8 八月 三校対抗戦 8
会場も、この二人の戦いに注目し、大きく盛り上がっている。
試合は、そこから一進一退で進んだ。
俵が取れば、ソラも取る。やはり、地力では相手が上だ。
だが、札が少なくなれば、配置もわかりやすくなる。ソラも把握しやすい。持ち前の集中力が、終盤にきて存分に発揮されていた。
あとは、動き出しと、どちらの陣の札が読まれるか。時の運が勝敗の分かれ目になる。
そして、ついに互いに一枚を残すだけの運命戦にまでもつれこんだ。
ソラは手の汗を膝で拭い、ゆっくりと深呼吸した。
気づくと他の対戦は皆終わっている。残るは中央のソラたちだけだった。
この時、勝敗は二勝二敗。すべてが、この一戦にかかっている。
会場の全視線が、ソラたちに集まった。
これが最後の札、運命戦。
ソラの前の札は、入道前太政大臣。
『花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』
相手の札は、小野小町。
『花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに』
二文字目まで、出だしが同じ。しかも、どちらも坊主札ではない。もう、風を感じる特別な札はない。
ソラは、応援の声で、二勝二敗、この札に団体の勝敗がかかっていることを知った。
そのとたん、焦った。
それまでの集中力が乱れる。
「もし、負けたらどうしよう……」
そんな気持ちが意識の上に浮かび、会場のざわめきが一気に耳に押し寄せてきた。
――何も聞こえない。
一瞬焦った。だが、ソラは目を閉じた。
そして、心を決める。
自分はどうしたい?
俵は両手で自陣の札を覆うように防御している。
読み手が札を持った。
その瞬間だった。
風が吹いた。
今まで感じたものとは違う。
はっきりと、相手陣の一枚に向かっている。
小野小町の札。
――私よ。
そう言われた気がした。
ソラは目を見開いた。
読み手が息を吸う。
「は――」
その刹那。ソラは飛び出した。
俵の予想を超える動きだった。相手が防御する手の下をかいくぐり、札を払う。
読み手の朗々とした声が響き渡った。
『花の色は……』
ソラが勝った。
会場が、どっと爆発するような大歓声に包まれた。
呆然とした俵の目の前の畳に、ソラは突っ伏していた。
日野先輩や美紅たち、みんなが駆け寄って来る。
ソラはようやく立ち上がった。
美紅が抱きつく。五人は、みんなで喜び合った。




