↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/73

10 成らずの柿 1

 土曜の朝、リュック姿を背負ったソラは、京都の南、木津駅に降り立った。

 目的地は、ここから徒歩十分ほどのところにある。

 小町はリュックの中。モスグリーンのA4版、小ぶりなスケッチブックに収まっている。

 美紅に改めて詳しく聞いたところ、「成らずの柿」を継承しているという木は、平重衡の首洗い池の近く、神社の森にあるらしい。

 ソラは住宅街の細い道を抜け、木津川の方へ向かった。しばらく歩くと、大きな車道に出る。

 道の向こうには、立派な赤い鳥居が見えた。その向こうに、こんもりと広がる神社の森が広がっている。

 ――あれが目的地だ。

 ソラは、神社の鳥居をくぐらず、社務所らしき建物の裏手に回った。

 美紅の話では、社務所の裏から神社の森に入った所にあるという。

「ここから行けるんじゃないかな」

 ソラは田んぼの畦道に降りた。

 細い道は社務所の裏を抜け、そのまま森へ続いていた。森の中は杉が高く繁り、昼間だというのに薄暗い。ソラは、枯れ葉の積もった道を進みながら、ソラは周りを見回した。

 背の高い木ばかりだ。普通に思い浮かべる柿の木など、どこにもないように見える。

「森に入ってすぐの所にあるって聞いたんだけど……柿の木ってこんなとこにあるのかな。看板もあるからすぐわかるって言ってたのに」

 その時だった。

 半ば朽ちかけた木の札が、一本の気に幹に掛かっているのが目に入った。

「これ……?」

 近づいてみる。

 消えかけた文字で、確かにそう書かれていた。

 ――成らずの柿。

「これが、成らずの柿?」

 見上げる。

 その木は、周囲の杉に押されながらも負けまいとするように、ひょろりと上へ伸びていた。枝もずいぶん高いところにある。一見しただけでは、とても柿の木には見えなかった。

だが、その高い枝に茂る葉だけは、周囲の針葉樹とは明らかに違っていた。見慣れた柿の葉だ。

 森の端に植えられた柿木が、長い年月をかけて神社の森に飲み込まれていったのかもしれない。

「周りの木に負けなかったんだ。えらいなあ。よく、枯れずに頑張ったんだね」

 見上げた枝葉の隙間に、黄緑の小さな丸いものが見えた。

「あれ……柿の実かな?」ソラは目を細めた。

「小町さん、見て」

 リュックからスケッチブックを取り出し、小町を呼び出す。

「確かに柿ね」

「やっぱり」

「ええ」

 本来なら、この時期の柿はもっと大きくなっているはずだ。だが、この木は森の中にある。日当たりが悪く、成長が遅れているのだろうか。それとも――。

 ソラは枝をよく見た。同じような実が、幾つもついている。

「本当に、この木に柿の実がなろうとしているんだ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ソラ、すごいな。神社の森はただでさえ妖しがいそうなのに そのうえその中の首洗いの池の近くまで行けるなんて。小町さんと一緒とはいえひとりだよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。