8 八月 三校対抗戦 5
俺は、思わず唸り声を漏らしていた。
四対0。試合は甲子社が圧倒して終わった。
上賀茂は、大将の藤沢がなんとか引き分けに持ち込むのがやっとだった。他は一人ひとりが大差をつけられている。まさか、うちがやっと競り勝った相手が、こんなにあっさりと負けるとは。甲子社の強さに、鴨高のメンバーは重い空気に包まれた。
甲子社は、先ほどの試合、大将の周坊会長から、道里、俵、佐藤、中村という順で出てきた。
どのメンバーも、うちの経験者である岡崎と遜色ない動き出しの速さだった。読み始めて数文字で、全員が動き出す。隙が見当たらない。
鴨高が勝つには、岡崎と柊でまず二勝を取り、残り三人のうち一人が勝つ。
それが現実的な作戦だった。
だが、さっきの強さを見る限り、岡崎は柊でも簡単にはいかないかもしれない。
そこで岡崎を中心に、みんなで作戦会議をやり直した。
確実に二勝取る。そのために、順序を大きく変えることにした。
大将は伊山。二将、岡崎。三将、天見。四将、柊。五将、日野。
最後の甲子社戦は、この布陣で臨むことになった。
まもなく、第三試合、鴨高対甲子社が始まろうとしていた。
鴨高の五人は円陣を組んだ。日野が、みんなを見渡して言う。
「みんな、ここまで本当によくやってくれた。最後だ。ここまで頑張ってきたすべてを出し切ろう」
「おー!」
声を合わせると、会場の中央に整列して座る。会場からの声援が一際大きくなる。
選手たちは、それぞれに呼吸を整え、目の前に座った対戦相手を見つめる。
前に並んだ相手を見て、俺は思わずつぶやいた。
「やられた……」
鴨高の面々も、明らかに動揺している。
鴨高が大将を外そうとしたように、相手も大きくオーダーを変えていた。
大将、伊山の相手は、中村ダニエルだった。今日は派手なバンダナを額に巻き、やたらニコニコとして余裕の表情だ。伊山は、自分の頬を叩いて気合を入れ直している。
二将、岡崎は、周坊会長とだ。ここは実質の大将戦となる。
三将、天見の前には、副会長の俵。うっすらと笑みを浮かべた顔で、鴨高メンバーを見ている。
その口が何かを言った。それが聞こえたのだろう。天見の表情が急に強張った。
前回負けた相手だけに、天見にとってはよけいに分が悪い。
天見は大きく深呼吸をして、心を静めようとしている。
四将、柊の相手は佐藤波瑠。佐藤は無表情にうつむいたままで、その眼鏡の奥の表情は読めない。
五将、日野の前には、派手な青い髪の道里あんりが、涼しげな表情で正座していた。
両校の礼が終わる。
選手たちは、二十五枚の札を三段に並べ始めた。
みんな、落ち着け。
俺は、ただ一心に、みんながその力を出し切れるよう願った。




