再会、そして理不尽な命令
ギルドの応接室は、異様な緊張感に包まれていた。
中央の豪華なソファーに、きらびやかな白銀の鎧を纏った男がふんぞり返っている。
金髪を華奢に整え、鼻につく高級な香水の香りを漂わせている男――ディルムッドだ。
彼の後ろには、重武装した王宮騎士が四人、威圧するように控えている。
「遅いぞ、田舎ギルドの有象無象が。この私をどれだけ待たせるつもりだ」
ディルムッドは入ってきた俺たちを一瞥し、フンと鼻を鳴らした。
しかし、俺の顔を認識した瞬間、その端正な顔が驚愕に歪んだ。
「……なっ!? お前は……あの時の無能、サトウ・カズトではないか! なぜお前のようなゴミがここにいる!?」
「お久しぶりです、ディルムッド副団長。王宮を追い出された後、なんとかここで生きてますよ」
俺が淡々と答えると、ディルムッドはすぐに状況を理解したようで、今度は下劣な笑みを浮かべた。
「はは、なるほどな! 街で噂の『奇跡のバフ術師』とやらを探しに来てみれば、まさかあの時の役立たずだったとは! どうせ、召喚された時のアイテムか何かに、偶然強力な魔力が宿っていただけだろう?」
「さあ、どうでしょうね」
「まあいい。理由などどうでもいいのだ。カズト、お前に王命を伝える。今すぐ荷物をまとめ、私と共に王都へ戻るのだ。そして、我が騎士団の専属奴隷となり、そのバフとやらを我が剣に捧げよ。そうすれば、お前を追放した罪を許し、最低限の衣食住は保証してやろう」
横柄極まりない態度。
ギルド長やガウルさんが拳を握りしめ、今にも殴りかかりそうなのを、俺は手で制した。
「お言葉ですが、副団長。俺はすでに王国の籍を失った身です。それに、俺のバフはそんなに安くありませんよ」
「黙れ! 貴様のような無能に拒否権などない! 異世界のゴミめ、王宮の犬として使えるだけ光栄に思え!」
ディルムッドが立ち上がり、腰の細剣に手をかけた。
後ろの騎士たちも一斉に武器を構える。
「どうしても言うことを聞かないというなら、力ずくで連れて行くだけだ。四肢の一個や二個、もぎ取ってもバフは使えるだろうからな!」
狂気に満ちた叫び。
だが、俺は全く動じなかった。
むしろ、彼らが武器を構えるまでの数秒間で、俺はすでにマジックバッグから「それ」を取り出し、パキッと小気味いい音を立てて開封していた。
「ガウルさん、レオン、ジノ。……これを、一気に煽ってください」
「お、おい、カズト。これはなんだ……? なんだか、ものすごくシュワシュワして、黄金色に輝いているが……」
俺が三人に手渡したのは、日本の居酒屋の定番。
【プレミアム・モルツ(生ビール・ロング缶)】だ。
当然、アルコール飲料にも、俺のスキルによって「世界のルールを破壊する効果」が付与されている。
俺は素早く【鑑定】を発動した。
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【アイテム:高級天然水仕込みのプレミアム生ビール】
付与スキル:【酔神の狂宴】
効果:450秒間、精神耐性を完全に無効化し、自身の全ステータスを『1200%』に上昇させる。さらに、恐怖・混乱・魅了などの精神デバフを完全無効化する。
付与スキル:【絶対回避の千鳥足(酔拳・マスター)】
効果:効果時間中、敵の物理・魔法攻撃の命中率を『0%』にする。あらゆる攻撃を、無意識のステップで自動的に回避する。
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「いいから、喉越しを楽しんでください。一気に、クッと!」
「よし、よく分からんが……いただく!」
ガウルさんたちが、黄金の液体を口に流し込む。
ゴク、ゴク、ゴク、ゴク……。
プハァァァァァァッ!!!
「な、なんだこれはぁぁぁ! 苦い、だが美味い! 喉を突き抜けるこの強烈な刺激と、鼻から抜ける麦の芳醇な香りはなんだ!?」
「頭が……頭がカーッと熱くなってきたぜ! なんだか、負ける気がしねぇ!」
ビールを飲み干した瞬間、三人の顔が瞬時に真っ赤に染まった。
それと同時に、彼らの身体から放たれる魔力とプレッシャーが、部屋の空気をピキピキと震わせ始める。
「な、何をした!? 妖しげな薬物を飲ませたか! 構わん、曲者どもを捕らえよ!」
ディルムッドの命令で、四人の王宮騎士がガウルさんたちに突撃した。




