竜の石碑
ロイスとマリアは部屋を出て、真っ直ぐアンムートのいる祭壇に向かう。
祭壇の前に着くと、2人は跪き、
「アンムート様」
と、ロイスが呼びかけた。
呼びかけに応じ、アンムートが姿を表す。
「よく来ましたね、ロイス、そして精霊王アバンの娘マリア、これからあなた方は、様々なことを見聞きし、考え、行動に移すことでしょう。
そのすべてがこの星にとって重要なことであると考えて行ってください。
私とアバンが人族の世界で助けられる事はほとんどないでしょう。
しかし、困ったことがあれば、カルスやバーダリアを頼ると良いでしょう。
あの2人は、どちらかと言うと、人族の肩を持ちたがる節がありますが、同じ神として、この星を守りたいと言う気持ちは変わりません、必ずあなたたちの力になってくれるでしょう。」
「ありがとうございます、カルス様への挨拶やバーダリア様に改めてお話もしたいので、寄らせていただくつもりでいます。」
「アンムート様、お初にお目にかかります。
これから私も、ロイスさんと共にこの世界でいろいろ学んでいきたいと思います。」
3人は挨拶を交わし、アンムートが目を閉じ、掌で魔力を集めた。
アンムートの鱗の様に虹色に輝く魔力が、3m程に膨らんで行き、次の瞬間には、手のひらの上で2つのビー玉サイズの宝石のように固まった。
それを2人に渡す。
「これを飲みなさい、あなた達の封印されている能力を少し解放させます。
全てを解放させるには、あなたたちはまだ若すぎるので、ほんの少しですが、役に立ててください。」
「ありがとうございます」
「アンムート様、私にも封印されている力があるのですか?」
「アバンから聞いていませんか?あなたにもありますよ。
世界樹でのみ使える創造魔法、あれはあなたの消費魔力が多すぎるため、世界樹の近くでしか使うことはできませんが、それを飲むと少し魔力が上がり、簡単な創造魔法なら使うことができるでしょう。」
「本当ですか?!ありがとうございます。」
と言い、2人はアンムートから玉をもらい飲み込んだ。
すると、2人の周りに、虹色のオーラのようなものが輝き、2人の体の中に吸収されていく。
2人は暖かな魔力に包まれ、自身に封印された能力の正体を知った。
ロイスは少し目を閉じて、能力の解析を急ぐ。
使えるようになったのは、母アーマンドが得意な回復魔法の一部であった、この世界で回復魔法は珍しく回復魔法が使えるものが街に1人いれば、その街は大きく栄えると言われている。
その中でも、アーマンドの魔法は特殊で、死後1時間以内であれば、蘇生できる魔法さえも使える。
しかし、今回解放されたのは、オールキュアと呼ばれる怪我や病気を治す魔法だけである。
父ベルトランドの魔法は全て使えるため、問題はないが、母アーマンドは何か隠そうとしている節がある、それが何かわからないが、時が経ち、ロイス自身が力をつけていくとまた解放されるだろう。
「ありがとうございます。アンムート様、この力大切に使わせていただきます。」
「私からもお礼を言わせてください。
ありがとうございます、私はまだまだ子供ですが、いろんなことを覚えこれから強くなっていきます。
少しでもロイスさんのお手伝い、そして星のためにがんばります。」
「2人とも頑張りなさい、特にマリアさん、あなたはこれからいろいろな苦悩が訪れるでしょう、ですがロイスとあなたの精霊シエルが必ず守ってくれると思います。
ですから、あなたは、あなた自身に負けないように強くなりなさい。
ロイスあなたもですよ。
では、みんなに挨拶して旅立ちなさい」
「はいありがとうございました。マリア行きましょう。」
「アンムート様、ありがとうございました。行ってきます。」
そう言って、2人はアンムートの元を離れた。次に2人が向かう先は、中央の山の裏手側にある竜の石碑だ。
ここには今まで死んでいった竜たちの魂が眠っている。
竜たちは死ぬと一度星に帰る、星に帰った後、約1000年の時をかけ、転生すると言われているが、前世の記憶を持った竜は、継承魔法によって引き継いでいる竜王の一族のみになるため、それが定かでは無い。
ただ、竜王の記憶の中には、それが真実であると伝えられているため、竜達はそれを信じている。
「ロイス様、ここは?」
「ここは竜たちが眠る場所です、私の祖父たちもここに眠っています。」
と、2人は手を合わす。
しばらく手を合わしマリアがロイスの顔を見ると、とても真剣な眼差しで竜の石碑を見つめていた。
これから2人が行うことの険しさが、ロイスの顔には滲み出ていた。
「ではそろそろ行きましょうか?マリア」
「はいまずはどこに行くのでしょうか?」
「まずは、先日あったドラゴンミュートの集落に行こうと思います。
顔出すって言いましたからね。
ドラゴンミュートの集落を出た後はとりあえず南に進もうかと思っています。」
「南に行くと言う事はゴグルト立ち寄るのですか?」
「そうですね。ゴグルトのほうに向かい、途中にあるドワーフの街に寄ろうと思っています、後は途中途中にある街に顔を出し、首都圏以外の街の様子も見てみたいと思っています。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「では、ここなら竜の姿になっても問題ないので、ここから飛んでいきましょう。
乗ってください。」
とロイスが声をかけて、マリアはロイスの背中に乗る。
マリアが乗ると、周囲を風魔法で保護し、風圧などが影響しないようにする。
そして、ロイスは勢い良く飛び立った。
みるみるうちに、竜の島が遠のいて行った。
これから始まる竜と、人と精霊のハーフと、精霊の3人の旅は、とても長いものになる、星や人々の行く末のかかった旅である。




