魔王との謁見
門番の後ろに続き城門を通過すると、直近に魔王城を見上げる。
城はダークグレー一色だが、城の周りには純白のバラが咲いていて、とても幻想的な雰囲気を醸し出している。
魔族にも庭師がいるのだろうか、左右均等に植えられたバラが目線の高さから見ると、絨毯の様に敷き詰められているように見え、綺麗に整えられている。
城門と城の丁度真ん中くらいまで歩くと、門番がこちらへ振り返り、
「ここからなら直接、謁見の間の前まで飛んで行けます、ついて来て下さい。」
門番はそうゆうと、背中にある蝙蝠の様な翼を広げ羽ばたいた。
ロイスは、門番が飛び立つ後を浮遊魔法でついて行く。
程なく魔王城の中央にある塔の最上階、少し開けた場所に辿り着いた。
そこは回廊の様になっており、周囲には等間隔でガーゴイルの様な像が置かれているが、微かに生命力を感じる。
中央は塔がそのまま伸びたような作りになっており、正面に大きな扉が見え、両サイドには首のない騎士の像が立っている。
門番が扉の前まで進み、
「ロイス様を御連れいたしました。」
と言うと、内側から扉が開いて行く。
扉が開き切り中を見渡すと、3人の人物が現れた。
左にいるのは黒い甲冑を身につけて、身長は2m20cm程あり、甲冑から出ている部分の肌は焦茶色をしており、短髪で赤髪の男だ。
右にいる人物は、着物の様なものを着ており身長は150cm程で少し腰が曲がっている、肌はライトグレーの様な色をしており、片手に分厚い本を持っている、皺が目立つため高齢なのであろう。
最後に真ん中の玉座に座っている人物だ、1人だけ魔力の質が違い、魔力量も桁が違っている。
間違い無く魔王ラクスであろう事がわかる。
見た目は肌はライトグレーっぽく黒髪の長髪、頭には紅色のツノが2本生えている。
黒を基調とした貴族服の様な物を着ており、金の刺繍が見事である。
魔王ラクスは玉座ので足を開き両膝に肘を置いた、少し前傾の姿勢でこちらを見据えてた。
ロイスが魔王の間に足を踏み入れようと進むと、右側にいた老人が少し前に出て来て口を開いた。
「初めましてロイス殿、魔の国の丞相を務めていますダラスと申します。
左にいるのが、魔王団長ラバールと申します、謁見中目障りかもしれませんが、ご同席させて頂きたく存じます。」
ダラスそう言い少し頭を下げた。
「ご丁寧にありがとうございます。竜王ベルトランドの子ロイスと申します。
魔の国のトップ御三方に出迎えられ恐縮で御座います。」
ロイスがそう返すと、
「もう挨拶は良いだろう。我が魔王ラクスである、ロイスよ、何の用でここまで来たのだ。」
魔王ラクスが落ち着いていながらも、少し覇気の様なものを含んだ声で聞いた来た。
「すいません、では単刀直入に言いますね。
現在ジゴン平原で進めている、超長距離魔法の使用についてです。
あの魔法の事を理解して使用しようとしているのですか?使用後のマナへの影響については、どう対処するつもりですか?」
ロイスは落ち着きながらも、覇気を含ませた言葉で返していく。
それを聞いた魔王は、
「ダラスよ、説明してやれ」
「はい、ではロイス殿、私が代わりに説明させていただきます。
現在使用しようとしている超長距離魔法ですが、こちらが入手した文献の解読後、エンドノヴァという魔法である事が判明していますので、今後はエンドノヴァとさせて頂きます。
エンドノヴァに関しては、9割がた解析が済んでいますので、こちらとしては理解している、と考えております。
そして使用後のマナですが、以前使用された時に失われた大気中のマナの減少については、現在私どもが進めている方法でほぼ改善される見込みです。
現在私どもは魔力を持つ奴隷8000人と大型の魔獣100体の魔石を集め、これを核とし、使用する方法を開発し、実験段階に入っております、理論上は以前使用された時のマナの消費量より97%程減少する見込みがあり、使用可能と魔神様からの許可を得て、使用に踏み切ったところであります」
そうダラスが答えると、
「その文献を拝見させて頂くことは可能ですか?」
ロイスはダラスに尋ねると、ダラスは左手に持っていた本をロイスに渡し、
「こちらです、心ゆくまでご覧下さい。」
ロイスは本を受け取ると、パラパラと開いて速読を始めた。
本の中身は現在は使用されていない魔法文字で埋め尽くされていた。
魔法文字と言うのは、魔術師が魔法の開発や後世に残せる様に好んで使われていたもので、魔石とミスリルを砕き、聖水に1年ほど漬けた物に墨を足して、魔力を込めながら文字を書くと、文字や紙自体の自然劣化などを防ぎ、文書の偽造などを防ぐ効果がある。
この魔法文字も現在は劣化版として、使用する場合があるが、偽造防止の効果があるくらいで、自然劣化を防ぐ事は出来ない。
ロイスはざっと見て確かに賢者マノンが書いた物であろう事がわかる。
魔法理論や構築方法、魔法陣への変換物質にエネルギー供給路や現在わかっている情報は全て書いてあるが、肝心の使用後のマナについて書かれてはいない。
ロイスが読み終え、顔を上げて宰相ダラスを見上げると、ダラスはこちらに数枚の紙を渡して来た。
「ロイス殿、こちらが我々魔族が、賢者マノンの文献を精査したのちに、新たに考えた魔法陣とその効果が見込まれる書類にございます。」
ロイスは受け取ると、魔法陣部分をしばらく見つめ、
「なるほど、確かに魔法陣の魔力供給路部分をこの紙の様に書き換えると、大気中のマナをほとんど使わずに、魔法陣の影響範囲内にある物や人などからの、エネルギーで発動は可能かもしれませんね。
発動自体はわかりました。
しかし発動後、使用された場所周辺のマナが著しく破壊され、それを補う為にこの星中のマナが使用される事はわかっていますか?」
ロイス正直、発動自体には興味無かった、問題は星のマナの破壊だ。
これが改善されていないのであれば使わせる気は無い。
その時、魔王の頭上に黒い雲の様な靄がかかり、その中から声が聞こえてきた。




