竜人の集落
竜の島を飛び立った、ロイスとマリア、一つ何かを忘れている様な気はしたが、考えない事にしていた。
(ちょっとーー!なんで置いていくのよ!)
(シエル、連絡も取らないでどこに行ってたの?)
(島の北側に精霊の祠があってね、って竜族の人達は知らないんだけど、あっ、アンムート様は知ってるわよ。
そこでお話してたら時間なんて忘れちゃったのよねw
ふと空を見上げたら、あなた達が飛んで行ってたから慌てて繋いだの、えへっ。)
(プツン)
「ロイス、シエルから連絡来たけど、無視して行きましょう。」
「後から合流出来るのですか?」
「シエルなら飛んで来れるから大丈夫ですよ。
繋がってはいるから、位置はわかると思いますし、自力で来てもらいましょう。
接続を切ってた罰です!」
「わかりました、マリアも怒る事があるのですね。」
「心配かけた罰です!シエルの魔力が途切れたり、変な動きは無かったので、無事なのはわかってましたけど、それとこれとは別です!」
「ふふっ、わかりました。
もうすぐ昨日の海岸に着くので、そこから歩き旅の始まりです。」
「まずは竜人族の方の集落に行くんですよね?
新しい場所はとても楽しみです!」
「竜の島の街よりは、狭いですが、商人も出入りしてるので、新しく見るものも多いと思いますよ。
それでは降りますね。」
と言い、降下を始める。
前回とは違い、着陸前に重力魔法で、地盤を固めた為、砂塵が舞うことは無かった。
「ちょっと待ってよー!」
島の方からシエルが飛んできていた、竜の飛行速度はとても早い、直線的に飛べば、1日でこの星を1周できる。
その竜と変わらない速さで追いついてきたのは、やはりさすが聖の上位精霊と言わざるを得ないだろう。
「置いていくなんてひどいじゃない!」
「シエルが連絡もしないで、どっかに行ってたんでしょ?
シエルから切られたら、こっちから連絡する手段もないんだからね?」
「そうだけど、連絡したときに待っていてくれたらいいじゃない!」
「心配かけた罰です!」
「ううっ...」
ガサッガサッ
森の中から誰かがやって来る。
気配からして昨日の竜人族だろう。
森から出て来たと思ったら、すぐに片膝をつき
「ロイス様!お待ちしておりました!来て下さりありがとうございます!
案内しますので、是非着いて来てください!
お前達!道を作れ!」
「ヘイルガスさんと言いましたか?そんなに慌てなくても、落ち着いて下さい。」
「なんと!名前を覚えて下さっていたのですか!
わざわざお越しくださったのです、お待たせするわけにはいきません!
どうぞこちらへ、案内します。」
ヘイルガスの部下達が凄い勢いで道を作っていく。
途中で使用中の道に繋がったので、その後は落ち着きを取り戻し、ロイス達3人を守るように囲んで進んで行った。
10分程歩くと、竜人族の集落の入り口が見えて来た。
集落は丸太の柵で囲われ、門の両サイドには物見台が作られていた。
門の前まで歩いて来ると、門が開いていく。
開いた先には様々な色や身長をした竜人達がロイス達の到着を待っていた。
竜人の人集りの中心から、杖をついた年老いた竜人がこちらへと向かって来て、
「ようこそおいで下さいました、ロイス様。
この集落の長をさせてもらってます、ガーランと申します。
竜人一同心より歓迎いたします。
街の中央広場にて、宴席の用意がしてありますので、まずはそちらにお越し下さい。」
「お気遣いありがとうございます。
しかし宴席とか大層な事はもうやめて下さいね。」
「申し訳ありません、しかし次期竜王様がお越しになるのに、何もしなければ他の者にも、この先の子達にも示しがつきませんので、ご辛抱下さい。」
「いえ、ありがとうございます。」
これ以上断っては失礼に値するだろうと考え、ロイスは潔く受け入れる事を選んだ。
宴席の場では肉料理に果物などが彩られ、竜人達の食生活を垣間見る事が出来る。
肉には胡椒だろうか?スパイスがかけられており、とても美味しそうだ。
「さぁさぁ、召し上がり下さい。」
「凄く美味しそうですね、お肉の上にかかっている、黒い粉はなんですか?」
マリアが疑問に思い、ロイスにたずねた。
「これは胡椒と言う物ですよ、凄くいい匂いがして美味しそうですね。」
しかしロイスは、エレンが使っていた、このスパイスがとても高価な物だと知っていた。
「ガーランさん、このお肉の上にかかっているのは、胡椒ですよね?
こんな高価な物いいのですか?」
「ロイス様、お気遣いなさらず!
胡椒はこの集落の名物なので、月に一度来る商人に売るほどあるんですよ。
ですから、遠慮なく召し上がり下さい。」
「そうだったんですね。
ありがとうございます、それでは2人とも頂いてみましょう。」
と言い、食事に手を付けようとした時に、周りからの視線を感じロイス達3人は、周囲を見渡した。
竜人の人達がすごく見てきている。
胡椒に余程自信があるのだろうか、もしくは肉か?
パクッ
口に入れた瞬間に肉が溶ける、一度噛む毎に肉の油がジュースのように流れ出し、かと言ってしつこい感じも無く、胡椒加減も丁度いい、自然と笑みが溢れる。
ロイス達3人の顔を見た住人達が、
「うぉー!ロイス様の顔見たか!?美味しそうに食べて頂いたぞ!もう俺は死んでもいい!」
「良かったわぁ、頑張った甲斐あったわねぇ。」
「俺も昨日話を聞いてから寝ずに、ジャイアントウォーターボアを探した甲斐があったぜ。」
などと各々喜びを口にした。
それを見た3人は、
「皆さん、こんなに美味しい食事をありがとうございます。
この胡椒は皆さんの誇りとなる、素晴らしい物でした。
お肉にしても、ジャイアントウォーターボアでしたね?ジャイアントボアの亜種で、なかなか見つけられないと聞きます、そんなお肉を1日で探して来た、あなた方の努力は尊敬に値します!本当にありがとうございます!
私自身こんなに美味しい食事をしたのは初めてです。」
とロイスは感謝の意を伝えた。
実の所、エレンの料理は世界一とされるレベルだ、しかし竜人達の熱量や努力、心からの喜びを感じ、ロイスはこう伝えるしか、思い付かなかったくらい、感謝していた。
「ロイスさん、私からもいいですか?」
とマリアが言い、ロイスは笑顔で返した。
「皆様、本日はこんなに素晴らしいおもてなしをありがとうございます。
ロイスさんの婚約者として、旅に同行させてもらい、最初の場所で、こんなに素晴らしい気持ちにさせてくれて、ありがとうございます。
皆様のおかげで今後、この旅が幸多いものになると感じています。
本当にありがとうございます。」
とマリアもまた感謝を伝えた。
そんな2人の様子をシエルは微笑みを浮かべ見守っていた。
そしてマリアの言葉を聞いた竜人達が、
「旅の最初の場所で、ロイス様の婚約者!なんて凄い瞬間を私達は一緒にいるの!」
「おい、聞いたか!あの子、ロイス様の婚約者の方らしいぞ!」
「聞いた聞いた!美男美女で凄くお似合いじゃないか!しかも旅の最初の地らしい!これは嬉しいなぁ」
と各々がまたテンションを上げ喜んだ。
そこへ3人の元に族長ガーランが近づいて来て、
「ロイス様、もし時間に余裕がお有りでしたら、是非ここに泊まっていってくれませんか?
この通り殺風景で、何も無い場所ですけど、是非集落の皆との時間を少しでもお与え下さい。」
ガーランはかなり緊張しながら、不敬とも取られかねないお願いをした。
本来、竜人から見れば、竜は神に等しい、それに加え、次期竜王である、神をも超えかねない存在に、竜人達と過ごす時間を下さいなどと、命がいくつあっても口に出せるものでは無いだろう。
竜人達は固唾を飲んで見守った。
「構いませんよ、こんなに素晴らしい物を用意してくれたのです。
応えない訳にはいかないでしょう。
それに、是非ここをいろいろ見てみたいと思っていますし、胡椒が出来るところも是非見させて欲しいです。」
とロイスが答え、竜人達は歓喜の雄叫びを上げた。




