3 対抗戦へ向けて 3
翌日の土曜日。朝から対抗戦メンバーは学校の和室に集まっていた。
ここは茶道部も活動する畳の部屋だ。茶道部の活動は週一回なので、茶道部顧問に断りを入れて、活動日以外はほぼいつ使ってもいい許可はもらった。部屋の真ん中に百人一首がすでに用意してあった。俺は、国語科とはいえ、かるた競技は全くの素人。みんなの後で話を聞くぐらいしかできそうにない。
「まず、二十五枚ずつ、自分の陣に並べるの」
岡崎が札を並べていく。
「この二十五枚が、自分の札。先に全部なくした方が勝ち」
「相手の札を取ったら?」
「自分の札を一枚、相手に送る」
「なるほど」美紅は早くやりたくてたまらないみたいだ。
「それと、お手つきには気をつけてね」
「お手つき?」
「違う陣の札を触ったり、空札を払ったりすると、一枚取られるから」
「……」ソラは黙ってうなずく。
「じゃ、やってみましょう」
ということで、二人一組になり試合形式でやってみる。
日野と伊山、岡崎と天見が向かい合う。今日は倉木が来ていないので、残った柊の相手は、俺の出番となる。
互いに向かい合って、25枚の札を三段に並べると、まずはじっくりと場所を覚える時間がある。
読み手はタブレットのアプリ。岡崎がスタートさせた。まず、始まりは札にない歌、序歌が読まれる。
序歌というのは、これから始めますよ、という合図のようなものだ。
『難波津に(なにはづ) 咲くやこの花 冬ごもり いまを春べと 咲くやこの花 いまを春べと 咲くやこの花』
この次からだ。
『君がため……』
バン! 乾いた音が響いた。
「え?」
岡崎だ。何が起きた。
『我が衣手に――』
「あった!」
ようやく札が見つかった。だが、その瞬間。
バン!
柊の手が、俺より先に札を払っていた。
「はい、先生。一枚」
柊が真面目な顔で札を渡してくる。
「……お前、早くない?」
これはまずい。俺は気合を入れ直し、前傾姿勢で、グッと前の札を睨みつけた。
やがて、決着がつくと一時間近く過ぎていた。あっという間だ。俺は、なんとかギリで柊に勝った。昨夜、慌てて百人一首を予習しておいて良かった。
ふう〜、とため息をつきながら他の二組を見ると、伊山が畳を叩いて悔しがり、天見は、ふにゃーと力尽きたかのように情けない顔をしている。どちらも先輩の貫禄勝ちというところだった。




