早六年
その日はザーザーと雨が降っていた。
・・・
酷く体が重たい。私の体だけ、重力が2倍になっているかのような、獣が上に乗っているような、そんな重さが全身を支配していた。
死んでこの世界にきて早6年。
ついでに捨てられて早6年。
孤児院。それが今私がいる場所だ。
この黒髪黒目はこの世界では忌み嫌われているらしい。
だから捨てられた。
全くなんてことだ。「あーどっこいせ。」そう呟いて重い体を持ち上げた。
この大和撫子の良さが分からないとは。
さて、何故ここまで倦怠感が酷いのか。
ようやく起こした体をまたポスンと地に沈めて考える。あぁ、そうだ。私は孤児院にはもう帰らないんだ。里親が出来たんだった。
この魔物も出る。魔法も使える。獣人も居る。さらには天使や悪魔までいる。そんな世界に一人放り出され、孤児院でも一人の私に里親ができた。それもなかなかに紳士なおじさんに拾われたんだった。
すっごくきつくお姉さん方に睨まれたんだった。
ガタガタと揺れる振動に吐き気を覚えながら枕に抱き付く。あの孤児院もなかなかにお金があったけれど、こんなにふわふわなベットも枕も掛け布団も流石になかった。
うーむ。しかしなんでこんなに倦怠感が酷いのかねぇ。
「うーむ」
コンコンと、木を叩く音がした。
「大丈夫か?」
おお、このハスキーボイスは私の里親の・・・・・・・・・・・名前なんだっけ?
「え、っと・・・はい。ご心配おかけしました・・・?」
鈴が鳴るような、透き通るこの声には相変わらずなれない。
しかし、何の大丈夫?え?というか、寝ころんだまま大丈夫ですって信用ならないよね。
「開けるぞ」
そう言って扉を開けたおじさんは一瞬でぴたりと止まった。
「?」
あぁそうだ、今乗ってるこの馬車凄いことに列車のようになっている。つまり、部屋が沢山あるのだ。
凄いよねー。たしか、これも魔法おかげらしいんだけどね。
「服を着てくれ・・・。」
そう言って顔をそむけたおじさん。
「・・・・キャ――――!」
全裸で寝てたから風邪を引いたようです
・・・
真っ黒な髪の子を生んだ。
夫からはなんて子を産むんだ!と言って殴られた。
でも、この子は悪くない。この子の髪が何だっていうんだ。
でも、この子をここに居させたらこの子まで暴力の被害が来るかもしれない。
だから近所の孤児院に捨てた。
きっと、この子には里親ができないから。あの男が出ていくまで、ここの預けるつもりだ。
ザーザーと降る冷たい雨の下に置くことはとても嫌だったが、心に決めた。この子は守るの。そうして毛布を掛けてせめてもと、水の魔法で薄く覆った。いつまで続くか分からないが、切れるころにはきっとここの人が見つけてくてるだろう。
名前と年齢を記した紙を置いて最後に愛する娘の名を呟いて逃げるように走った。
「―――セリーナ・・・」