【4.5】冷めた紅茶
そこまで話して、ユウは一度息を整えた。
前に座っていたエドワードは、まるで子供の様に満面の笑みを浮かべては、こちらを見ている。 一方、隣のアリスは下を向いて顔をこわばらせると、両手を膝の上で握り、ただ黙っていた。
すっかり冷めていた紅茶をユウが一口すすると、エドワードはこう切り出した。
「ユウ君、さっきの話だけど。 その音が聞こえなくなると言うのは、とても戦う事に集中した状態と考えて良いのかい?」
「あぁ、そうだな。 対峙した相手に意識が全て集中している状態、師匠もそう言っていた。 だが、それ以外が疎かになるのはダメだと、特に乱戦になった場合は。 だから、切り結ぶ一瞬だけ切り替えられる様になれと、良く言っていたよ。」
「なるほど……。 大雑把な攻撃で君を逃げ惑わせ、周囲全体に集中力を注がせ、そこから相手に対峙した時の訓練に切り替えると。」
エドワードは顎に手を当てて唸っていたが、ふと視線が左に流れ、こう続けた。
「まだ話は聞かせてくれるのかい?」
「あぁ、別に構わない」
「なら紅茶のおかわりを持ってこよう、話に聞き入って、すっかり冷めてしまったね。」
そう言って、そそくさと立ち上がると行ってしまった。 取り残されたユウとアリスだったが、口火を切ったのはアリスの方だった。
「ユウさん……。 どうして、こんな話を?」
「あぁ、少し思うところがあったんだよ。 それに、俺が悪魔って話はしてないだろ」
もちろん、師匠が悪魔だと言う事は説明している。 しかし、ユウ自身が悪魔だと言うことは話していない、そこは適当に誤魔化している。 だが、アリスが言っている事は、そういうことではない。
悪魔と関わりを持った、それだけでも王国では処罰されかない。 むろん、今こうしてユウとアリスが一緒に居ること自体も本来なら問題である。 誰かの、よほど思い切った判断が必要だったのだろうが。
「それでも、この話が万が一に他の誰かに伝わったら……。」
「その時は、お前達に迷惑がかからない様にするさ、それに国王も動くだろ。」
「違います! そう言う事を言っているんじゃなくて!」
そう言ったアリスは、悲しそうな表情でユウを見つめていた。 また彼女の声が届いたのか、遠くに座っていた学生がこちらを見てひそひそと話をしている。
「少しは落ち着いてくれ。 たぶん、ここでエドワードに話しをしなきゃいけないんだ。 毎朝、お前に会いに行ってた時みたいにな……。」
「それって……。」
ユウはアリスを見ると、一度ため息をついて、また話を続ける
「あいつは、そう長くない。 それから、どうしてここまで剣にこだわっているのか、理由は分からない。 だが悪魔の気配がする、あいつ本人からではないが。 今までもそうだ、ただ何となくだが良くない気がする、だから誰かと関わりを持ってきたんだよ。」
「私の時もですか?」
「そうだな……。 そう思わなければ、ひっそりと森の奥で暮らすさ。」
「そうですか。」
そう返したアリスの表情は明るくはなかった。 そんな雰囲気を察するかの様に、エドワードは都合の良いタイミングで温かい紅茶と一緒に戻ってきた。
そして座り直した彼を見て、ユウはまた話を始めるのだった。




