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8 八月 三校対抗戦 1

 八月六日、ついに三校対抗戦、大会当日を迎えた。

 体育館の真ん中に畳が敷き詰められ、試合会場が作られている。周囲のフロアは、すでに三校の応援生徒や保護者で埋まっていた。

 俺たちは指定された観覧席の一角に座り、広い会場を見渡していた。

館内は、すでに熱気に包まれている。大きな体育館に空調はあるのだが、まったく効いている気がしない。鴨高の応援席からは井澤が、やたら張り切って声を上げているのが聞こえる。どうやら集まった生徒たちに祭り上げられ、応援団長を買って出たらしい。

 体育館前方の本部席には、役員や校長先生が並んでいる。その中央に、大きな盾と今回の賞品、一枚の日本画が飾られていた。

「今年の賞品は、ぜひ手に入れたいよね。あれ、有名な京都の画家、松下夏子の『小野小町』だよ。あの人の作品がうちに来たら、もうすごいよね」

 岡崎の言葉に、日野が辛辣に返す。

「なんでも甲子社の理事長が寄付したらしいよ。どうせ自分とこが勝つとでも思ってるんじゃないの」

「でも、あれ、いい絵ですよね」

 天見が、遠くの絵をじっと見つめながら言った。

 絵は、小野小町と思われる、横顔を見せる女性の姿が大きく描かれていた。

「あの絵、今日は、私らが持って帰ろうな、みんな!」

 日野の言葉に、みんながうなずく。

「そういえば天見、お前の得意札って小野小町だったな」

 俺の言うと、天見はニコリとしてうなずいた。

「そうですよ。だから今日は、あの絵、すごく欲しいって思うんです」

「お前がそこまではっきりと言うなんて珍しいな」

「うちの町には、小野小町が亡くなったって言う伝説があるんです。だからかな、小さい頃から小野小町って私にとって、お姫様なんですよね」

 そう言って、天見は小さく口ずさんだ。

『花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに』

 小野小町の伝説は全国各地にあるが、京都の井手町にも、年老いた小町が亡くなった場所だという話が残っている。こういうネタは国語科の必須だからよく調べたりする。

 岡崎がみんなに自分の得意札を作るように言ったときから、天見の得意札は小野小町だった。

 ちなみに伊山は、伊勢大輔の、

『いにしへの 奈良の都の八重桜 けふ九重に匂いぬるかな』

が「私の推し」だと言っていた。大らかな華やかさが、あいつらしい歌だ。

 大会は、三校での団体リーグ戦。団体、個人の勝利数で優勝が決まる。体育館中央で一試合ずつ進められ、全三試合が行われる。

 第一試合は、鴨川対上賀茂だ。

 両校五名が並んで向かい合い、礼を交わすと、いよいよ始まった。

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― 新着の感想 ―
 この日の向けてみんな力を注いできた。終わってしまったら、かるたロスにならないかと心配。
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