四天王ゴルゴス、襲来
地平線の彼方から現れたのは、巨大な二足歩行の猪のような姿をした、身長十メートルを超える超巨漢の魔族だった。
魔王軍四天王の一人、――『激震のゴルゴス』。
彼の後ろには、数千の魔獣や上級悪魔が、黒い絨毯のように地平線を埋め尽くして進軍してきていた。
「ガハハハハ! 脆い、脆いぞ人間の防衛線など!」
ゴルゴスが巨大なトゲ付きの鉄球を振り回すたびに、森の木々が数百本単位でなぎ倒されていく。
その圧倒的な質量と魔力の前に、王都から来た魔導士団も、ディルムッドも、完全に腰を抜かして泡を吹いていた。
彼らは魔王軍の本気の侵攻など、一度も経験したことがないのだ。
「おいおい、冗談だろ……。オーク三千の時とは、格が違いすぎるぞ……」
ガウルさんの顔から冷や汗が流れる。
「カズト様……これは、街の全戦力をもってしても、数分と持ちません……」
エレインが祈るように杖を握りしめる。
クウが俺の前に出た。
その九本の尾が、青白い炎を纏って激しく燃え上がる。
「主よ、ここは我が食い止めよう。真の姿を現せば、四天王の一人くらい相打ちには持っていける。……だが、その前に、もう一度あのおにぎりを食べさせてたもれ……」
クウは覚悟を決めた目をしていた。
自分の命を懸けて、俺とこの街を救おうとしている。
「ダメです、クウ」
俺はクウの頭を、ポンポンと優しく叩いた。
「仲間に命を懸けさせるような真似はさせません。……それに、まだ俺の『晩飯』の手札は残っています」
俺はマジックバッグの底から、まだ一度も使っていない、地球の最終兵器を取り出した。
それは、黒いパッケージに入った、一見するとただの『大盛り焼きそば』。
だが、その中身は、日本の激辛マニアたちを病院送りにし、数々のユーチューバーを絶望させてきた、あの伝説の超激辛カップ麺。
――【ペヤ〇グ・地獄激辛やきそば】だ。
これだけは、あまりの危険さに使うのを躊躇っていた。
しかし、世界を滅ぼす四天王が相手なら、この「世界の理不尽を凝縮した破壊兵器」を解禁するしかない。
俺は【鑑定】を発動した。
そのログを見た瞬間、俺自身も冷や汗が止まらなくなった。
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【アイテム:地獄激辛やきそば(概念兵器)】
付与スキル:【煉獄の顕現】
効果:500秒間、自身の放つすべての攻撃(物理・魔法・ブレス)に『絶対即死・消滅』の業火属性を付与する。
対象がどれほどの耐性、不死性、神聖の加護を持っていようとも、触れた瞬間に魂ごと焼き尽くす。
付与スキル:【痛覚の狂戦士】
効果:効果時間中、あらゆるダメージとデバフを無効化する。
ただし、使用者は凄まじい「辛さ(激痛)」に襲われ、尋常ではない暴走状態(攻撃力3000%上昇)となる。
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「クウ。これを、食べてくれ。……ただし、絶対に途中で水を飲んじゃダメだ。一気に、限界を超えて駆け抜けるんだ」
「む……? 何やら禍々しい赤色の紐(麺)じゃな。だが、主の料理なら、我は信じるのじゃ!」
クウは焼きそばを豪快に一口、口に放り込んだ。直後。
「――――――――ッッッ!!!!?????」
クウの目が、見たこともないほどカッと見開かれ、顔面が瞬時にトマトのように真っ赤に染まった。
彼女の口から、ゴフッ、とリアルな煙が吹き出す。
「から……っ!? からあああああああああああいいい(辛い)のじゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
クウの絶叫とともに、彼女の身体から、天をも焦がすほどの漆黒と深紅の爆炎が噴き出した。




