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アスタリア国策開発株式会社、始動

難民キャンプから始まったアスタリア臨時王都は、農業の安定と衛生環境の改善により、瞬く間に活気ある「街」へと成長していた。

しかし、人口の爆発的な増加は、新たな壁を僕たちに突きつけていた。

「アーサー様。王都周辺の井戸だけでは、水が足りなくなってきました。それに、雨季になれば泥濘に沈む街道の、石畳化も急務です」

執務室で報告を上げる文官の顔は暗い。

「大規模な水道の建設と、主要街道の舗装が必要ですね。……問題は、資金か」

僕は帳簿を見て大きなため息をついた。エリザベス女王から借り入れた建国資金は、これまでの初期投資でほとんど底を尽きかけていたのだ。

「税を重くしますか? 今の民なら、多少の無理は聞いてくれるはずですが」

エレノアが紅茶を淹れながら尋ねる。

「駄目だ。ようやく生活が安定し始めた民から搾取すれば、国は活力を失う。それに、僕は『持たざる者』から奪うような真似はしない」

僕はペンを置き、王都に集まりつつある商人たちの名簿に目を向けた。アスタリアの「法の下の平等」と「自由市場」の噂を聞きつけ、他国から移住してきた野心ある商人たちだ。

「……前世の知識と、商業ギルドでの経験を使う。大事業の資金は『投資』で集めるんだ」

数日後。僕は王都の有力な商人や工房長たちを広場に集めた。

「皆さんに、『アスタリア国策開発株式会社』への出資をお願いしたい。……これは寄付でも税金でもありません。上水道や街道という『事業』そのものを、皆さんに分割して買ってもらうんです」

僕は黒板に図解を書きながら、前世の経済システムである【株式会社】の概念を説明した。

「事業で出た利益(水道の利用料や街道の通行税)は、出資した持ち株の金額に応じて皆さんに『配当』として還元します。もし事業が失敗しても、皆さんが損をするのは出資した金額のみで、それ以上の損失はない。

最初は半信半疑だった商人たちも、商業ギルドの顧問弁護士として王都を無血開城させた僕の実績と、理路整然とした利益の見通しを聞いて、徐々に目の色を変えた。

「なるほど……! 確かに、国が保証するインフラ事業なら絶対に利益が出る!」

「俺は乗るぞ! 銀貨百枚だ!」

「うちの商会は金貨五十枚出資する!」

あっという間に、国家予算にも及ぶ莫大な「資本金」が集まった。

税金を一円も上げることなく、巨大な公共事業の資金を調達したこの出来事は、アスタリアの経済が爆発的に成長する起爆剤となった。

「素晴らしい手腕です、アーサー様」

配当への期待にホクホクの商人たちを眺めながら、エレノアが微笑む。

「もし彼らへの配当金を横領しようとする不届き者が出た場合は、私が責任を持ってミンチにして差し上げますね」

「エレノア、怖いから。あくまで法に則って裁くからね」

豊富な資金と、亜人やドワーフたちの労働力。

アスタリアには瞬く間に堅牢な石畳が敷かれ、清潔な水が巡る巨大な上水道網が完成していった。

お読みいただきありがとうございました。

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