7 会場校 甲子社高校 1
翌日。今日は朝から、鴨高メンバーは甲子社高校へ会場の下見に来た。
集まったのは、柊、倉木をのぞく四人と、引率の俺だ。
天見が、朝からどうもぼんやりしている。緊張しているのか。それに比べて伊山は、持ってきたお菓子をみんなに配り、早くも遠足気分で騒いでいた。
甲子社高校は京都市の西、桂坂にある私立校で、とにかく自由な校風で知られている。生徒は私服で、見た目からしてうちとは違う自由奔放な雰囲気だ。校舎は大学キャンパス内にあり、広くて施設も立派だった。
鴨高のメンバーは、体育館の二階にある柔道場へ入った。ここで甲子社のチームが練習をしているという。真新しい畳の匂いのする広々とした白い部屋はエアコンが効いていて、その涼しさには驚いた。
「さすが、広いなあ。ここで練習してるのか」
伊山が感心したように声を上げる。
「こんな涼しいとこだと、昼寝しちゃいそうだね」
天見たちが、賑やかに話していると、練習をしていた甲子社の生徒が一人やってきた。
にこやかに一行を迎えたのは、周防貴史と名乗った甲子社の生徒会長だった。背が高く、色鮮やかなスポーツウエアを着こなしている。いかにも人前で喋ることに慣れている感じだ。
「大会は、下の体育館のフロアで行います。控室は、この裏にあるミーティングルームを使ってもらったらいいので、どうぞ自由に見ていってください。まず、うちのメンバーを紹介しときましょう」
周防会長が声をかけると、甲子社の生徒たち四人が集まってきた。
みんな揃いの黒いポロシャツだ。日野たちも並び、二校は互いに自己紹介をした。周防会長の横に、男女二人ずつの四人が並ぶ。
「そうだ。どうです、せっかく来られたんだから、軽く練習試合でもしてみませんか」
紹介が終わると、周防会長が言った。
突然の申し出だったが、俺は生徒たちに任せることにした。
日野が、「いや、今日はその予定はなかったので」と断ろうとすると、俵と名乗った向こうの副会長が、剣のある目でこちらを見た。
「まさか、やる前に逃げるなんてしないわよね」
日野は、少し岡崎と話してから、天見たちを見た。天見と伊山がうなずく。
「それなら、少しお手合わせ、お願いします」
日野が、お面のような作り笑いでそう言った。
ということで、メンバーは見学もそこそこに、練習試合をすることになった。
軽く準備運動を終えると、本番同様、団体戦の形で行う。五人が同時に戦い、三勝した方が勝ちだ。今日はこちらが一人足りないので、その分は不戦敗になる。
「いい、みんな試合形式の経験は少ないんだから、今日はその雰囲気を知るいいチャンスだよ。勝敗よりも、普段通りやることを目指してね」
岡崎が、みんなの顔を見渡して言った。岡崎以外は、みんなで何度か地元のかるた会に練習に行っただけだ。これが本当の意味での、初めての対外試合だった。
天見は、見ただけでわかるほど緊張で体が強張っている。隣の伊山も、さすがにいつもより声が少なかった。
日野が二人を見て、笑顔で声をかける。
「美紅、しっかり声出していけよ。なんならここで発声練習してもいいぞ。ソラ、いつもどおりでいいからね、みんなでやるよ」
その言葉に、天見と伊山は、ふうっと息を吐いて少し笑顔を見せた。
「さあ、行くよ」
日野の掛け声に、みんなが「はい」と声を揃えた。




