宿屋にて
3人は竜になったロイスに乗り、先程の広場に戻って来ていた。
「すっごい物貰ったわねあなた達。
サラマンドース様の武器なんて、この世に5本も無いわよ?」
「えぇ、しかし、この武器は意志を持っているようです。
おそらく今の私が使っても木刀の代わりくらいにしかなりませんね。
まぁ折れないだけで充分強いんですけど。」
「そうなんですか?私はなんか、持ってると暖かい何かに包まれているようで、心地いいです。
一度これを持って魔法を使ってみたいですね。」
「それなら500mくらい先にロックリザードがいるから、使ってみたら?」
シエルがそういうと、マリアはおもむろに
「本当ですね、やってみます。」
といい、先程使えなかった、気配察知と極細レーザーのコンボであっさりとロックリザードを倒してしまう。
「「「え?」」」
3人は口を揃えて驚いた。
「何それ?魔法技術向上?なんなのそれ?」
とシエルが驚きを見せると、マリアもわからずに、
「なんか、何も考えずにさっき習った事やったら、自然と出来てしまいました。
なんですか?これ。」
「もうこれはサラマンドース様にしかわかりませんね。
しかしこれでマリアの技術が向上したのはいいですが、この武器ありきだと困る事になりそうなので、なるべく使わないように練習していきましょう。」
とロイスは提案し、シエルも同調する。
「そうね、強過ぎる武器は身を滅ぼしかねないわ。」
マリアも納得し。
「ロイスさん、しばらく預かっといて貰っていいですか?
持ち心地が良くて手放せなくなりそうです。」
「わかりました」
と言い、マリアから受け取った武器を空間にしまう。
「それで?これからどうするの?」
「とりあえずガンダン王に報告とお礼を伝えたら、冒険者登録しましょう。
けど、もう夕方ですので、山を降りて、宿を探して、ガンダン王への謁見は明日の朝にしましょうか。」
「私もそうしてくれると助かります。
そろそろベットでゆっくり寝たいです。」
とマリアは少し申し訳なさそうに言うと、
「私もですよ、宿を探しに行きましょう。」
とロイスも同調し、3人は山を降りた。
山を降りた3人は、ガンダン城門兵に明日の朝、またお礼に伺うと王への言伝を頼み、ガンダン城下町へと歩みを進めた。
城下町は夜でも賑わっている。
それもそのはずだ、周りは酒場兼宿屋ばかりである。
ドワーフの酒好きが効しているのだろうか?飲み過ぎて潰れるものが多いのだろうか?ほとんどの酒場が宿を兼業していた。
そのうちの一件、3人は比較的静かな宿を選んだ。
「あまり人気が無いのかしら?ここの宿だけ静かね。」
「うるさいよりは、いいんじゃないですか?
お酒飲んだりしませんし、もしお風呂が有れば最高ですけど。」
とシエルとマリアがいい、3人は宿に入る。
カランカラーン
扉を開けると呼び鈴がなる。
「いらっしゃいませー!お食事ですか?お宿ですか?」
と10歳くらいの女の子が対応してくれるので、シエルが話出す。
「可愛い店員さんね、泊まりたいのだけど、2人一部屋と1人部屋は空いてるかしら?」
「大丈夫です!実は食事が出せないんですけど、大丈夫ですか?」
「私達は構わないけど、ロイスは大丈夫?」
とシエルがロイスに尋ねる。
「大丈夫ですよ。」
と答えてくれたので、3人はここで泊まる事にする。
「ありがとうございます!ではお部屋へ案内しますね!」
「お代は後でいいのかしら?」
「あっ、ごめんなさい!素泊まりで2部屋なので、銀貨4枚になります!」
安い!日本円でいうと一部屋2000円である。
「ロイス払って!」
とシエルが言って来たので、ポケットから出すフリをして空間魔法で銀貨を出して、女の子に渡す。
「待ってください!シュバルツ銀貨じゃないですか!こんな高価な銀貨受け取れませんよ!ガンダン銀貨かゴグルト銀貨はありませんか!?」
どうやら銀貨の価値が国によって違うみたいだ。
「持ってないので、それでいいですよ、お釣りはいりません。」
「えっ?どうしよう、こんなの受け取ったらお父さんに怒られてしまいます......」
と騒いでいると、受付の奥の扉が開き、腕に三角巾をした男性が出て来た。
「ユリカ、どうしたんだい?」
「お父さん、素泊まりのお客様なんだけど、シュバルツ銀貨しか無いみたいで、お釣りはいらないって言ってくれてて....」
「そうだったんだね、お客さんすいません、シュバルツ銀貨だと高価過ぎてお釣りが出せないんですよ、お釣りを渡さない訳にもいかないので。」
「1枚にしてもダメですか?」
「お客さん本当に知らないのですか?ガンダン銀貨とシュバルツ銀貨じゃ50倍の差があるんですよ。」
「そんなにでしたか、困りましたね。」
とロイスが困っていると、マリアが閃いた顔で、
「では、銀貨1枚で2部屋と、厨房を貸して貰えませんか?
食事は自分達で作りますので!
どうでしょう?」
「そんな事でいいんですか?うちとしては、あっしがこの腕なんで助かるんですが。」
「それじゃぁ、決まりで!案内お願いします。」
とマリアはニコリと笑い、女の子は父親の顔を見て、頷いてくれたので、
「お姉ちゃんありがとうございます!案内します!」
大きいお辞儀をしてお礼をいい、3人を案内する。
案内されている最中にマリアが、
「ロイスさん食材はありますか?」
「大体の物はありますよ。」
「では後で部屋に行きますね。」
「わかりました」
と言い、3人は案内された部屋に入って行き、しばらくして、
コンコン。
「どうぞ」
「お邪魔します、ロイスさん赤色の鞄出せますか?着替えが入ってるんです。」
と言われ、空間から鞄を取り出しマリアに渡す。
「荷物置いて、すぐ戻るので、何の食材があるか教えて下さい。」
と言い、荷物を置きに行き、戻って来た。
「食材は、ほとんどの物ならありますよ。
逆に何を作りたいか言って貰ったら出しますよ。」
「そしたらシチューの具材はありますか?」
「ありますよ、厨房を借りてそこで出しましょうか。」
「そうですね、では行きましょう。」
と言い、2人は厨房を借りる為、受付の奥の扉をノックした。
コンコン
「すいません、厨房貸してください。」
「はぁい、今行きます」
と言い、2人は女の子に続いて、歩いて行く。
「食事はいつもお父さんが作っているの?」
唐突にマリアが女の子に聞いた。
「そうです、でも腕の怪我で料理が出来なくて...」
「やっぱり、じゃぁ今は食事は?」
「簡単な物なら私が作れるんですけど、今はお父さんに教えて貰いながら、練習して、それを食べてます。」
と女の子は笑いながら答えてくれる、母親の事は聞かない方がいいだろうと思い、それ以上聞かない事にした。
「ここが食堂です、この奥に厨房があるので、好きに使っていいとお父さんが言ってました。」
「ありがとう、それじゃぁ借りるね」
と言い2人は厨房に入る。
そこで、ロイスはシチューの具材になるだろう物を粗方出し、マリアに使いたい食材を選んでもらう。
「これでいいわね、ロイスさんありがとう。
それで相談なんだけど.....
宿の親子にお裾分けしたいんだけど、いいかな?」
「もちろん構いませんよ、あの女の子、あまり食べれてないのが、少しげっそりしていましたからね。」
「えぇ、練習したご飯を食べてるって言ってましたが、今日の宿を見ると、上手くいってるとは思えなくて....
余計なお世話かもしれませんが.....」
「まぁ作るだけ作って、もし断られたら私が保存しとくんで大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます、それじゃぁ作っちゃいますね。」
「何か手伝いますよ、野菜の下拵えしますね。」
「お願いします!」
そう言い、2人は料理を始める。
その様子をニヤニヤとシエルが見ていたのは、おそらく2人にはバレていないだろう。




