↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/20

第5章 第1節 世界を救った翌日も変わらぬ安アパートの日常、相田悟は英雄ではなくただの酒飲みとして朝を迎える

第5章 現世、即ち安らぎの地


第1節 世界を救った翌日も変わらぬ安アパートの日常、相田悟は英雄ではなくただの酒飲みとして朝を迎える


 世界が救われた翌日、相田悟の朝はいつも通りに始まった。

 正確には、Aランクダンジョン「奈落の摩天楼」の最深部で「死の王(リッチ)」を殴り倒し、アンデッド化の呪いから都市を守った翌日だ。ニュースでは「謎の光り輝く拳を持つ男」の話題で持ちきりだったが、当の本人は六畳一間の安アパートで布団にくるまっていた。

 チュンチュン、と雀が鳴いている。

 平和だ。

 あまりにも平和すぎて、二度寝をキメようか迷うほどだった。

「……んぁ」

 相田はのそのそと起き上がり、万年床から這い出した。

 身体の節々が少し痛む。昨日のリッチ殴打の反動だろうか。いや、おそらく飲み過ぎて床で寝てしまったせいだ。

「おはよう、おつまみさん」

 相田が声をかけると、枕元に鎮座していた灰色の毛玉が、ポフンと跳ねた。

『うむ。今日の波動も悪くない。微かに残る二日酔いの頭痛、それもまたスパイスだ』

 相田の脳内に、相変わらず重厚な声が響く。

 相田は洗面所に向かい、鏡を見た。

 そこには、少し顔色の良くなった無職の青年が映っていた。以前のような死相は消え、目の下のクマも薄くなっている。

「さて、今日は何をしようか」

 とりあえず、冷蔵庫を開ける。中身は空っぽだ。昨日、帰還祝いと称して麗華と飲み明かした際に、ツマミの備蓄をすべて食い尽くしてしまったからだ。

「買い出しですね」

 相田は着替えた。ヨレヨレのTシャツとジャージ。これが最強の社畜(元)のオフスタイルだ。

 アパートのドアを開けると、そこには眩しい太陽と、湿気を含んだ初夏の風があった。

 そして、もう一つ。

「おはようございます、師匠(マスター)!!」

 ドアの真ん前に、直立不動で待機している少女がいた。

 神宮寺麗華だ。

 彼女は完璧なメイクと、どこかの令嬢らしい清楚なワンピースに身を包んでいた。ただし、背中には相変わらず巨大なハルバードケースを背負っている。

「……おはようございます、麗華さん。朝早いですね」

「はい! 師匠の朝の身支度をお手伝いしようと思いまして、四時から待機しておりました!」

「通報されますよ」

 相田は苦笑した。

 世界を救った実感など微塵もない。だが、この少し騒がしくて、どこか温かい日常が戻ってきたことだけは確かだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。