10 成らずの柿 8
川沿いの風が、二人の間を通り抜けていく。
その時、ソラの胸に、柊の言葉がよみがえった。
――自分にできることを挑戦したいんだ。
――自分がやりたいからやるんだ。
ソラは、自分に問いかけた。今、自分がやりたいことは何なのか。
そして、小町を見た。
「でも……」
「うん?」
「ほっとけば、破裂するんだよね」
「ええ」
「だったら――」
ソラは少しだけ息を吸った。
「この『お使い』、やるしかないってことだよね」
まっすぐな目だった。
小町は、その目をしばらく見つめていた。
「時の流れに長居しすぎると、余計なものに目がいってしまうようね」
「え?」
「なんでもないわ」小町は少し眩しそうにソラを見た。
そして、静かにうなずく。
「やってみましょう」
「うん」
「我にできることは、力の限り尽くすわ」
二人は、国家的な規模になるかもしれない「雨乞い」をどう実現するのか、何が必要なのかを話し合った。
だが、話せば話すほど問題は増えた。
そもそも、神泉苑を使わせてもらえるのか。
誰に頼めばいいのか。
今の時代に、そんな大規模な祀りをどうやって人々に受け容れてもらうのか。
結局、最初のハードルさえ超える方法が思いつかない。
二人は悩ましい思いのまま、木津川の堤から夕日を眺めていた。
「ところでソラ」
「ん?」
「元気か?」
「大丈夫だよ」
「ならいい」小町は少し考えてから言った。
「そうだ。ソラ、さっきの重衡様を呼び出せたでしょ」
「うん」
「あなた、力がついてきているわ。それも我が思っていた以上にね」
「本当?」
「ええ。神子として、もう一つ上を目指してみましょうか」
「どうするの?」
「心を飛ばすの」
「心を飛ばす?」
「ええ、この空へ」




