神獣暴走! 激辛焼きそばがもたらした終焉
「熱い! 痛い! 口の中が、太陽の表面のようになっておるのじゃぁぁぁ!」
【痛覚の狂戦士】が発動したクウは、完全に理性を失い、暴走状態に突入していた。
彼女の背後に、体長数十メートルを超える、巨大な黄金の天狐の幻影が姿を現す。
その咆哮一つで、周囲の雲が全て吹き飛んだ。
「な、何事だァ!?」
進軍してきた四天王ゴルゴスが、その異常な気配に足を止める。
「お主かぁぁぁ! 我の口に、この火を放ったのはお主かぁぁぁ(八つ当たり)!」
クウは地面を蹴った。
ドガァァァン!! と、ルミナスの街の正門前の地面が、その踏み込みの衝撃だけで半径数百メートルにわたって陥没する。
一瞬でゴルゴスの目の前に現れたクウは、その小さな拳を突き出した。
「消え失せるのじゃぁぁぁ!」
ゴルゴスは本能的な恐怖を感じ、巨大な鉄球で防御しようとした。
しかし、クウの拳が鉄球に触れた瞬間。
ズドォォォォォォンッ!!!!
鉄球どころか、ゴルゴスの十メートルを超える巨体が、一瞬で「漆黒の業火」に包まれた。
【煉獄の顕現】。
絶対即死・消滅の炎だ。
「ぎゃ、ぎえぇぇぇ……!? 身体が、魂が、消え……る……!?」
四天王ゴルゴスは、まともな攻撃を繰り出すことすらできず、わずか一秒で灰すら残さず、完全にこの世から消滅した。
それだけではない。
クウが放った拳の余波――深紅の衝撃波が、後ろに控えていた数千の魔王軍の軍勢を真っ直ぐに突き抜けた。
ドゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
地平線の彼方まで続く、巨大な火の道。
その線上(射程数キロメートル)にいた数千の魔獣やデーモンたちは、文字通り一瞬で「一匹残らず」蒸発した。
「ふ、ふえぇぇ……辛いのじゃぁぁぁ! 水! 水をくれぇぇぇ!」
軍勢を一人で全滅させたクウは、そのまま地面を転げ回りながら、涙目で叫んでいた。
俺は急いで、マジックバッグからキンキンに冷えた【天然水(2Lペットボトル)】を取り出し、さらに【半熟卵のポテトサラダ】(マヨネーズによる中和用)をクウの口に放り込んだ。
「クウ、これを飲んで、ポテサラを食べて!」
「ゴクゴクゴク……モグモグ……ハァァァァァ……生き返ったのじゃ……」
水を飲み干し、マヨネーズでカプサイシンを中和したクウは、シュウウウ……と元の可愛い狐少女の姿に戻り、そのまま俺の胸に飛び込んできて気絶した。
完全にエネルギーを使い果たしたようだ。
静寂が戻った戦場。
後に残されたのは、綺麗に消滅した魔王軍の跡地と、その光景を門の上から見ていたガウルさんたちの、魂が抜けたような顔。
そして、完全にショックで失神しているディルムッドたちだった。
「……なぁ、カズト」
ガウルさんが、震える声で言った。
「お前、やっぱり魔王より恐ろしいもの、バッグに隠し持ってないか?」
「いえいえ、ただの日本の焼きそばですよ。ちょっと、刺激が強すぎましたかね」
俺は苦笑いしながら、ペヤングの空き容器をマジックバッグへと回収した。
こうして、魔王軍の四天王襲来という、世界滅亡の危機は、日本の激辛文化の前に、ものの数分で「完全消滅」という形で幕を閉じたのだった。




