2 三校対抗戦⁉ 4
「ええ? 先輩、まだ足りないんですか⁉」美紅が悲鳴のような声を上げる。
「うん、残念ながら、あと1人、まだ足りないのよね」と岡崎先輩。
「でも生徒会の先輩たちで3人いるし、そこへ私たちで、5人じゃないんですか」
美紅は、後ろで静かにひかえる、生徒会書記、2年の倉木澪の方を見る。
すると、倉木先輩は、手を挙げて、
「私、一応帰国子女で、漢字とか、まだ自信ないもんで。とりあえず補欠ということで」
と、さらっと付け足した。
「今回の選手ルールには、『男女で』とあるんだ」
日野先輩が、この間の大会チラシを見せて説明した。
「つまり、選手には、男子が一人はいるということだ」
「……男子かあ」美紅がうなる。
「しかも種目が、百人一首だろ。あれ、まず全部覚えてるのが前提の競技だ。しっかりやるとなると、当然、練習もいるしな」
「え? あれ全部覚えるんですか」
美紅がここで反応する。ソラも、同じだ。百人一首って、何度か遊びで少しやったくらいだった。百も覚えるなんてとんでもない。急に青くなっているソラたちに気づかず、いや、あえて無視してか、先輩達は、「昼休み、もう少し声かけていこう」と、散って行った。
取り残されたソラたち二人は、顔を見合わせた。
「美紅。百人一首、どれだけ知ってる?」
「う〜ん、中学の国語で出てきたのぐらいかな」
もう二人して笑うしかない。
「まあ、乗りかかった舟だ。なんとかなるか」
「これ、ほんとに泥船だよ。ボク、あっ、私、泳ぐの得意じゃないんだけど……」
ソラは、「溺れませんように」と天に祈った。
「そうだ! 男子。うちのクラスの奴らに、声かけてみようよ」
すぐに前向きな美紅とクラスへ戻ることにする。
お弁当を持ってやってきた朱莉に、ことを説明し、「朱莉もやらないかな」と聞いてみたが、
「いや、私は放課後、陶芸行かなきゃいけないし、無理」と一蹴された。
勧誘は手伝ってくれるというので、「とにかく男子だ」と、クラスを問わず、一年の男子に声をかけて回った。だが、先輩のいう通り、男子たちは一様に後ずさりした。
放課後になっても状況は変わらず、男子が少ないため、声をかける対象も限られて、すぐに三人でため息をつくことになった。今日が申し込みの締め切りだというのに。
――せっかく思い切ってやるって言ったけど、無駄になるのかな。
でも、かえってその方が良かったかもしれない。どうせ私なんか……。
ソラは、小さくため息をついた。
そのうちに朱莉は陶芸があると先に帰ってしまう。
「あ、大事なこと忘れてた」ソラが、いきなり声をあげる。
「え?」
「ほら、お昼!」
「今頃、怒ってるんじゃないかな。とにかく急ごう」
二人は、一階の実習室へ走った。




