⑥ 魔女のアプローチ
時代は変わり平成元年になった。
雪子は相変わらず、定期的に吉川組長の元に訪れている。
西暦で言うなら1989年の1月15日、日曜日だった。
その日はまさに「成人の日」。
二十歳のお祝いのめでたい日であった。
不老不死の雪子の見た目は、相変わらずの17歳。
セーラー服の良く似合う彼女だが、実年齢はもうすぐ24歳。
もう既に立派なオトナであった。
そんな彼女が、今日も事務所のソファーで組長ににじり寄る。
「ねえ、組長さん。まだ私を抱いて下さらないの?」
「勘弁してください、真田の姐御。それだけは無理なんで。」
「どうして?見た目はともかく、前にも事情は説明した通り、私の中身はもう立派な大人なのよ?」
「セーラー服を着ている娘さんは抱けませんて!」
「何よこれくらい。貴方、極道なんでしょ?」
「それはそれ、これはこれ、なんで。」
「わかった。脱げばいいのね?」
脇のジッパーに手を掛ける雪子。
「わーっ、ヤメテください。誰か来たらどうするんですか!」
「既成事実を作ってしまえばいいのよ。」
「なんてぇヤクザな女なんだ!」
「これじゃあ、アベコベね?」
「ねえ、真田の姐御…。」
「いやよ。雪子って呼んで。」
「雪子の姐御。オレはアンタのことが大好きだよ。」
「あら、嬉しい。じゃあ、早速……。」
「でも、それだけはできねえ。」
「どうしても?」
「どうしても。」
「オレの心はアンタの物だ。でも身体はそうはいかねえ。」
「頑固なのね?」
「それだけがオレの取り得なんで。」
「他にもたくさんイイところがあるわ。」
「オレはアンタじゃない女を、女房にすると決めているんだ。悪く思わないで、オレのことは諦めてくれねえかい?」
「……。」
「その女には子供を産ませて、そいつに組を継がせるつもりなんだ。カタギのアンタにそんなことはさせたくねえ。」
「……それが現実ってことね?」
「そうだよ。アンタも賢い女なんだろ。わかってくれるよなあ?」
「じゃあ、せめて、私の最初のオトコになってよ。」
「……。」
「それで、貴方のことはきっぱり諦める。カタギの私に、極道の妻なんて務まらないものね?」
「……。」
「もう二度と、貴方に付きまとうことは無いと誓うわ。それでいいんでしょう?」
「……それは……確かな約束なのか?」
「全ての時空の、私の首を賭けるわ。」
「……。」
……その後、吉川正義がどうしたのかは、読者の想像にお任せしようと思う。
ただ彼の名誉のために、再度つけ加えるならば、二人が男女の仲になっても、それは合法だということである。
オトナの男女がナニをしようが、自由なのである。
それは、詳しく書くだけ野暮と言うものなのである。
で、あるからして、どちら様も、悪しからず御了承頂きたいところである。




