8 八月 三校対抗戦 2
上賀茂はエースと言われる生徒会長の藤沢が大将を務めるチームだ。お揃いの赤いTシャツに、挨拶もきちんと揃った大きな声。見るからに礼儀正しい。美術についても真面目に道を追求する生徒が多いと、岡崎が言っていた。気合は入っているが、自由気ままなうちの鴨高生たちとは、また違う。
鴨高は、大将が岡崎、副将が柊、三将が日野、四将が伊山、そして五将に天見という布陣だ。
一番手前に見える天見は、札を丁寧に並べ終えると、緊張した顔つきでゆっくりと深呼吸をしている。
天見の相手は堀部という二年生。長い髪をお団子にまとめ、落ち着いた様子で札の位置を覚えている。
試合開始の合図とともに、周りから応援の掛け声が飛んだ。
みんな、落ち着いていけ。
俺は心の中でそう願った。
始まりの序歌が読まれだすと、それまでの声援が静かになる。
会場全体が固唾を飲み、次の第一声に耳を澄ませた。
『わたの原 やそしまかけて こぎいでぬと』
畳をバンッと叩く音がして、札が飛んだ。
やった。
かろうじて天見が払った。最初の札は天見の陣だった。どうやら覚えていた札が来たらしい。
その後も、天見はよく戦った。
しかし、わずかに相手のほうが上だった。
上賀茂の選手は、全員が歌をしっかり把握している。試合が進むにつれて、それが差となった。
天見は負けた。六枚差だった。
岡崎は相手の大将をしっかり押し切り、いち早く勝ちを決めていた。柊も、いつものように静かに淡々と札を取り、勝った。ここまでは、ある程度予想できた。
終盤までもつれたのは、日野と伊山だった。
どちらも、ぎりぎりの競り合いになった。
まず、終始大きな声で、札を払う動作もひときわ大きな伊山が、残り札がわずかになった時に賭けに出た。
両陣にあった「一文字決まりの札」。
大きな声と共に相手陣を派手に払った。
攻撃型を得意とする伊山らしい狙いだったが、それがお手つきとなった。負けだ。
最後まで競り合った日野は、ラスト二枚のところで相手を制し、団体初戦の勝利を決めてくれた。
決まった瞬間、会場全体から大きな歓声をあがり、鴨高応援席が大きく沸いた。
歓声の中、選手たちは揃って礼をして、第一試合が終わった。
席に戻ってチームが喜びあう中、天見と伊山は、次こそ勝とうと二人して肩を叩きあっていた。
伊山が悔しそうな顔で言う。
「ちょっと焦った。ヨシツネで行ったんだけど、次は、冷静なオスカルで行くよ」
伊山は、やっぱり一番のお気に入りの宝塚キャラに戻すという。
「私、緊張で体が硬くなってた。次は最後だもんね。絶対怖がらず、動いていくよ」
二人はすでに気持ちを切り替えているようだ。
よし。みんないい顔だ。
次の甲子社戦で決まる。応援するこっちまで、すでに汗びっしょりだった




