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『クラスでほとんど誰とも話さない俺の、人生で初めてできた友達は――クラスで一番人気の女子だった。』  作者: 湊


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40/45

第40話 彼女と過ごす、初めての日曜日


 日曜日。


 午前七時。


「…………」


 目が覚める。


 時計。


 見る。


「…………」


 早い。


 昨日。


 寝たの。


 午前一時くらい。


 だった。


 なのに。


 目。


 覚めた。


「…………」


 理由。


 分かってる。


 今日。


 由香とデートする。


 昨日。


 付き合ったばかり。


 だから。


 今日。


 初めて。


 彼女として会う。


「…………」


 彼女。


 その言葉に。


 まだ慣れない。


 でも。


 嬉しい。


 ものすごく。


     ◇


 スマホ。


 手に取る。


 通知。


 一件。


 由香。


『おはよう!』


 送信時間。


 午前六時四十分。


「…………」


 早い。


『おはよう』


 すぐ。


 既読。


『湊!』


『何』


『起きた!』


『起きた』


『早いね!』


『由香の方が早い』


『…………』


『寝れなかった』


「…………」


 笑う。


『俺も』


『本当!?』


『うん』


『…………』


『何』


『嬉しい』


「…………」


 昨日から。


 何回。


 嬉しい。


 言ってるだろう。


 でも。


 俺も同じ。


『今日どうする?』


『考えてる!』


『決まってないの?』


『…………』


『昨日、勢いで誘っちゃった』


「…………」


 由香らしい。


『じゃあ一緒に決めよう』


『いいの!?』


『うん』


『…………』


『湊』


『何』


『大好き!』


「…………」


 朝。


 七時。


 心臓。


 うるさい。


『俺も』


 送る。


 少し。


 間。


『…………』


『朝から幸せ』


「…………」


 俺も。


     ◇


 午前八時。


 朝食。


「おはよう」


 母さん。


「おはよう」


「早いわね」


「目が覚めた」


「そう」


 母さん。


 トースト。


 皿に置く。


「今日、出かけるの?」


「うん」


「黒瀬さんと?」


「…………」


 止まる。


「…………」


「何で分かる」


「昨日言ってたじゃない」


「…………」


 そうだった。


 昨日。


 付き合ったこと。


 話した。


「デート?」


「…………」


「うん」


 母さん。


 笑う。


「初デートね」


「…………」


「まあ」


「楽しんできなさい」


「うん」


 少し。


 間。


「湊」


「何」


「無理してお金使わなくていいからね」


「…………」


 俺。


 母さん。


 見る。


「分かってる」


「うん」


「…………」


 母さん。


 笑う。


「一緒にいられるだけでも楽しいでしょ?」


「…………」


 その言葉。


 少し。


 考える。


「……うん」


 

 そう思う。


     ◇


 午前九時。


『由香:映画は?』


『湊:何か見たいのある?』


『由香:特にない!』


『湊:じゃあ何で映画』


『由香:デートっぽいから!』


「…………」


 笑う。


『由香:水族館!』


『湊:春に行った』


『由香:また行きたい!』


『湊:いいけど』


『由香:でも今日は違うところがいいかも』


「…………」


 決まらない。


『由香:カフェ!』


『湊:いいね』


『由香:ショッピング!』


『湊:うん』


『由香:ゲームセンター!』


『湊:全部行く?』


 既読。


『…………』


『由香:天才!?』


「…………」


 そういうことらしい。


     ◇


 午前十一時。


 駅前。


 待ち合わせ。


「…………」


 昨日と同じ場所。


 でも。


 今日は違う。


 昨日はまだ友達だった。


 今は恋人。


「…………」


 考えるだけで。


 緊張する。


「湊!」


「…………」


 声。


 振り返る。


 由香がいた。


 白いブラウス。


 淡い青のスカート。


 小さいショルダーバッグ。


 髪。


 今日は。


 下ろしてる。


「…………」


 可愛い。


「おはよう!」


「おはよう」


「…………」


 由香。


 俺。


 見る。


 少し笑う。


「…………」


「何」


「湊って呼んだ」


「…………」


「昨日も呼んでただろ」


「そうだけど!」


「…………」


 由香。


 顔。


 赤い。


「何か」


「うん」


「まだ照れる」


「…………」


 俺も。


 同じ。


「……俺も」


「…………」


 由香。


 笑う。


「一緒だね」


     ◇


「じゃあ行こうか」


 俺。


「うん!」


 二人で歩く。


「…………」


 少し。


 沈黙。


 昨日だったら。


 普通に話せた。


 でも。


 今日は何話すべきなのか。


 分からない。


「…………」


 由香。


 俺。


 見る。


「湊」


「何」


「緊張してる?」


「…………」


「分かる?」


「うん」


「何で」


「…………」


 由香。


 笑う。


「私もだから」


「…………」


 俺。


 少し笑う。


「そっか」


「うん」


「…………」


 由香。


 少し近づく。


「ねえ」


「何」


「手」


「…………」


 昨日。


 花火の帰り。


 繋いだ。


 手。


「繋ぐ?」


「…………」


 由香。


 頷く。


「うん」


 俺。


 手。


 伸ばす。


 由香。


 手。


 重ねる。


「…………」


 温かい。


 昨日と同じ。


 でも。


 今日は少し自然。


「…………」


 由香。


 笑う。


「これ」


「何」


「すごく嬉しい」


「…………」


「俺も」


     ◇


午前十一時半。


 ショッピングモール。


「久しぶり!」


 由香。


 楽しそうに。


 周りを見渡す。


「そう?」


「うん!」


「…………」


 休日だから。


 人が多い。


 家族連れ。


 カップル。


 友達同士。


 いろんな人がいる。


「湊!」


「何」


「最初どこ行く?」


「由香の行きたいところでいいよ」


「えー!」


「…………」


「湊も決めて!」


「…………」


 少し。


 考える。


 目に入った。


 店。


 ゲームショップ。


「…………」


「ゲームショップとか?」


「…………」


 由香。


 俺が指した方を見る。


「あ!」


「何」


「いいね!」


 嬉しそうに笑う。


「新しいデバイス見たい!」


「俺も」


「じゃあ行こ!」


 由香。


 俺の手を引く。


「…………」


 少し驚く。


 でも。


 すぐ歩き出す。


     ◇


 ゲームショップ。


 店内。


「わあ!」


 由香。


 目を輝かせる。


「新しいヘッドセット出てる!」


「本当だ」


「これ!」


 由香。


 棚。


 指差す。


「ちょっと気になってたやつ!」


「レビュー見た」


「どうだった?」


「音の定位はいいらしい」


「本当!?」


「ただ、少し重いって」


「そっかあ」


 由香。


 真剣な顔する。


「長時間やるからなあ」


「由香、結構やるもんな」


「湊もでしょ!」


「まあ」


「ふふ」


 由香。


 笑う。


「こういう話できるの、やっぱり楽しい」


「…………」


「学校の友達とはあんまり話せないから」


「そうなの?」


「うん」


「莉央たちは?」


「ゲームの話はするけど、ここまで詳しくないもん」


「…………」


 確かに。


 六人で。


 遊ぶときも。


 FPSの話。


 ほとんどしない。


 俺と由香。


 二人だけが。


 知ってる世界。


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「湊」


「何」


「私たちって、ちょっと不思議だよね」


「何が」


「だって」


 由香。


 少し笑う。


「ゲームの中では、ずっと前から仲良しだったのに」


「うん」


「学校では、最初ほとんど話さなかったでしょ?」


「そうだな」


「…………」


「しかも」


「うん」


「Nagiが湊だって分かるまでは、まさか同じクラスだなんて思ってなかった」


「俺も」


「…………」


 由香。


 嬉しそうに。


 笑う。


「今考えると、すごい偶然だよね」


「そうだな」


「…………」


「でも」


「何?」


「偶然だけじゃないと思う」


「…………」


 由香。


 首を傾げる。


「どういうこと?」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「由香がフレンド申請してくれたから」


「…………」


「それで、一緒にゲームするようになって」


「うん」


「学校でも話すようになった」


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「…………」


「だから」


「うん」


「由香のおかげだと思う」


「…………」


 由香。


 少し。


 顔を赤くする。


「……そんなことないよ」


「そう?」


「うん」


 由香。


 笑う。


「だって、湊も私とずっと遊んでくれたでしょ?」


「…………」


「私が誘ったら、いつも来てくれて」


「うん」


「ゲーム以外の話も聞いてくれて」


「…………」


「だから、仲良くなれたんだよ」


「…………」


 俺。


 由香を見る。


「そっか」


「うん!」


 由香。


 笑う。


「二人のおかげ!」


「…………」


 少し笑う。


「そうだな」


     ◇


「ねえ、湊!」


「何」


「これ見て!」


 由香。


 今度は。


 マウス。


 指差す。


「新色出てる!」


「本当だ」


「可愛くない?」


「うん」


 淡い水色。


 ゲーミングマウス。


「欲しいなあ」


「買う?」


「…………」


 由香。


 値札を見る。


「…………」


「どうした」


「高い」


「…………」


 俺も。


 見る。


「……高いな」


「でしょ!」


 二人。


 笑う。


「今のまだ使えるし」


「そうだな」


「…………」


 由香。


 少し。


 考える。


「じゃあさ」


「何」


「今度、新しいデバイス買うとき」


「うん」


「一緒に選んでくれる?」


「もちろん」


「…………」


 由香。


 嬉しそうに。


 笑う。


「約束ね!」


「うん」


     ◇


 店を出る。


「楽しかった!」


 由香。


「何も買ってないけどな」


「見るだけでも楽しいじゃん!」


「まあ」


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「湊」


「何」


「また一緒に来ようね」


「うん」


「…………」


 少し。


 間。


「次は」


「何」


「お揃いのものとか、買ってみたいな」


「…………」


 俺。


 由香を見る。


「お揃い?」


「うん!」


 由香。


 少し照れたように笑う。


「恋人っぽいでしょ?」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「もう恋人だけど」


「…………」


 由香。


 止まる。


「…………」


「……湊」


「何」


「そういうこと、急に言わないで」


「何で」


「照れるから!」


「…………」


 俺。


 笑う。


「ごめん」


「…………」


 由香。


 俺の手を握り直す。


「でも」


「何」


「嬉しい」


「…………」


 俺も。


 握り返す。


「…………」


 由香。


 笑う。


「じゃあ次は、お揃いのゲームグッズ探そうね!」


「うん」


「約束!」


「約束」


 そう言って。


 二人で。


 フードコートへ向かった。


 


「湊!」


「何?」


「お腹空いた!」


「さっきからずっと言ってる」


「だって朝から楽しみで、あんまり食べられなかったんだもん!」


「…………」


 俺。


 由香を見る。


「朝ご飯、食べてないの?」


「食べたよ!」


「何を?」


「ヨーグルト!」


「…………」


「それだけ?」


「うん!」


「…………」


 それは。


 お腹空くだろう。


「湊は?」


「普通に食べた」


「いいなあ」


「食べればよかったのに」


「だって!」


 由香。


 少し。


 顔を赤くする。


「昨日からずっとドキドキしてたんだもん」


「…………」


 俺。


 言葉。


 止まる。


「…………」


「……俺もだけど」


「え?」


「昨日、あんまり寝られなかった」


「…………」


 由香。


 嬉しそうに笑った。


「一緒だね!」


「そうだな」


     ◇


「何食べる?」


 由香。


 案内板を見る。


「パスタ!」


「即決だな」


「湊は?」


「オムライスかな」


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「何?」


「オムライス好きだね」


「うん」


「…………」


 少し笑う。


「可愛い」


「何が」


「何となく!」


「…………」


 よく分からない。


 でも。


 由香。


 楽しそうだから。


 まあいいか。


     ◇


 料理。


 受け取る。


 窓際の二人席。


「いただきます!」


「いただきます」


 由香。


 パスタ。


 一口。


 食べる。


「美味しい!」


「よかったな」


「湊のも美味しそう!」


「食べる?」


「いいの!?」


「うん」


「やった!」


 俺。


 スプーン。


 取る。


 オムライス。


 少しすくう。


 小皿に置こうとする。


 そのとき。


「…………」


 由香。


 口を開ける。


「…………」


 俺。


 止まる。


「……何してるの?」


「え?」


「…………」


 由香。


 俺のスプーンを見る。


 そして。


 自分が何をしていたのか。


 気づいた。


「…………!」


 顔。


 真っ赤。


「ち、違う!」


「…………」


「今のは、その!」


「…………」


「無意識!」


「…………」


 俺。


 少し笑う。


「無意識で?」


「忘れて!」


「分かった」


「絶対だよ!」


「うん」


「…………」


 由香。


 俯く。


「……恥ずかしい」


「…………」


 俺。


 オムライス。


 小皿に分ける。


「はい」


「…………」


 由香。


 受け取る。


「ありがとう……」


 一口。


 食べる。


「…………」


 少し。


 笑う。


「美味しい」


「よかった」


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「湊」


「何」


「今度は私のも食べて」


「うん」


 パスタ。


 少し分けてもらう。


 食べる。


「美味しい」


「でしょ!」


 由香。


 嬉しそうに笑う。


「…………」


 さっきまで。


 あんなに。


 照れてたのに。


 もういつも通りだった。


     ◇


 食事。


 終わる。


 由香。


 飲み物。


 飲みながら。


 俺を見る。


「ねえ、湊」


「何?」


「今日ってさ」


「うん」


「私たち、ちゃんとデートしてるんだよね」


「…………」


 俺。


 周りを見る。


 フードコート。


 休日。


 人が多い。


「……してると思う」


「ふふ」


「何?」


「何でもない!」


 由香。


 笑う。


「嬉しいなって」


「…………」


「昨日まで、こういうの想像するだけだったから」


「…………」


 俺。


 由香を見る。


「そうなの?」


「うん」


「…………」


「湊と付き合えたら、どこ行きたいかなって」


「…………」


「たまに考えてた」


「…………」


 心臓。


 少し。


 速くなる。


「何処に行きたい?」


「…………」


 由香。


 少し。


 考える。


「映画館とか」


「うん」


「遊園地とか」


「うん」


「海とか!」


「…………」


「あとね!」


「うん」


「夏祭り!」


「…………」


 俺。


 少し笑う。


「昨日行っただろ」


「そうだけど!」


 由香。


 頬を膨らませる。


「昨日は付き合う前だったもん!」


「…………」


 確かに。


 そうだった。


「じゃあ、また行こう」


「…………」


 由香。


 目を丸くする。


「いいの!?」


「うん」


「…………」


 由香。


 嬉しそうに笑う。


「約束ね!」


「うん」


     ◇


 午後二時。


 ゲームセンター。


「勝負!」


 由香。


 音楽ゲーム。


 指差す。


「また?」


「今日は負けない!」


「…………」


 俺。


 少し笑う。


「いいよ」


 ゲーム開始。


 音楽。


 流れる。


 画面。


 ノーツ。


 落ちてくる。


「…………」


 由香。


 真剣。


 俺も。


 真剣。


 結果。


 俺。


 勝つ。


「…………」


 由香。


 固まる。


「負けた……」


「うん」


「もう一回!」


「いいよ」


 二回目。


 由香。


 勝つ。


「やったー!」


「…………」


「一勝一敗!」


「そうだな」


「次で決着!」


「…………」


 結局。


 五回。


 勝負した。


 結果。


 俺。


 三勝。


 由香。


 二勝。


「…………」


 由香。


 少し悔しそう。


「あと一回!」


「もう五回やった」


「次こそ!」


「…………」


 俺。


 笑う。


「また今度な」


「…………」


 由香。


 少し。


 考える。


「じゃあ次のデートで!」


「うん」


「約束!」


「約束」


     ◇


 午後三時。


 カフェ。


 窓際の二人席。


「…………」


 由香。


 アイスティー。


 飲む。


「湊」


「何?」


「今日、楽しい?」


「…………」


 俺。


 由香を見る。


「楽しいよ」


「本当?」


「うん」


「…………」


 由香。


 少し安心したように笑う。


「よかった」


「…………」


「何で?」


「…………」


 由香。


 ストローを指で回す。


「初デートだから」


「うん」


「失敗したくなかったの」


「…………」


 俺。


 少し驚く。


「失敗?」


「うん」


「…………」


「つまらなかったらどうしようとか」


「…………」


「湊、疲れてないかなとか」


「…………」


「色々考えちゃって」


「…………」


 由香。


 少し俯く。


「…………」


 俺。


 考える。


 由香はいつも明るい。


 誰とでも話せる。


 クラスで一番。


 人気ある女の子。


 でも。


 今日は緊張してた。


 俺だけじゃない。


「…………」


「由香」


「何?」


「俺も緊張してたよ」


「…………」


 由香。


 顔を上げる。


「本当?」


「うん」


「…………」


「何話せばいいか分からなかったし」


「うん」


「服も迷ったし」


「…………」


「でも」


 俺。


 少し笑う。


「由香と一緒にいるだけですごく楽しい」


「…………」


 由香。


 目を丸くする。


「…………」


「だから、失敗とか気にしなくていいと思う」


「…………」


 由香。


 少し笑う。


「……そっか」


「うん」


「…………」


 由香。


 目元を押さえる。


「…………」


「何で泣くの」


「泣いてない!」


「…………」


 俺。


 笑う。


「そっか」


「…………」


 由香。


 少し。


 照れたように笑う。


「ありがとう」


「うん」


     ◇


「そういえば」


 由香。


 スマホを取り出す。


「何?」


「莉央から連絡来てた!」


「…………」


 由香。


 画面を見る。


「…………」


 少し笑う。


「何て?」


「今日、湊とデートしてるんでしょって」


「…………」


 俺。


 苦笑い。


「知ってるんだ」


「昨日話しちゃった」


「…………」


 由香。


 笑う。


「だって嬉しかったんだもん!」


「…………」


 俺。


 少し笑う。


「そっか」


「うん!」


 由香。


 スマホ。


 操作する。


「…………」


 そして。


 俺を見る。


「ねえ、湊」


「何?」


「写真撮ろう!」


「…………」


「ここで?」


「うん!」


「…………」


 由香。


 隣に移動してくる。


「もっと近く!」


「…………」


 俺。


 少し近づく。


「もうちょっと!」


「…………」


 さらに近づく。


「よし!」


 由香。


 スマホ。


 構える。


「はい、チーズ!」


 カシャ。


「…………」


 画面。


 見る。


 由香。


 笑ってる。


 俺も。


 少し笑ってる。


「…………」


「いい写真!」


 由香。


「そうだな」


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「湊」


「何?」


「これ、待ち受けにしてもいい?」


「…………」


 俺。


 少し笑う。


「いいよ」


「やった!」


「…………」


 由香。


 写真。


 設定する。


「…………」


「できた!」


 画面。


 見せる。


 二人。


 並んでる写真。


「…………」


 由香。


 笑う。


「湊もする?」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「する」


「…………!」


 由香。


 嬉しそうに笑う。


「本当!?」


「うん」


 写真。


 送ってもらう。


 俺も。


 設定する。


「…………」


 スマホ。


 二台。


 並べる。


 同じ写真。


「…………」


 由香。


 小さく笑う。


「お揃いだね」


「そうだな」


     ◇


 午後四時。


 カフェ。


 出る。


「そろそろ帰る?」


 由香。


「うん」


「…………」


 少し。


 寂しそう。


「…………」


「どうした?」


「もう終わっちゃうなって」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「また来ればいい」


「…………」


「え?」


「またデートすればいいだろ」


「…………」


 由香。


 目を丸くする。


「…………」


「いいの?」


「もちろん」


「…………」


 由香。


 笑う。


「じゃあ次は!」


「うん」


「私が計画する!」


「今日も由香が決めたけど」


「…………」


「そうだった!」


 二人。


 笑う。


     ◇


 駅の近く。


 歩く。


 手。


 繋いでる。


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「湊」


「何?」


「今日、ずっと手繋いでたね」


「…………」


「そうだな」


「…………」


 由香。


 少し笑う。


「嬉しかった」


「…………」


 俺。


 頷く。


「俺も」


 少し歩く。


「…………」


 由香。


 立ち止まる。


「湊」


「何?」


「一つ聞いていい?」


「うん」


「…………」


 少し。


 迷う。


「私たち、学校ではどうする?」


「…………」


 俺。


 考える。


 学校。


 クラス。


 六人。


 友達。


 昨日付き合ったこと。


 四人は知ってる。


 でも。


 他のクラスメイトは知らない。


「…………」


「由香はどうしたい?」


「…………」


 由香。


 少し。


 考える。


「隠したくはない」


「うん」


「でも、わざわざ言いふらすのも違うかなって」


「…………」


 俺。


 頷く。


「同じ」


「…………」


 由香。


 笑う。


「そっか」


「うん」


「じゃあ、学校では今まで通り?」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「そうだな」


「うん」


「でも」


「何?」


「二人のときは、今まで通りじゃないかも」


「…………」


 由香。


 顔。


 赤い。


「…………」


「それ、私も思ってた」


「…………」


 二人。


 笑う。


     ◇


 駅。


 改札。


「じゃあまたね」


 由香。


「うん」


「…………」


 手。


 離す。


 少し寂しい。


「…………」


 由香。


 俺を見る。


「湊」


「何?」


「今日、本当にありがとう」


「…………」


「こちらこそ」


 由香。


 少し笑う。


「またデートしようね」


「うん」


「…………」


「約束」


「約束」


 由香。


 改札。


 通る。


 振り返る。


「湊!」


「何?」


「大好き!」


「…………」


 周り。


 人いる。


 少し恥ずかしい。


 でも。


 俺。


 笑う。


「俺も!」


「…………」


 由香。


 嬉しそうに笑う。


 手。


 振る。


 そして。


 帰っていく。


     ◇


 午後五時。


 帰宅。


「ただいま」


「おかえり」


 母さん。


「どうだった?」


「楽しかった」


「そう」


「うん」


「…………」


 母さん。


 笑う。


「よかったね」


「…………」


 俺。


 頷く。


     ◇


 夜。


 午後九時。


 スマホ。


 鳴る。


 由香。


『湊!』


『何?』


『今日はありがとう!』


『こちらこそ』


『…………』


『何?』


『まだちょっと夢みたい』


「…………」


『俺も』


『でも』


『うん』


『今日の写真見たら、本当なんだなって思った!』


「…………」


 俺。


 スマホ。


 画面。


 見る。


 待ち受け。


 二人。


 笑ってる。


「…………」


『そうだな』


『うん!』


 少し。


 間。


『湊』


『何?』


『夏休み、まだ始まったばっかりだね!』


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


 確かに。


 昨日は花火大会。


 今日は初デート。


 まだ。


 夏休み二日目。


『そうだな』


『いっぱい遊ぼうね!』


『うん』


『六人でも!』


『うん』


『二人でも!』


「…………」


 俺。


 少し笑う。


『もちろん』


『やった!』


     ◇


 そのとき。


 別の通知。


『放課後』


 陽斗。


『お前らー!』


『莉央:何?』


『琴葉:どうしたの?』


『玲司:今度は何だ』


『陽斗:夏休みだぞ!!』


『莉央:知ってる!』


『陽斗:せっかくだから六人で遊びに行こうぜ!』


「…………」


 俺。


 画面見る。


『由香:行きたい!』


『琴葉:いいね!』


『莉央:賛成!』


『玲司:日程次第』


『陽斗:よし!』


『陽斗:じゃあ明日みんなで予定決めよう!』


「…………」


 俺。


 少し笑う。


『湊:俺も行きたい』


 送る。


 すぐ。


 陽斗。


『陽斗:よっしゃ!全員参加!』


『莉央:まだ日程決まってないけどね』


『陽斗:細かいことは気にするな!』


『玲司:そこが一番大事だろ』


『琴葉:ふふ』


「…………」


 笑う。


 そのとき。


 由香。


 個人。


 通知。


『湊』


『何?』


『今年の夏休み』


『うん』


『絶対楽しいね!』


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


 去年の夏休み。


 ほとんど家でゲーム。


 バイト。


 それだけだった。


 でも。


 今年は違う。


 六人いる。


 由香がいる。


「…………」


『そうだな』


『うん!』


『いっぱい思い出作ろうね!』


『もちろん』


 送る。


 少しして。


 由香。


『おやすみ、湊!』


『おやすみ、由香』


 スマホ。


 置く。


「…………」


 窓の外。


 見る。


 夏の夜。


 少し蒸し暑い。


 でも。


 嫌じゃない。


「…………」


 明日。


 何処に行くか。


 決めるらしい。


 陽斗。


 絶対。


 騒ぐ。


 水瀬。


 絶対。


 からかう。


 玲司。


 呆れる。


 小宮山。


 笑う。


 由香。


 楽しそう。


 笑う。


「…………」


 俺。


 少し笑う。


 机の上。


 スマホ。


 もう一回鳴る。


 陽斗。


『湊!』


『何?』


『明日、絶対来いよ!』


『分かった』


『あと!』


『何?』


『彼女ばっかり見てないで俺とも遊べよ!』


「…………」


 俺。


 思わず笑う。


『分かったよ』


『よし!』


「…………」


 スマホ。


 置く。


 ベッド。


 横になる。


 高校生活。


 最後の夏休み。


 まだ始まったばかり。


 明日。


 六人。


 何処に行くか。


 決めるらしい。


 ……多分。


 まとまるまで。


 かなり時間かかるだろう。


 でも。


 それも少し楽しみだった。




 

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