ー第3節 圧倒的な実力差を見せつけられた麗華は、魂を揺さぶる一撃によって強制的に停止させられる
第3節 圧倒的な実力差を見せつけられた麗華は、魂を揺さぶる一撃によって強制的に停止させられる
麗華は凍りついた。
自分の手首を掴む男の手。それは鋼鉄の万力などではなく、赤子の手のように柔らかく、温かかった。
だが、動けない。
どんなに力を込めても、ハルバードを引くことも押すこともできない。まるで、大自然の法則そのものに固定されたかのような絶対的な静止。
「貴方……一体、何を……」
「生き急いでいますね。呼吸が浅いですよ」
相田は諭すように言った。
そして、空いている方の手を、麗華の鳩尾のあたりにかざした。
「還りなさい、あるべき場所へ」
掌底ではない。
ただの、デコピンだった。
パチン。
軽い音が響いた。
物理的な衝撃は皆無に等しい。だが、その指先から放たれたのは、毛玉によって精製された「純粋なる安らぎ」の波動だった。
ドクンッ。
麗華の心臓が大きく跳ねた。
次の瞬間、彼女の全身から力が抜けた。
張り詰めていた神経の糸が、プツンと切れる音を聞いた気がした。
カラン……。
ハルバードが手から滑り落ち、床に転がる。
麗華の膝が折れ、その場に崩れ落ちた。
「あ……あぅ……」
視界が揺れる。
今まで背負っていた重圧、焦燥、恐怖。それらが砂の城のように崩れ去っていく感覚。
彼女は床に這いつくばりながら、相田を見上げた。
逆光の中に立つその姿は、あまりにも巨大で、あまりにも優しかった。
「……負け、ました……」
麗華は絞り出すように言った。
完敗だ。技のキレも、力の強さも関係ない。存在としての格が違った。この男の前では、自分の悩みなど塵芥に等しいと思い知らされたのだ。
相田は屈み込み、ポケットから何かを取り出した。
それは、飲みかけのワンカップ大関――ではなく、未開封のポーション瓶だった。以前、会社からくすねて……支給されていた試供品だ。
「これをどうぞ。少し落ち着きますよ」
相田は瓶の蓋を開け、震える麗華の口元に差し出した。




