⑤ 魔女の初恋
つまりコレは、雪子にとっての初恋にあたるのだが、本人もあまりハッキリした意識も無く、なぜこれ程、吉川正義のことが気になって仕方がないのか、自分でも判然としないまま、彼との関りをその後も続けることとなった。
結論から言うと、この恋は成就することは無かった。
それはそうだろう。
ただでさえ、出会ったときに雪子は17歳。
その後、サン・ジェルマンに教えられた方法で、不老不死になってしまったのだ。
片や相手は自称❝正義のヤクザ❞。
吉川正義の名のごとく、曲がったシノギは大嫌い。
子分、組員を大切に育て、養う。
オンナ子どもに迷惑を掛けないがモットーの、見上げた極道だ。
永遠の未成年の少女に手を出すわけも無く、二人の間柄に進展は無いわけで……。
それでも雪子は何だか楽しかった。
久しぶりに気分転換ができたからかもしれない。
今までは雪村や友人たちのサポート。
それからずっと自分の同位体の捜索。
そのスキルやチカラの収集に努めていたのだ。
そう言えば、出会った同位体たちの多くが、「疲れた。」と言っていた。
そして趣味に没頭したり、パートナーと結婚したりしていた。
コレはそういうことの影響なのだろうか?
私もとうとう疲れちゃったのかしら?
いくら考えても分からない。
だって、これは気持ちの問題だから。
とりあえず、❝昭和❞の歴史を壊さない程度に、今を楽しんだらいいのよね?
そんな風に考える雪子であった。
吉川正義は困っていた。
真田雪子は強く、頼りになる。
その上、ちょっとカワイイ。
まさに魔女。いや、小悪魔だ。
拒否し難い魅力を持っている。
だが、彼女はカタギの未成年だ。
まさか女房にするわけにも行かない。
それだけは主義に反する。
それに何だか神出鬼没で、何でもお見通しだ。
もしもパートナーとして迎え入れたら、今後頭が上がりそうに無い。
それも困った話ではある。
そんなわけで、今後は付かず離れずの付き合いをすることとした。
失礼のない程度にもてなし、機嫌は損ねないようにしよう。
後は、うっかり好きになったりしないようにしよう。
彼はそう心に誓うのだった。




