという事なのだが。
それは賊の類いは勿論、素行が悪く、冒険者組合を除名された者も含まれていた。当然、何かしらの敵対行動をしていたのだが。
それでも、それなりの人が突然消えてしまったらどうなるか。人間が当然消えるのだ。冒険者が依頼の途中で命を落とすとか、魔物に殺されたとかとは違うのだ。
町の外だけならここまで大事にはならなかったのかもしれないが、町中で数人の男が姿を消した。他に仲間や知り合いが居れば、それは勿論騒ぎになるだろう。
何かがあったのだと。何かおかしいぞと。
フレッドは特に顔を隠したりはしていない。当然だろう。普通に暮らしているだけなのだから。別に悪い事をしているとも思ってないし、今でも自分は間違った事はしていないと思っているだろう。聞かれればだが。
名前を教えるのは相手が名乗ってからにしなさい。見ず知らずの人には名前を教える必要はない。こう教えられていたのだから、これまで名前は名乗っていなかった。
だが、ずっとこの町で暮らしているのだから、当事者であった者達は、多くの場合は目撃しているのだから、暫くすればそれはフレッドに辿り着く事になるだろう。本気で探そうと思えばだが。
冒険者組合もそれなりに大きな組織であり、それなりに町への、国への影響力もある。不穏な事態が起こっていれば情報は回るし、逆に情報を流す事もある。
平和の為、町で暮らす人々の為ならば、それなりに。
そして所長は思い至った。一連の失踪事件には、もしかしたらフレッドが1部関わっているかもしれないと。
勿論、全部などとは思っていなかったが、フレッドの能力を持ってすれぱ容易に出来てしまう結果だったのだから、所長や副所長がそう考えても何らおかしくなかったのだが。
当然、全てではなかったが、中には魔物に殺された者、悪魔に殺られた者も居た。
だが、少なからずフレッドが手を下していた事も事実だった。本人はこれ程の騒ぎになっているとも思っていなかったが。
今も今とて、呼ばれた理由は分かっていなかった。
そして、暫しの話し合いが行われた。3人だけで。
面倒事になった。
聞かれれば答える。覚えている範囲でだが。フレッドは淡々としていた。普通の事だから。
聞く限りでは、確かに非は相手にある。そう思えるものばかりだった。犯罪である事は勿論だが、場合によっては即討伐の対象となる者の方が多かった。
中には1部、やり過ぎの場合もあったのだが。それも時間の問題で、いつかは同じように即処分されてもおかしくないような事を犯したのかもしれないが。
だからこそ面倒だった。フレッドのやった事は、決して間違いではないのかもしれないが、それはフレッド1人が判断していいものでもない。
町中での処分に関しては、それこそ法律もあり、それなりの決まりもあるのだから尚更に。
だが、やってしまったものは仕方ない。もう処分してしまったのだから、フレッドのゴミ処理スキルによって。
これでは証明のしようもないし、フレッドが自分がやったと証言したとしても、その証拠がないのだなら仕方ない。誰にもそれを示す事は出来ないのだから。
だから所長と副所長は考えた。これまでは仕方がなかった。フレッドが敵認定したのだから、やはり敵と認定されるだけの行いをしたのだと。
自分達もしっかり目が行き届いてなかった点は反省し、今後に活かす事にした。無かった事にするのではなく、恐らく既に死んでいるものとして扱う方がいいだろうとの助言をして。
実際には何ともしようがないのだから、それしか言う事も出来ないのだが。
そしてフレッドには、町中での処分の禁止。フレッドのレベルならば、ゴミ処理スキルを使わなくとも対処できるのだろうから。極力殺さないようにとの厳命が。魔物を除くとはされたのだが。
ただ面倒だからという理由だけでゴミ処理スキルで対処していたフレッドは、やはり面倒だとは感じながらも、確かに自分が処理する必要もないのかな。などと思いながら受け入れる事にした。
殴っても斬ってもその場は汚れる事になる。クリーンを掛ける必要がある状況を作ってしまうなら、最初から処理してしまった方が楽なのにな。などと考えていたりしたのだが。
それでも所長や副所長が言っているのだから間違いない。どこか違和感を覚えながらも、2人の意見には素直に従うフレッドだった。
そしてそれは突然やって来た。
何の前触れもなく、突然に。
魔物の大移動の嵐。
大厄災。
魔物の4方からの大移動。大襲撃ではない。何かに追われるように、何かから逃げるように、何かに操られるように。
突然現れた無数の黒い穴。そこから数え切れないほどの魔物が現れ、町を目指し移動した。狂ったように暴れ回っている魔物が殆どだった。我先に前に進もうと、一直線に。
それぞれが目指す先にあったのがフォーラッジーガタウン。この国で4番目に大きく、今はフレッドが暮らしている町だった。
当然、以前フレッドが暮らしていた町とは何もかもが違う。それなりに壁も大きく堅牢で、簡単に魔物の侵入を許すような造りではないのだが。
それなりの兵も居て、警備体制も整っていた。冒険者の数もそれなりに居て、こういう緊急事態には緊急発動される事になっていた。
強制依頼という形で。それは防衛戦となるか、撤退戦となるか、それはその時の状況によって判断される事になるのだが。
こんな事は初めてだったのだ。当然こんな数の魔物が現れるなど。しかも4方からの大移動など前代未聞の事だった。
誰もが信じられなかった。目を、耳を、自分自身すら疑ったのだ。これは夢ではないのかと。
しかし、凄まじい移動音、町の壁越しにでも分かる土煙、壁の上で警戒していた者からもたらされる緊急時の鐘の音。
町中がパニックになるまで、そこまでの時間は掛からなかった。
警備隊員は各自の任務を全うし、何とか町の扉は閉ざす事は出来たのだが、荒れ狂う魔物が到達するのにそれ程の時間は掛からなかった。
そして各地で響く魔物の呻き声と叫び声。それが4方から聞こえてくるのだ。町に居る者は誰もが思った事だろう。もう終わりだと。
これまでも繰り返されて来た魔物の大移動。その結果を知らない者の方が少ないのだから。これまでいくつもの村や町が飲み込まれ、無くなって行ったのだから。ここもそうなってしまうのだと。
緊急事態にも臨機応変に動けるのが冒険者組合。慣れているとは言わないが、こういう時の対処法や訓練はしてきているのだ。役職者ならば。
変化を感じ取った時には斥候を走らせ、直ぐに動ける者達を集め、状況に応じて戦略を立てられるように幹部を集めたりもしていたし、実力者の召集も忘れてはいなかった。
そして、警備隊員からの報告が入り、斥候が情報を見極めて戻ると、直ぐに動き出した。
警備隊は既に応戦を開始しており、壁も健在。こんな状況は初めてだが、逃げ出せる方向も無いのなら、戦い抜く。防衛戦を敢行する事に決まった。それしか無いのだから。命を懸けて戦うしかないのだと。
そして各自が動き出した。指示を受け、更に指示を出す。
外出禁止令の発令を宣言しながら町を回る者。
警備隊と合流して魔物との戦いに参加する者。
支援の為に物資をかき集め、それを届ける者。
各地の状況を把握し、それを司令へ伝える者。
負傷者を受け入れる環境を整え、設備する者。
回復師を召集し、長期の医療体制を整える者。
薬師に体力・魔力回復薬の生産を依頼する者。
人を集め、大量の炊き出しの準備を始める者。
食材を集め、備蓄を開放し、量を確認する者。
誰もが何かしらの行動を取っていた。戦う為に、生きる為に、生き残る為に。
読んで頂きありがとうございます。
23日目にして、『74』PV。
やはり減ってきましたね。
予想通りです。
この後の展開次第では?
もう少し、あと少し。私は負けません。




