7 会場校 甲子社高校 6
柊も屈託なく、自然に話してくれた。
これまで彼とは、そこまで親しく話したことはなかった。それなのに、不思議と今は素直に言葉が出た。
柊はお爺さんが気になるようだった。ソラは、もう大丈夫だからと立ち上がり、お爺さんのところへ行って、礼を言った。
すると、お爺さんはにこやかにソラを見て、逆に頭を下げた。
「いつも碧人が世話になってます」
「いえ、こちらこそ」
「碧人にはな、わしのことなど放っておいて、自分のやりたいことをやりなさいというんじゃが……」
老人は、少し離れたところにいる柊を見た。
「わし自身、助けてもらわんと何もできんようになってしもたしな」
寂しそうに笑った。
「爺ちゃん、そんなこと心配いらないって言ってるだろ。もう言うなよ」
柊が少し強い声で言った。
そして、二人は帰って行った。
お爺さんを気にしながら、人通りの多い通りをゆっくり歩いて行く二人の背中を、ソラは見えなくなるまで見送った。
――自分がやりたいから、やる。
ソラは、彼の言った言葉を噛みしめていた。
それは、自分が心から欲していたもの……そんな気がした。
自分にはなかった、新しい空気。
今のソラにはまだ持て余す言葉だった。それでも、その言葉を静かに心の底に沈めた。
気付けば、頭痛はわずかに頭の芯が痺れる程度まで和らいでいた。それ以上に心がすっきりとしている。
ソラは時刻を確かめ、もう夕方になろうとしていることに驚いた。
――大変だ。帰らないと。
ソラは駅を目指し、人混みに戻っていった。
今日も高熱の夏空は渇ききっていた。
その下で、晴明神社の前、葭町通りには、その後も何事もなかったかのように多くの人が行き交っていた。




