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第四章 召喚獣のざんねんな帰還。〈11〉

挿絵(By みてみん)


 モッケイモンキーのまりるとサーベルサーバルが篠突(しのつ)く雨に打たれながら周囲を威嚇(いかく)する。サーベルサーバルはアレストリーナ姫の命令がなければぜったいに手をださない。おれはまりるに自重しろとつたえた。


 グラゴダダンのようなゲスでもなければ、惑星アルマーレの人間が人間を殺傷することはない。いきなり召喚獣戦闘(フェアモン・バトル)にもならないだろうが、こんな異常な状況下でオレたちに勝ち目はない。


 子爵の紋章を額につけた召喚師に大きな傘をもたせたアルマイリス皇国第2皇女・ネブラスカスがアレストリーナ姫をひき立たせた。


 アレストリーナ姫はうしろ手に革と鉄でできた手錠をはめられていた。アレストリーナ姫におびえる子爵召喚師の制止も聞かず、傘の下から歩みでたネブラスカス皇女が雨にぬれるのもいとわずアレストリーナ姫を睥睨(へいげい)した。


「アレストリーナ、そちを国家反逆罪で逮捕するぞよ」


「なんのことだっちゃ!? ……ウチに触るな、無礼者!」


 アレストリーナ姫が厩務員(きゅうむいん)恫喝(どうかつ)しながらネブラスカス皇女を威嚇(いかく)する。


「ゆえなく〈シュピーリ・ファーム〉を強襲し、グラゴダダン殿下の手を斬り落としたと云うそちの残忍きわまりない凶行は、すでに大陸中の知るところぞよ」


「ち、ちがうっちゃ! ちがってないけどちがうっちゃ! 悪いのはグラゴダダンと中兄(なかにい)さまで……!」


 ネブラスカス皇女がアレストリーナ姫の胸ぐらをつかみ上げると耳元でささやいた。


「申し開きは裁判で聞くぞよ。おとなしく召喚獣(フェアモン)帰還(リターン)させるぞよ。さもなくばその3体をわらわの人間(アース)召喚獣(フェアモン)に殺させることになるぞえ」


「……わかったっちゃ」


 ネブラスカス皇女が手をはなすとアレストリーナ姫が足元の水たまりへひざからくずれ落ちた。


 ネブラスカス皇女はアレストリーナ姫の腰にゆわえつけられた召喚牌(カルタ)の入った袋を没収すると、使用中の3枚の金色(ゴールド)召喚牌(カルタ)を雨をはじく地面にならべた。


「みんな帰還(リターン)するっちゃ」


 最初にサーベルサーバルが厩舎(きゅうしゃ)帰還(リターン)し、つぎにオレとオレにしがみついたまりるがおとなしく地球へ帰還(リターン)した。


 おいおいミズキュン、一件落着どころか、とんでもないことになったぞ!?



     9



「……で、どうする?」


 お昼前の香坂家リビングで『第1回アレストリーナ姫救出作戦会議』が開かれた。


 オレは帰還(リターン)するや(いや)や、うちで待っていた瑞希(みずき)朱音(あかね)さんへ風雲急を告げる衝撃の展開を説明したのだが、ふたりは意外なほど冷静だった。


「とりあえず、シャワー浴びてさっぱりしようか? おいでマリルン、シャワー入ろう」


「るる~!」


 と朱音(あかね)さんが人間の姿になった全裸のまりるを浴室へつれていった。花火大会へでかけた時の甚平(じんべい)姿そのままだったオレもまりるのあとでシャワーを浴びて着替えた。まりるはオレがシャワーを浴びている間に和室の布団(ふとん)でバタンキュー。とどのつまりはオレ、瑞希(みずき)朱音(あかね)さんで鳩首(きゅうしゅ)する。


「想定しうる最悪の結果になったか」


 と瑞希(みずき)が表情もかえずに云った。(せん)にオレの話を聞いた時からこうなる可能性も考慮していたらしい。云われてみれば「……一件落着なのだが」とふくみをもたせる発言をしていたが、だったらあの時ちょっとは(くぎ)をさしといてくれよ、と思う。


 瑞希(みずき)の言によると、奈落の底で空費した1日のタイムロスが致命的だったらしい。アレストリーナ姫が先にアルマイリス皇国の議会へ皇帝アルマロドス2世やグラゴダダンたちの陰謀を告発しておけば、グラゴダダンたちの偽装工作があったところで、いきなり罪人として逮捕されることはなかったはずだ。


 しかし、アレストリーナ姫所在不明の状態でその凶行だけが大陸中へばらまかれた。逃亡を疑われても仕方がない。さらに厄介(やっかい)なのは、サンドロバルバドスの菜々美ちゃんが調子に乗って〈シュピーリ・ファーム〉の三角城まで焼失させてしまったことだ。


 秘密の研究所が破壊されていただけならグラゴダダンたちも公表はできまいが、なかば無関係の伝統ある三角城をあまたいる召喚師たちの面前で意味もなく焼失させてしまったのだ。こればかりは申し開きの余地もない。


 ……いやいや、菜々美ちゃん。部活でぷーぺークラリネットふいてる場合じゃないぞ。


 ただ、グラゴダダンのような狂人でもないかぎり、惑星アルマーレの人間が人間を殺傷することはない。拷問されることもないだろうからひとまずは安心だと思っていたのだが、


「〈アーデル・ファーム〉をでたらアレストリーナ姫の命も安全とは云えなくなる」


 と瑞希(みずき)が不吉な予言をした。


「どうしてきゅん?」


「グラゴダダンたちは裁判までにアレストリーナ姫の口封じを画策するはずだ。軍事法廷でグラゴダダンたちの陰謀を告発し、証拠として人の言葉が話せるまりるを召喚されたらグラゴダダンたちはおわりだ。おそらくグラゴードリス皇国はアレストリーナ姫の即時身柄ひきわたしを要求してくるだろう。アルマイリス皇国で裁判がおこなわれないままアレストリーナ姫の身柄がグラゴードリス皇国へ移送されれば、まちがいなくアレストリーナ姫は裁判なしで幽閉されるか殺される」

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