22. フレッドの力
ザッ
「ねえ。おじさん達。その遺体をどうするつもり? 埋めるの? 焼くの?」
「なっ! て、てめー。いつの間に」
「ちっ。ガキが1人か。おいっ。他にも仲間が居ないか確認しろ」
「おうよっ。お前はあっちだ。俺はガキの来た方を確認する」
「ああ。分かったぜ」
突然姿を現し、突然変な質問をしてきた子供に驚く賊達。そしてそれぞに動き出そうとしたのだが。
「えっと。僕は1人だよ」
別にそんな事を態々教えてやる必要もなかったのだが、自分の素朴な疑問を無視された事の方が理解できなかった。だから教えてよ。とまで続けられれば良かったのだが、そうはさせてくれなかった。
「馬鹿が。そんなもん信じられる訳がねえだろうが。おいっ! 警戒しろ! こいつは囮だ!」
「おうよっ!」
「当然だろうな」
やはりフレッドの言葉は無視され、賊達は周囲の警戒を始めた。誰も居ないのに。フレッドの察知スキルの方がレベルは高い。そのフレッドが1人だと言っているのだから間違いないのだが。
そんな事が分かるはずもない賊達は、当のフレッドも警戒しつつ、各自が距離を取って周囲を伺い出した。
(もういいか。僕の言葉は信じてもらえないみたいだし、僕の質問にも答えてくれないみたいだし)
「ねえ、おじさん達は盗賊なの? 山賊なの?」
それでも素朴な疑問をぶつけるフレッド。当然危機感はない。相手を油断させる為にやっているのでもない。純粋な質問だった。恐らくもう聞けなくなってしまうのだから。
「ちっ。何を言ってやがる。くそガキが。そんなもんどってもいいだろうが。やってる事は変わらんわ」
「そうなんだ。やってる事は変わらないんだね。じゃあ、見付け次第討伐の対象になるんだよね」
「ちっ。うるせえガキだな。まずはてめーから殺ってやろうか。
おいっ! 周りはどうだ! 誰か居たか!」
……
何も返っては来なかった。その問いに返せる者は居なかった。フレッド以外には。
既に敵認定。やや、いや。かなり遅い気もするのだが、これがフレッド。人を敵認定するにはそれなりに時間を掛ける。それも仕方のない事だった。
殺人鬼でもないし、人を殺したいとも思っていなかったのだから。この時はまだ。
「だから僕は1人だよって言ってるのに。おじさんは頭みたいだから処理はしないよ。証拠として持って行くからね」
すっ ザッ グサッ!
「っ! なっ! グッボッ!」
ドシャッ ゴシャ
1突き。不意打ちでもない。只の槍の1突きだった。当然返り血など浴びていない。
残りの5人は既にゴミ処理によって処理済み。フレッドの視界に捉えられていたのだからそうなった。音もなく、仲間に知られる事もなく。
馬車、遺体、賊の頭と思われる者の遺体。それをゴミ箱の1つに入れて回収。町に持ち帰る事にした。馬車を引いていた馬は既にこの場には居なかった。
採取を楽しむつもりが、とんだ採取になってしまった。なんて思う事もなく、それなりに採取と魔物を狩りながら、来た時とは別のルートを進んで町に戻る事にした。
町には門番がいるように、警備隊なる組織もある。町中の治安維持の為は勿論、魔物から町を守る活動もしているし、場合によっては賊の討伐なんかもやっている。
今回フレッドが討伐した賊についても、警備隊に知らせるべき案件なのだが、それはそれ。
冒険者組合でも懸賞金が掛かれられているかもしれないし、面倒事は全て所長か副所長へ。これもフレッドの常識だった。
見たままの事情を説明し、その証拠の品を出して行く。それだけの作業だが、後は全てその2人が打ち合わせして片付けてくれていた。
フレッドに話が行かないように。お互いに関係を歪めないように。
懸賞金なんかは勿論フレッドに渡されるのだが、特に金に興味のないフレッドは、これも迷惑料などとは思わずに、何かと時間を使わせているのだから当然だとして、事務所の運営費に回して欲しいと言って受け取っていなかった。
採取や魔物の魔石、素材だけでもそれなりの額になっているし、部屋代、食事代を考えれば、それくらいは渡してもいいだろうとの判断だった。
これでも結構な額になるのだが、フレッドの性格もよく理解している2人は、有り難く受け取る事にしていた。確かに面倒事だったし、それなりに仕事は増えるから。
それ以上の見返りがある事もあれば、当然ただ働きという事もあった。これが初めてでは無かったのだから。それなりに同じような事は行われていたのだが。
フレッドにとっては採取活動のついで。そんな風に捉えられていた。だから、盗賊や山賊のアジトを突き止めようとか、他の仲間を探してやろうとか、そんな事は考えてもいなかった。
そして解体所で夕のゴミ処理をして夕食へ。またフレッドの日常が始まるのだった。
食べてステータスを確認して寝る。その前にやる事があればやる。気になる事があれば確認する。そんな日常が。
始まるはずだった。
遅くになってやって来た1人の冒険者が事務所の受付けでこう告げた事により、フレッドの日常が少しずつ動き出す。これも仕方がなかったのかもしれない。
「な、仲間が、仲間が殺られちまった!」
ダンッ じゃらじゃら
フレッドもこの冒険者組合事務所の一員なのだから。
冒険者には、『冒険者組合員の認識票』が渡される。大銀貨1枚と引き換えに。通称は『冒険者証』『ネームタグ』等と呼ばれているのだが。長いので。
即金で一括払い出来なければ、仮の認識票が発行され、依頼から少しずつ天引きされる形で支払う事も出来るようになっている。
それを冒険者組合事務所へ持ち込むと、正確には遺品として持ち込むと、報酬が出る仕組みとなっていた。色んな聞き取りはされる事になるのだが。
その日、その冒険者証を数枚事務所に持ち込んだ者が居た。仲間が殺られちまったと告げて。
殺られた仲間は3人。この冒険者の男を含めて4人パーティだったらしい。その日、とある廃村跡に立ち寄る事になった。偶々だったらしいが、以前行った事のある村で夜を過ごすつもりで訪れたと。
そこには人影は無く、あったのは村であった跡だけ。日も暮れかけてきていたので、仕方なく野営しようと準備を始めて暫くしてからだった。
仲間の悲痛な声が響いて来たのは。
「ぐわっ!」
「うわあっ!」
「逃げろっ!」
と。
その男が急いで駆け付けた時には終わっていた。
何も確認できなかったらしいが、仲間の遺体だけが転がっていた。別の方向で落ち葉や枯れ枝を集めていたこの男だけは助かったと。
魔物ならこんな簡単に殺られるはずがないし、大して争った形跡も無かったと。殺られてしまったとは言え、これでも歴戦の冒険者。
野営の準備でも気は抜かない。何があるか分からないのだから当然にそれぞれが警戒していた。はずだった。
その男も何も感じなかったのだ。魔物の気配も、森の異常も。だから驚きと共に恐ろしくなった。こんなに簡単に仲間を殺った相手が。姿すら分からないのだから尚更に。
それでその男は、居ても立っても居られなくなり、最低限仲間の冒険者証だけを回収して走って逃げて来たと。寝る間も惜しんで、最低限の休息だけは取りながら。
そしてここへ辿り着き、力尽きて倒れてしまった。伝えるべき最低限の事だけは伝えて。泥のように眠ってしまったのだった。
当然、冒険者は活動中に死んでしまう事もある。それも冒険者。それを覚悟の上で活動している。
だから、冒険者が死んだところでそこまで大騒ぎになる事はない。魔物の種類にもよるが、巣があったり、変異種の強力な魔物となっていれば別だが。
それも、こうして生きた情報がある事の方が珍しかった。1人だけ無傷で生き残れるなんて事の方が稀だから。しかも、今回は敢えて生かされた。そう考える方が妥当なのだから。この男の言っている事が本当ならば。
仲間割れ、その可能性も十分にあるのだが。この冒険者パーティはそれなりの実力者の集まりで、組合の方もそれなりに信用していた。これまでの実績、行動によって。
だから所長も副所長も動いた。本当の事だと判断して。しかも場所は廃村跡地だと言っていた。
ならば徹底的に浄化させておく必要もある。この町が1番近いのなら当然に。既にそういう決まりになっている。以前のフレッドの悪魔の件があってからは。
そして、廃墟徹底浄化及び仲間の敵討ち作戦。そう名付けられた作戦が決行される事となった。フレッドも巻き込んで。
読んで頂きありがとうございます。
18日目にして、『35』PV。
やはりと言うか、しかしと言うか。
まあ、こんなものなのでしょう。
ふっ。




