7 会場校 甲子社高校 5
気づけば、あれほど痛かった頭痛も和らいでいる。
視界が戻ってくると、柊の後ろに老人がいることに気づいた。
「ああ、僕の爺ちゃん。今日は爺ちゃんと、晴明様のお参りに来たんだ」
杖をついた老人は、静かに笑った。
「大丈夫かね」
「はい、もう大丈夫です」
ソラは、自分がずっと柊の腕をきつく握っていたことに気づき、恥ずかしそうに慌てて放した。
「過呼吸になっておったのかな。でも、だいぶ落ちついてよかった」
老人は枯れた声でそう言うと、柊を見た。
「碧人、わしはちょっと参道でゆっくりさせてもらうから。お前、もう少しこの子のそばにおってやりなさい」
そう言って、杖を頼りにそろそろと参道の石灯篭に向かっていった。石塔の台石のそばで、神社の方に向かって手を合わせている。
「今日は行けなくてごめん。午前中、バイトがあってさ」
「今は、お爺さんのお散歩?」
「うん。爺ちゃん、昔からここ好きでさ、今日はバイトも午前だけだったし、お天気も良かったから、久しぶりにと思って」
彼がお爺さんの世話をしてるので練習にも来にくいんだと、朱莉が教えてくれた。
お爺さんと二人暮らしで、バイトも毎日のようにしているとも聞いた。
「柊くんって、えらいんだね。おじいちゃんのこと、ちゃんとみてあげて」
ソラの言葉に、柊の表情が少し硬くなった。
「なんか、そういう風に言われるの、好きじゃないんだ」
「え?」
「よく大人からそう言われるんだけど。僕は別に、えらいことしてるつもりないから」
ソラは驚いて黙った。
「爺ちゃんのことも、自分でそうしたいと思ってやってるだけなんだ。バイトだって、自分が大学に行きたいから、その学費溜めてるだけだし」
急に変わった彼の口調に、ソラは戸惑った。
「ごめん。私、何も知らないくせに、偉そうなこと言って」
「いや、僕こそ言い過ぎた。ごめん」
柊は少し考えてから言った。
「でも、自分でできることには、自分でやりたいんだ。挑戦したいし」
自分でやりたい。
その言葉は、今のソラにはとても温かく、じわりと胸に沈んだ。
それから少し、甲子社校のことを話した。もちろん、自分たちが負けたことも。
そうしていると、呼吸も身体も少しずつ元に戻っていった。




