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EP17 ぷー太郎、異世界にて賭す

 非認可薬物である〈レイズ〉の危険性は至ってシンプルであり、俺や魔族、獣人といった自己の体内で魔力をどうこうできない存在が服用した際に起こる。


 服用により魔力循環器の限界を超えて注入された魔力は、結晶化、最終的には使用者を魔石化させる。外見としては俺の【ダブル・ダウン】発動状態と似たようなものだけれど、そこに自意識が無いというのはゼロとイチの差だが、数字以上の隔絶が存在する。


 何を目的として作られたものであるのか……などと考えたところで、誰もあのリント・グレイマンなんて人間を理解できない以上はわからない。本人にすら、わからないのではないだろうか。




     *




 通された部屋は、飾り気のないながらも豪奢なものだった。


 物の少ない部屋にはカイザー・ホセと、幾人かの付き人が侍っており、それなりの人口密度ながらも大きく開いた窓が開放感を与えるために圧迫された空気は感じない。窓の外には煌びやかな夜の花街があり、夜の闇を打ち消すようだった。


「事情は察してるぜ、騎士隊の使いっ走り共。レフ・トールギストに隊長殿の娘御……アンタは、騎士隊の護衛役ってところか? いやはや、流石に彼の魔族殺しは連れて歩いていないのか……お目に掛かりたかったんだがな」


 挨拶も束の間、したり顔で語るホセ。

 自信に満ち溢れた態度というものは、やはり帝王と名乗るだけの精神を思わせる。


「俺がその、魔族殺しだぜ。カイザー・ホセ」


 だが、俺を指しての言葉にだけは間違いが含まれた。察しているとの言葉もあり、筒抜けという訳ではないのだろう。


「………………なぜ?」


「……? 何が」


「……いや、服装だとかは個人の趣味だな。気にするな。帝王たるオレとて、その器量は未だ拡大の余地があると知ったに過ぎん」


「はぁ……」


 眉間を押さえて深く息を吐き出す中で口にするホセの姿を、警戒心を張り巡らせて観察を行う。


「……だとして、目的はアレだろう? 麻薬ヤクを売るなって、小言。聞かんぜ、そりゃ」


「麻薬全般とは言わんさ、〈レイズ〉ってのがあるハズだ。それだけ、それだけ世に出回らせるなって言われて来ている」


「〈レイズ〉……あぁ、そういえば、あの准教授は捕まったらしいな。アレも魔族だったとかな。頭でっかちで人間を知らないから、一線を読めないんだ。だからバレて、捕まる羽目になる」


 俺の言葉から准教授の一件を思い出したらしく、肩肘ついて実につまらなそうに語るホセ。結局、麻薬だなんだと悪辣な金儲けをしていたとて、その根本は商売にあるのだから、その手の意識は高いのだろうか。


 だが、その方法に対しての拘りはないように見える。麻薬の販売停止は、口では拒否しているが断固として、という意思は見えない。騎士隊なり何なりが出張ってくるくらいならば辞める、声色からそんな態度に受け取れた。


「……〈レイズ〉は人を殺すぞ。使えるのは、魔族くらいなものだ」


 レフが、口にする。

 この一言により聴く姿勢を取ったホセに、レフは〈レイズ〉の持つ特性を訥々と語ってみせた。レフの説明はいつも通りにとてもわかり難い、専門知識を多分に含んだ物であり、語っている本人が途中から楽しくなり始めて脱線を繰り返したのは、やはりいつも通りであった。二度目の脱線あたりでホセが指文字で部下に指示を出して俺達を含めて卓に招き、お茶を嗜みながらレフの長話を聞き続けたのである。苦痛以外の何物でもない。


「——成る程、成る程。身体が魔石に、ねぇ」


「信じられないのならば、路地裏に転がっている浮浪者にでも打ってみればいい」


「いや、わざわざ試さなくとも得心いった。最近増えていたあのキモいオブジェは、元は人だったって訳だ」


「……俺達としては、別に他の麻薬なんてのは手を出す奴の責任なのだから、知ったこっちゃないのだから。〈レイズ〉さえ出回らなければな」


 本当は良くなくとも悪態をついているのは、空気の所為だろうと他責してみる。郷に入っては郷に従うのが日本人として染みついた癖なのだろう、清濁のどちらであっても。


 何であれ、今ばかり苦痛を噛み締めて、この場所も知った話も後でアドリアンさんにチクってやろう。全部、丸ごとそっくりそのまま流してやろう。


「まあ、商売の基本はリピーターを増やすことだ。その顧客が死んじまうとなりゃ、考えもするかな……」


「では……!」


 ノエルさんの声にホセが一瞬視線を向けたが、その視線が物語るのは待ってましたと言わんばかりの、誘われた事実のみであった。


「世に商いで必要なものは、何とされているか知っているか?」


「運否天賦じゃないですか?」


「……だな。だが、一度間違えたところに『いや! それは運だ!』と言いたかったのだがな…………割と当たり前の話なのか……?」


「あ、すみません……まさかそんな割とある結論に行くとは思わず…………」


「まあ、いい。つまり、って結論は単純な話だ」


 運を示せ、とカイザー・ホセは要求する。

 俺達に賭けていいと思わせるだけの、俺達の側に着いた方が得ができるだけの運を見せてみろというのが、ホセの理論なのだ。だというのならば、話は簡単だった。


「裏ジジ抜きでオレに勝って見ろ。そしたら、〈レイズ〉の件で協力してやる」


 ゲームに勝てと、ほんのそれだけの話である。

 決闘で勝つだとかそうした暴力的な行為ではなく、理性と知性で戦うトランプゲーム。魔族共に比べて、このカイザー・ホセという人間がどれだけ厄介な奴であるのか、その証左だろう。


 バイオレンスは、実に単純で短絡的な交渉手段だったのか、身に沁みて染み入る。


「ババ抜きはやったことあるか?」


「ええ」


「ジジ抜きは?」


「ジョーカーの代わりに別のカードを一枚抜くのですよね」


「そうだ。今回は、このジジ抜きで勝負してもらう。だが、勿論そのままのルールって訳じゃねぇ。『裏』ジジ抜きだからな」


 隣に立つ女性がホセに渡したのは未開封のトランプ。それを開き、扇状に広げたホセは中央辺りから引き抜きながらもそう話す。


 ダイヤの7。貨幣を示すダイヤと、ラッキーナンバーのセブン。


「まあ、少し待って……認識としては、勝負に勝てば〈レイズ〉の流通を止めてくれる。で、間違いないのかな?」


「………………」


「やっぱりね……ライト! さっきアイツ、何て言ったか覚えてるよね?」


「『協力してやる』……でしょ? まあ、言い回しって引っ掛かる程でもないけれど、なんとなく、やっぱりね」


 鼻を鳴らして詰め寄るレフに、ホセは首をもたげて見下し、ようやく俺達の敵視を開始した。


「〈レイズ〉は俺の管轄で売ってはいるが、流通は商人マーチャントのオッサンに一任している。楽市楽座、ってな。……俺に勝てば、魔族・マーチャントの居場所を教えてやる。これで良いだろ?」


「あぁ、最初から言って欲しかったけれどね。さ、ルールを聞いてあげるから、ハリーアップ!」


 どうやら今回は煽っていくスタイルらしいレフだが、ホセは然程気にしていない様子だ。だが、周りに立つホセの取り巻き連中は、レフのスタイルが気に食わないらしい。


 イライラしているのを肌で感じる。ずっと相手のペースだったから、少し、愉快だ。


「じゃあ遠慮なく。


「裏ジジ抜きは、名前通りに①基本的なルールをジジ抜きと同じにする。最初に一枚のカードを伏せて置き、残りを配ってペアを作って捨てていく。


「通常のジジ抜きとの違いは②自身の手札は見れない点。つまりは手札を相手に見せた状態でプレイするって訳だ。


「当然、それじゃ自分の手札でペアが出来ているのかわからないからな。③ペアの処理はディーラーにやらせるものとする」


「ディーラーはノエルさんに任せたい。おたくの部下は、こちらとしては信用に足らないのでね」


「構わないぜ。


「④トランプは二セット使い、同じ数字とマークでなければペア成立としない。これは難易度を上げるための縛りだ。簡単じゃ、運試しにならないだろ?


「ああ、それと⑤自分のターンでは必ずカードを引くこと。つまりは、パスは禁止ってワケ。どうにも、言っとかなきゃいけない気がしてな。


「勿論、運試しだから⑥ジョーカーはありだ。だが、これはワンペアだけ入れさせてもらう。ツーペアじゃ、冷めるだろ?


「⑦ジョーカーを揃えた場合、任意の相手と手札を交換する。勿論ジョーカーは消費されるから、一回コッキリの切り札だ。手札のわかったものを手にできて、尚且つ手札を増減させられるってワケ。


「セントリア嬢がディーラーになるワケだから、こっち二人にそっちはお二人さんの計四人でのプレイになるワケだが、⑧チームメンバー全員が失格した時点で相手チームの勝利とする。それに勿論、ゲーム開始後の⑨仲間同士の相談禁止。


「ルールとしちゃこんなものだが、問題は?」


 全部で九つのゲームルール。複雑とはいえないルールだが、どうにも面倒なルールに違いはない。


「質問です」俺は挙手をしてから、疑問点を口にした。「数字、マーク共にとなるとかなり泥沼なゲームになると思うのですが、その点に関しては?」


「安心しろ。このゲームはこれまで何度もやって来たが、割と揃うんだぜ? なんだって、普通は見えないものが見えているワケだからな」


 成る程。つまりは、神経衰弱的な要素もあるのだ。

 ペアが成立したカード、他三人の手札のから自分の手札を導き出して数を減らす。ジョーカーは切り札なのだから切るタイミングを見計らい、その上でいつでも成立させられる状況をセッティングしておく。


「やろうか……カイザー・ホセ」


「だから気に入った!」


 ホセが指を鳴らすと、そそくさと取り巻きによりゲームの場がセッティングされていった。その間に俺達は使用するというトランプ二セットの確認を行い、ノエルさんはディーラーのやり方を指南される。


 四角四面の卓の辺に一人ずつ腰を下ろし、中央に空いた空洞にノエルさんが立つ。よくシャッフルされたデッキから一枚ずつ配られていく手札を眺めながらも終わるのを待ち、トランプ二セットにジョーカー二枚を加えた一〇六枚。一人当たり二十六枚のカードが配られる。発生する二枚の余りは、それぞれのチームに均一に配布するべくホセとレフに配られた。


 そして配られたカードを扇状に広げて、自らの手札の背面を眺めるという普段ならば行われない光景に違和感を覚えながらも、ペアの処理を待つ。


 ホセの手札からハートのAを始めとするクラブのQ、ハートの9、スペードの7の四ペアが。


 レフの手札からスペードのJを始めとするダイヤのJ、スペードの8、ダイヤの5、ハートの3の五ペアが。


 ホセの部下の手札からクラブの3を始めとするクラブの10の2ペアが。


 そして俺の手札からは、しかし一枚としてペアを排出せずにゲームは開始された。


 手番は手札の多い俺からホセ、レフ、部下と回り再び俺に帰ってくる循環で、俺はホセの手札からダイヤのKを引き抜き、初めてのペアを成立させた。


 ジョーカーはレフとホセの手札に含まれているが、これを引いてレフに回すのは難しいと考えて、ここはジョーカーを捨てる選択を取る。だがこの場合、ホセがジョーカーの役を作る可能性が大いにあり得る訳で、どこかのタイミングでジョーカーを確保しなくてはならないのは自明の理。


「Kに思い入れでもあるのかい?」


「一番欲しいカードなものでね、俺自身が」


 相手をする三人の手札、そして作られたペアの内容がわかっている以上、自分の手札はある程度の予測ができる。だが、ジジ抜きである以上、それでも尚ジジが何のカードであるかがわからない以上、確定とまではいかない。


「悪い手札の中で、2を求めないのは強さだな」


 ホセは、ハートの10を取りペアとして捨てた。


「久し振りにやるが、ジジ抜きって、やっぱ盛り上がらないよね。途中経過が割と暇……」


 レフが、スペードの5のペアを作り、捨てる。


「………………」


 ホセの部下が、ダイヤの7を作り、捨てた。

 全員が詰まらずにペアを捨てられている以上、ホセの口にした通りに割と揃うらしい。だが、レフの言う通りにそこそこの緊張感はありながらも心のどこかで暇だなと思ってしまう気持ちはある。


 二周目——

 俺・ダイヤの8 ペア成立

 ホセ・スペードの4 ペア成立

 レフ・クラブの9 ペア成立

 部下・クラブの5 ペア成立


 三周目——

 俺・ダイヤのA ペア成立

 ホセ・クラブの6 ペア成立

 レフ・ダイヤのA

 部下・ハートの6 ペア成立


 四周目——

 俺・ダイヤの4 ペア成立

 ホセ・クラブの4 ペア成立

 レフ・スペードのA

 部下・ハートのJ ペア成立


「………………」


 ここまで進み、再び俺のターンが訪れたが、しかしこのゲームに施された細工に気付き、結果としてジジのナンバーに気付いてしまった。検分したにも関わらず、気付きがゲームプレイ中になるとは……やれるだけをやるしかない。


 このゲームに使われているトランプ、裏の模様、その右上部分が全てのカードで若干異なる。蔦のような模様のうらり、そしてから生える葉、その形と数が異なるのだ。


 表すのは恐らく、数字。増減が激しいとバレるリスクが増えるために、形を変えて、数えて五で一枚にまとめているのだろう。


 例えば、トゲトゲの葉っぱ一枚とつるんとした葉っぱ三枚で表すのは8。

 そして蔦の絡みの違いは、恐らくマーク。


 ここから導き出される結論は、ジジは[ダイヤの6]ッ!


「………………ッ」


 つまり、現状の手札はこうだ。



 俺・ハートとダイヤのK、ハートのQ、クラブのJ、ダイヤとスペードの10、ダイヤの9、ハートとクラブの8、ハートとクラブの7、スペードの6、ハートの5、ダイヤの3、クラブとスペードの2、スペードのA。

 十八枚。



 ホセ・ジョーカー、クラブのK、ダイヤのQ、スペードの9、ハートの4、スペードの3、ダイヤとハートとスペードの2、クラブのA。

 十枚。



 レフ・ジョーカー、ハートとダイヤのK、ハートとスペードのQ、スペードの10、クラブの8、ダイヤの6、ハートの5、ダイヤの3、クラブの2、ハートとスペードのA。

 十三枚。



 部下・クラブのK、ダイヤのQ、クラブのJ、ダイヤの10、ダイヤとスペードの9、ハートの8、ハートとクラブの7、スペードの6、ハートの4、スペードの3、ダイヤの2、クラブのA。

 十四枚。



 ジジを持っているのはレフであり、また部下の手札から何のカードを引いたところでペアを作り出せない状況に陥っている。だが、俺がペアを作れるカードを避けつつも、またホセにペアを作らせないカードを選ばなければならず、追い詰められている。


 しかし、この手札差でジョーカーを揃えられるホセは、揃えたところで交換するような相手もいない。手早く切るのか、あるいは後に残すのか……どちらだ。


 五周目——

 俺・ハートの7 ペア成立

 ホセ・ハートの2 ペア成立

 レフ・ダイヤの9

 部下・ハートの8 ペア成立


 レフのやり口としては、俺にカードを回すよりもホセにカードが回るのを阻止するらしい。それがどちらに回るのかはわからないが、良い方向へ向かうことを祈る。


 六周目——

 俺・スペードの2 ペア成立

 ホセ・ジョーカー ペア成立


「ここで来るかッ! カイザー・ホセ……ッ!」


 思わず声を上げる俺に、ホセはニヤリと嫌味ったらしい笑みを返す。ホセの手札は部下のものと交換されたが、これによりホセのやり口も明らかになった。


 カイザー・ホセは、この勝負で自ら勝利するつもりだ。部下に勝たせて、なんて考えではなく、運否天賦にイカサマ、ハッタリ何を使っても、最初の上がりを奪う気だ。


 そりゃそうか、奴の理論ならば、それが勝利なのだから。最初の上がりこそが、最も運のある存在なのだから。


「ライトさん、お静かに……」


「あ、ああ……すみません」


 追い込まれ、眉を顰めながらもディーラーとしてあろうとするノエルさんに癒されながらも、頭は勝利に向けて必死に活動を続けた。決して頭の良い男ではないし、感情過多な自覚もある。だからこうして、追い詰められるには弱い。


 思考がまとまりを失う。脊髄反射で動こうとしてしまうのは、ロランさんに言わせると戦士の素養らしいが。


「やる他にないのだから、冷静になれよ神田来人」


 口を開かずに舌を動かして発した声は、しかし音にはならず、身体に溶けていく。それで冷静になれない人間なのは、悲しいところだが。


 俺を構成する要素ならば、もっと複雑であって欲しいところなのだがね。


「さて、続けようぜ? オレ達の将来を左右する、楽しいゲームの続きを……なァ」


「嫌いだよ。アンタも、アンタを取り巻く環境も」


「それがいい。危険の香りに誘われるのは、泥濘とした日々を過ごしている証拠に他ならないのだからな。退屈は、猫をも殺すぜ」


「……肝に銘じておくよ」


 レフ・ダイヤのQ

 部下・クローバーの7


 七周目——

 俺・クローバーのJ ペア成立

 ホセ・ダイヤのQ ペア成立

 レフ・ハートの4

 部下・スペードの6


 八周目——

 俺・ダイヤの10 ペア成立

 ホセ・ハートの4 ペア成立

 レフ・スペードの3

 部下・スペードの2


 九周目——

 俺・クローバーのA

 ホセ・スペードの3 ペア成立

 レフ・クローバーの2 ペア成立

 部下・クローバーのA ペア成立


 流れが悪い……協力させられている。こちらの感情に関わらず……ッ!


 十周目——

 俺・ダイヤの2

 ホセ・クローバーの8

 レフ・スペードの9

 部下・ダイヤの2


 十一周目——

 俺・クローバーの8 ペア成立

 ホセ・スペードの9 ペア成立

 レフ・スペードの6

 部下・スペードのA


 十二周目——

 俺・スペードの6

 ホセ・ハートの5

 レフ・スペードのA

 部下・スペードの10


 十三周目——

 俺・ハートの5 ペア成立

 ホセ・ダイヤの3

 レフ・スペードの10 ペア成立

 部下・スペードの6


 十四周目——

 俺・ダイヤの3 ペア成立

 ホセ・スペードの6

 レフ・スペードの6

 部下・ダイヤの9


 やはりだ。カイザー・ホセ、獰猛さとでも表すべきか、その傲慢な性格は。

 欲望との付き合い方とは、こういうものか。


 十五周目——

 俺・スペードの6

 ホセ・ダイヤの6

 レフ・ダイヤの9 ペア成立

 部下・スペードの6


 十六周目——

 俺・ダイヤの6

 ホセ・スペードの6

 レフ・スペードの6

 部下・ダイヤの6


 やるしかない。

 勝ち負けに関わらず、勝負に出る他には。運の勝負でないのならば、男気というヤツに賭けてみるのも面白いはずだ。認めさせるッ。


 十七周目——

 俺・クローバーの7

 ホセ・スペードの6 ペア成立

 レフ・ダイヤの6

 部下・クローバーの7 ペア成立


 十八周目——

 俺・クローバーのK

 ホセ・あがり


「……さて、オレの勝ちだな」


「魅せてくれる……惚れ惚れする戦い振りだ」


 手札を棄てながらも口にしたのは、紛れもなく負け惜しみだった。


「そりゃ、ドーモ。運に見放されたな」


「……そうでもないね。なぁ、ライト」


「負け惜しみにしては、言い過ぎじゃないか?」


 レフの言葉の真意を掴めずに返したが、その表情に浮かんだのは勝利の確信であり、何となくボンヤリと、外郭だけでもその理由を理解した俺は放り捨てたカードを再び構えた。


「折角だから僕は、クローバーのKを選んだぜ。さぁ、アンタはどうする?」


「………………ッ⁉︎」


「気付いた、か」


「ルールで設定されていた勝利条件は『⑧チームメンバー全員が失格した時点で相手チームの勝利とする』でしたね」


「だとして、次番でオレからカードを引けない魔族殺しは『⑤自分のターンでは必ずカードを引くこと』に抵触して反則負け。オレはダイヤの6を取り、レフ・トールギストは部下のリウンのカードを取る。リウンはここで反則負け。……つまり、コールドって訳だ」


「勝敗は着かなかった訳だが、落とし所としては最適に思えるが?」


 運か仕組みか、どう足掻いたところで決着は着かない。こうなれば最早、どう落とし所を作るのかという話になる。

 そして、もしカイザー・ホセが真実、帝王としての威厳があるのならば……。


「期待されてるな……そう見られると、答えざるを得ない」


「良いので? 裏切ることになるんですよ」


「構わん。他者を裏切るより、自分の芯を裏切る方が余程辛いのは、お前とて知っているだろう」


 感謝は、伝えなかった。

 カイザー・ホセは、正しく帝王であったという訳だ。この小さな鳥籠、花街の中で……という注意書きは付くものの。


 勿論、この言葉は結局負けな男の負け惜しみだけれどね。

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