表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペトリコールに融けるふたり  作者: 白い黒猫
ループを壊せ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/60

11:11:11に向かって進む時

 私はフリーランスで仕事をしていることもあり、朝の五時から七時は「早朝」という扱いで、旅行やイベントがあるとき以外は活動していなかったと思う。そういうときは連絡確認でLINEを見るくらいで、バタバタしていてSNSを触ることはなかった。


 けれど世の中の人は意外と朝から動いていて、SNSも盛んに利用しているのだと、今回の作戦でよく分かった。


 三回目のこの朝は、六時の段階で【謎のメッセージ】がすでにトレンド入りしており、七時には「いくつかの事項が実際に起こっている」ということで【予言メッセージ】へと変化していた。


 騒いでいるのは信じている人ばかりではなく、疑いの目を向けている人もいて、結果的にお祭り騒ぎのようになっている。前二回よりも広がりは明らかに早い。どうやら“お騒がせインフルエンサー”たちは時間関係なく元気いっぱいのようだ。


 八時ごろには@karuma1111という人物が「11:11:11」という時刻について、過去にループ現象を起こした事故に言及している投稿を見つけた。「この日のこの時間帯は変な事故が多い」とまで書かれていたので、念のためスクリーンショットを撮っておく。


 集合時間まで、マイちゃんと電話で話しながら、二人でSNSやテレビを確認する。


 九時、私は佐藤宙さんと土岐野廻さんとカラオケルームで落ち合い、まずは二人に状況を報告した。家電量販店で足りない機材を買ってきてくれたマイちゃんも合流し、セッティングを済ませる。十時ごろには飛行機組も到着した。


 皆に状況が分かるよう、SNSのスクリーンショットを共有しつつ説明する。今までで一番騒ぎは大きくなっている。施主や施工主のSNSアカウントには、時間とともに「工事を中止せよ」というコメントが増えていた。さらに一時間前だというのに、勝手に現場前で中継している人まで出てきている。オールドメディアは施主や施工主との“大人の事情”があるのか、まったく報じていない。


 今回は「施主と施工主が加害者で、被害者はELEVENタワーである」と暗に表現したことで、SNSのアジテーターたちがこちらの望む行動を取ってくれているようだ。二つの企業にとっては、起きてもいない事故で責められていることになるので、たまったものではないだろう。


 そんなネットの状況を会議室のみんなに中継しながら、私は緊張していた。


 もし事故が起こらなかったら? 世界はどうなるのか? 最大の被害者である私たちが、事故を避けて動いてきた今までの状況と、どう違ってくるのか?


 二回目のとき、中継をして亡くなった人物が、今回も工事現場の様子を配信していた。


 ――カーン、カーンーー


 私の脳裏に、あのとき湿度のある空気の中で鈍く響いていた工事音が蘇る。


 ただし中継はELEVENタワーから撮影しているため、工事音も雨音も拾われていない。道路から撮影している人もいて、立ち止まってはカメラを向け、やがて立ち去っていく。


 十一時を過ぎると、会議室の会話は減り、重苦しい沈黙に包まれる。映像には、工事現場の作業員たちが並んで戸惑うように見下ろしている姿が映った。私は思わず声を上げる。


「日廻さん! 素人目には分かりにくいのですが、今この現場、作業は動いていますか?」


『止まってるね。作業員があんなふうに複数人で同じ場所に佇むなんてあり得ない。しかも格好から担当はバラバラの人がこんなところで集まらない』


 動画を見ながら、日廻さんは冷静に答える。


 もしかして、成功する?


 それ以降、誰も口を開かず、時間だけが異様にゆっくりと進む。


 アナログの時計はないのに、頭の中で「チクタク、チクタク」と音が響き続ける。

 十一時五分を過ぎる。      チ

 映像は平和そのもの。       ク

 雨は相変わらず降り続いている。 タ

 十一時六分            ク

 雨粒が少し小さくなっただろうか。  チ

 十一時七分              ク

 気のせいか、              チ

 空がわずかに明るくなった気がする。  ク

 十一時八分             チ

 工事現場のクレーンは動いていない。  ク

 これは行ける?           タ

 十一時九分。           ク 

「もうじき予言の時刻です〜!!   チ

 さてどうなるのか?!」      ク

 動画配信者の耳障りな声が響く。 タ 

 あのお洒落な喫茶店で、      ク

 こんな声をあげているのだろうか。 チ

 この男は……。         ク

 十一時九分十五秒      タ

 十一時九分三十秒      ク

 十一時九分四十五秒      チ

 こんなに時間って      ク

 こんなにも経つのが    タ

 遅かったのだろうか?  ク

 十一時十分        チ

 十一時十分十五秒    ク

 十一時十分三十秒     タ

 十一時十分四十五秒     ク

 十一時十一分       チ

 私は息を止めて     ク     ト

 画面を見つめ続ける。   タ    ッ

 十一時十一分一秒      ク     ク

 頭の中で時計の音に加え  チ     ト

 心臓の鼓動までもが重なり  ク     ッ

 十一時十一分二秒      タ     ク

 十一時十一分三秒     ク    ド

 十一時十一分四秒    チ     ク

 十一時十一分五秒     ク     ド

 十一時十一分六秒    タ     ク

 十一時十一分七秒     ク    ド

 十一時十一分八秒    チ    ク

 十一時十一分九秒    ク    ド

 十一時十一分十分   タ    ク

 胸が苦しい     ク      ド

 十一時十一分十一秒  チ    ク

 私は息を吸い、吐いた。 ク   ド

 十一時十一分十二秒  タ   ク

 十一時十一分三十秒  ク  ド

 十一時十二分ちょうど  ・ ク

「事故、回避できた?!」 ・ ド

 誰かの声が響いた。    ・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ