11 雨乞い 4
「雨乞い?」
「そう。この大地に溜まった熱を冷やすの」
天見の声に、少しずつ力が戻ってきた。
「それも、今の陰の熱の規模を考えると、すっごい量の雨が必要になる。そのためには、祈りの聖地である神泉苑で、大々的に『雨ごいの儀式』をする必要がある」
天見は二人をまっすぐ見た。
「今ある危機を防ぐためにできることは、それぐらいなんだと思う」
そこまで一気に話した天見は、二人が黙って聞いてくれていることに、少しホッとする。
「ねえ……どうしたら神泉苑で雨乞いできるんだろ」
天見がつぶやく。
「私には、もうわからなくって」
「その『雨乞い』すれば、トビも助かる?」
南條が聞いた。天見はすぐには答えられなかった。
「……分からない」正直な答えだった。
「でも、きっと陰の熱が溜まって破裂したら、この世界は大変なことになる。それを変える可能性があるなら……」
天見はトビを見る。
「やってみる価値はあると思う」
そして、少しだけ笑った。
「それがうまくいったら、きっとトビの熱も……」
「その神泉苑っていう場所も必要なんだよね?」南條が尋ねる。
「うん。神泉苑は昔からある霊場なんだって。大きな力が必要な祀りには、その場所の力も借りないと無理なんだって」
「俺もできるだけあたってみる」俺は言った。
「でも、神泉苑を丸ごと貸りるっていうのは、なかなか大変な話になる」
口にしてから、情けなくなる。俺は大人なのに、今すぐ力になれることが何もない。
うつむいていると、それまで黙っていた伊山が顔を上げた。
「私、一つアイデアがある」
「アイデア?」
「うん。一度、父さんに話してみるよ」
伊山の父親は、小さいとはいえ会社の経営をしている。そのつながりで京都市商工会の役員とも付き合いがあるらしい。
「神泉苑を借りられないか、聞いてみる」
「そんな簡単にいく?」
「まあ、やってみなきゃ分からないでしょ」
伊山は笑った。その顔には、妙な自信が見えた。
「とにかく、私も、最近のこの世の中、なんかおかしいってすごく感じてた」
伊山は天見を見てほほ笑む。
「それが何なのかわからなかったけど、ソラの話を聞いて、そうかって思った。それぐらい大きなことが関係してると思わないと納得できなかったから」
伊山は、天見の肩に手をやった。
「そして、大事なのは、今の私たちがすべきことが、形としてあるということだよ」
南條も静かにうなずいた。




