7 会場校 甲子社高校 4
いつもソラは、周りを気にしていた。
小さい頃から人の心に敏感だった。相手が何を考えているのか、すぐに察する。人からは、よく気が付くと言われた。なぜ、それがわかってしまうのか。中学時代ぐらいから、自分でも理解できるようになった。
怖がっているからだ。
ウサギが耳を立てて周囲を警戒するように、自分はいつも、周りの人の感情に聞き耳を立てている。
そう気づいてからは、考えることすべてがしんどくなった。自分の感情も、人の心も、できるだけ見ないようにした。……中学までは。
それが、高校に入って、美紅たちと一緒に過ごすうちに、自分もみんなと同じようにしていいんだと思えることが、一つずつ増えていった。少しずつ、色のある世界が広がっていった。
嬉しいなと思った。
――それがいけなかったんだ。
――私なんかが、調子に乗ったらいけないんだ。
ふらふらと歩いているうちに、頭痛がひどくなってきた。
息が苦しい。頭の中で脈が打っている。ソラはひたすら痛みに耐えた。耐えることには慣れている。
やがて他の感覚を遮断するように、意識が狭くなっていった。
朦朧とした視界の中で、気づくと目の前に大きな石鳥居があった。
鮮やかな星型の紋様が、ぼんやりと視界を占めている。それに吸い込まれるように、その場にしゃがみ込んだ。
大きな提灯に描かれた赤い五芒星。そこは晴明神社だった。
ソラは、葭町通りを随分北まで来ていたらしい。
鳥居の下で、うずくまったまま動けなかった。
息を吸おうとしても、うまく入ってこない。頭痛の脈打つ波動が頭の中を埋め尽くす。
雑踏じゃらじゃらとした感覚が遠のき、自分の身体から意識が離れていくようだった。
どのくらい、そうしていたのだろう。
「天見?」
聞き覚えのある声がした。
何度か呼ばれ、ようやく顔を上げる。そこに、見知った顔があった。
くせ毛頭に、白く線の細い顔。優しい目が、自分を見ている。
「天見、どうした? 大丈夫か」
「柊くん……」
「体調悪いの?」
気力を振って「何でもない」と答える。
「何でもないことないだろ。すごくしんどそうだよ」
そう言って、柊はそばにしゃがみ、ソラの顔を覗きこんだ。
柊がそばに来てくれて、少し楽になったような気がした。
「息、早いよ。ゆっくり落ち着ける?」
言われて初めて、自分の呼吸がひどく速くなっていることに気づいた。
手足が痺れる。ぐらりと身体が揺れ、思わず目の前の柊の腕につかまった。
そのまま、彼の腕にしがみつくようにして、じっと耐える。
柊は何も言わず、動かなかった。ただ、そこにいてくれた。そばに人がいる。いてくれる。
硬く強張っていた身体から、少しずつ力が抜けていった。ゆっくり息をする。
しばらくして、ようやく視界が戻ってきた。呼吸も随分落ちついた。
「ありがと、柊くん。大丈夫だから」
そう言って、なんとか立ち上がろうとする。
「もう少し、そのままがいいよ」
実際、まだ動けなかった。ソラは、そのままもう少しじっとしていた。




