129 再会
あれから一ヶ月が経った。
俺たちは六十五階でひたすら狩りをして、動きの訓練をした。
俺のパッシブ魔法も成長したのか、随分と動きはよくなっている。
ミハエルはさらにその先へといっているけども。
そんな今日はとある店を貸し切って食事会をする予定なのだ。
貸し切ったのは俺ではないが、会話内容からして貸し切りはベストだと言える。
こうなった発端は一昨日へと遡る。
いつも通り六十五階での狩りを終え、ギルドでアイテムの清算をしていたところ、ギルドに誰かが入ってきた。
周囲がザワリとしたので何かと思って振り返ると、そこにいたのはよく見知った顔だった。
「よお。久しぶりだな」
ニヤッと笑ってそいつは片手をあげる。
その後ろからもう一人が片手をあげた。
「やあ。久しぶりだね」
俺は彼を見て笑みを浮かべた。
「お久しぶりです、エアハルトさん、みなさん」
そんな俺の声にエアハルトさんたちは笑みを浮かべ、レオンは不機嫌になった。
「お前、なんでまずエアハルトたちなんだよ。俺が先に声かけたろうが」
「うるさいな。先にエアハルトさんたちに挨拶するのは当然だろう」
そんな風にヤイヤイ言い合いながら久しぶりの再会を喜んだ。
ギルド併設の酒場の一角に腰かけ、少しだけ会話する。
レオンはミハエルに押し付け、俺はエアハルトさんと話す。
「今日戻って来られたんですか?」
「うん、そうなんだ。レオンが早くこっちに来たいってうるさくてね」
「はは。お疲れ様です」
「うん、ありがとう。それでね、明後日なんだけど、アクスの店って知ってるかい?」
アクスの店と言えばシュルプでは高級料理店となる。
行ったことはないが知っている店だ。
「はい、高級料理店ですよね?」
「うん、そうそう。そこでみんなで明後日の夜、一緒に食事しないかな? 予定がなければ、なんだけど」
「ああ、俺たちは特に予定はありませんから問題はありませんよ」
「そうか、良かった。レオンが先走ってもう貸し切りで予約しちゃっててね。先に予定を聞けって言ったんだけど」
そう言ってエアハルトさんは苦笑した。
そんなエアハルトさんに横からレオンが少し不貞腐れた顔で言う。
「うるせーな。どうせこいつらダンジョンばっか潜ってるから予定なんて聞かなくても空いてるに決まってんだろ」
そんな風に文句を言うレオンにミハエルが突っかかった。
「ああ? 俺らだって予定ぐれーあんだぞ、レオン。つーか、そもそも潜ってたらお前どーすんだよ。バカだなー」
「うるせー。実際お前ら潜ってねぇし、いるじゃねぇか」
「んなもんたまたまだろーが。ちゃんと確認してからにしろよ」
「いーんだよ。いなきゃいねぇで俺らだけで飯食うんだから」
「お前はほんと適当だな。他のメンバーの苦労が伺えるぜ」
「ああ?」
「ああ?」
レオンとミハエルの舌戦は置いといて、俺はエアハルトさんに話かける。
「まぁ、俺たちは予定はありませんから、ぜひ参加させてもらいます」
「そうか、良かったよ、ありがとう。きちんと人払いもするから問題なく会話はできるよ」
「ああ、そうですね。それは助かります」
こうして今日に至っている。
積もる話もあるので、少し早い夕方の五時からアクスの店で合流予定だ。
もうすぐ五時になるので、俺たちは集合して、アクスの店に向けて移動を開始した。
「アクスの店ってめっちゃ高級店だよな?」
「ああ、そうだな。名前は知ってたが入ったことはないな」
「私も初めてね」
「私もですー」
「レオンの奢りらしーからなー遠慮しねぇでいいか」
「はは。そうだな」
そうしてアクスの店へと到着し、扉を開けて中へと入った。
中へ入ってすぐのところに店員がいて俺たちの名前を確認したあと、頭を下げる。
「お待ちしておりました。『シュラハト』の皆さまはすでに中でお待ちですので、どうぞ」
「ありがとうございます」
どうやらエアハルトさんたちはすでに来ているらしい。
店員に案内され、席へと通された。
「こんばんは、お待たせしましたか?」
俺の声にエアハルトさんは笑みを浮かべて首を振る。
「いいや、私たちは先にきて色々と準備をすることがあったからね。ルカ君たちはちゃんと予定通りの時間だよ」
「そうでしたか。今日はお招きありがとうございます」
俺の言葉にレオンが口を挟んできた。
「おう、俺がお招きしたからな、俺に言えよ」
「ああ、レオン。遠慮なく食べるよ」
「おい、エアハルトと俺で扱い違いすぎんだろ」
「諦めろ、レオン。仕方ないだろ」
「納得いかねー」
「なら、畏まって言おうか?」
俺がそう言うとレオンは嫌そうな顔をして言う。
「それは嫌だ」
「我儘だな」
「うるせー」
不貞腐れるレオンに苦笑しつつ、俺たちは席についた。
さすがに全員が同じ席というのは難しく、俺とミハエル、エアハルトさんとレオンの四人が同じ席で、フィーネとエルナと、他三名が隣の席だ。
隣の席といっても近いのでお互いの会話は聞こえるように配置されている。
食事の配膳は六時かららしく、それまでは軽いつまみと飲み物だけだ。
飲み物が配膳され、店員は頭を下げて下がっていく。
「さて、それじゃ久しぶりの再会に乾杯といこうか」
エアハルトさんの声に全員が飲み物を持つ。
「では、久しぶりの再会に! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」
一口飲み物を飲んでから、それぞれ会話を始めた。
「あれからずっと首都にいたんですか?」
「そうでもないよ。依頼で少し遠くまでいってたからね」
「大変でしたね」
「はは。貴族への借りは大変だったけど、ルカ君たちと繋がりができたからね、悪くはないさ」
「そういえば、魔法はどうですか?」
「ああ、バレットね。うん、もうかなりいい感じになったよ。外すことはまずないね」
「さすがですね。ミスリルの杖も問題はないですか?」
「うん、おかげさまでね。本当にルカ君たちと知り合えて良かったよ」
「いえ、エアハルトさんと知り合えて俺も本当に嬉しいですから」
「俺のおかげだろー? ルカ」
レオンが口を挟んできたのでそちらを向く。
「まぁそうだな。レオンが絡んでこなきゃ俺は避けていただろうからな」
「そーだろそーだろ。感謝しろよー?」
「ああ、そこだけはな。あ、そうだ。イザークさん」
俺の声に隣の席にいた弓使いのイザークさんがこちらを向いた。
「なんだ?」
「矢、なんですが。今使ってる矢ではなくて、ミスリルの矢にしませんか?」
「え?」
「あれからフィーネにミスリルの矢を作りまして、やはり火力がかなり違ってきますので、どうですか?」
「いや、それはありがたいし嬉しいが、いいのか?」
「ええ。もう作ってありますので、今渡せますが」
「そうか。ありがとう。受け取らせてもらうよ」
「はい」
俺はイザークさんにミスリルの矢を渡した。
「多めに作ってありますが以前に渡した矢もいざとなれば補助で使えると思いますし」
「ああ。本当にありがとう、こんなにたくさん。お金はやっぱり……」
「いりません」
「はは。本当に君は無欲だな」
そう言ってイザークさんは苦笑する。
そうして再びお互いの席に戻る。
席に戻ると何やらミハエルとレオンが言い合いをしていた。
エアハルトさんはそんな二人を見て苦笑を浮かべている。
「だーかーらー、ここじゃ無理だっつってんだろ」
「ルカは無理でもせめてお前とやらせろよ」
「場所がねぇじゃん」
「ギルドの訓練所でいけんだろ」
「お前とやったら周り壊れんだろが」
「なんの話ですか?」
俺がエアハルトさんに話かけると、苦笑しながら教えてくれた。
どうやらレオンはミハエルとまた戦いらしい。
ミハエルもそれは嫌ではないのだが、場所がないと言ってるのだそうだ。
「ああ、なるほど。確かに難しいですね。訓練所じゃ狭すぎますし」
「そうなんだけどね、ああなるとレオンは中々諦めないから」
「ふむ」
そうなるとどこか開けた場所でやるしかなくなる。
さすがにギルドの訓練所でミハエルとレオンがやればどれだけの被害がでるかわかったものではない。
「手加減すりゃいいじゃん」
「できんのかよ、お前が。ぜってぇ途中で熱はいんだろ」
「あー! なんでここには闘技場がねぇんだよ」
「だから、諦めろって」
「いやだ。俺は戦いてぇんだよ」
シュルプから少し離れた場所に開けた場所があるにはある。
あそこならまぁ、やれなくはないかもしれない。
いまだにごねているレオンに俺は仕方なく提案した。
「レオン、それならここから少し離れたとこに開けた場所があるから、そこでやれよ」
「お? あんのか?」
「ならされた場所じゃないから足場は悪いがな」
「おー。いいじゃん。そういうとこのが楽しいだろ」
「そうか」
「じゃ、明日いこうぜ、ミハエル」
「めんどくせーな」
「悪いね、ミハエル君」
エアハルトさんが苦笑しながらミハエルに言う。
「や、別にいいっすよ」
「なーなー、そこならルカともやれんだろ?」
「嫌だよ。レオンとやるのしんどいんだよ」
「いいじゃん。ちょっとだけ、な、ちょっとだけやろうぜ」
まるで女の子にしつこくする男みたいな言い方をするレオンに俺は苦笑してしまう。
「はいはい。わかったから」
「よし。じゃ、明日がミハエルで次の日がルカな」
そう言って嬉しそうにしているレオンに俺もエアハルトさんも苦笑する。
ミハエルは嫌そうな顔をしているが、きっと内心は楽しみなはずだ。
俺も苦笑しているがちょっとだけ楽しみだしな。
そうして和やかに食事会は進んだ。
イザークさんや、槍使いのマリウスさん、タンクのニクラスさんとも、武器の使い心地などを聞いたりした。
全員がとてもいいと言ってくれて俺はほっとする。
今後武器を更新しても、同じ形をお願いするつもりだとみんなが言っていた。
なんだか嬉しいけどもちょっとだけ恥ずかしい。
その他にもヒュドラとケルベロスの階層を抜けたのはどうやって抜けたのかと聞いたところ、イザークさんが一体ずつプルして倒していったそうだ。
俺たちは馬鹿正直に正面から突っ込んでやっていたというのを話すと、レオンが爆笑していた。
エアハルトさんも笑ってはいたが、あれを正面突破できる君たちはやはりすごいよ、と言われてしまう。
まさかプルできるとは思いもしなかった。
グループ行動しているので全リンクすると思っていたのだ。
意外な盲点ともいえる。
とはいえ、俺たちは今後も馬鹿正直に突っ込んでいくだろう。
これまでもそれでやってきたので急にやり方を変えるのもしんどい。
まぁ、本気でやばいと思えば必ずミハエルが待ったをかけるはずなので問題はないはずだ。
もしミハエルが読み違えたとしても、俺は狩りで使ってない魔法はまだあるのでどうにかしてみせるつもりだしな。
そうして俺たちはかなり夜が更けるまで楽しく過ごすことができた。
明日はミハエルとレオンの久しぶりの試合となる。
闘技場のように足場がならされているわけではないので、また違った戦いを見れるだろう。
ミハエルはあれからまた成長したが、きっとレオンも同じように成長はしているはずだ。
どんな戦いが見れるのか、今から少し楽しみではある。
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