第39話 夏の夜、君に伝えたいこと
七月。
終業式。
「終わったあああ!」
教室。
陽斗の声。
響く。
「…………」
玲司。
ため息。
「橘、うるさい」
「だって夏休みだぞ!」
「受験生だけどな」
「…………」
陽斗。
固まる。
「玲司」
「何」
「今それ言う?」
「事実だから」
「せっかくの夏休みが!」
「勉強しろ」
「…………」
水瀬。
笑う。
「陽斗君、毎回同じこと言ってるよね」
「夏休みは毎年一回しかないんだぞ!」
「当たり前でしょ」
小宮山。
くすくす。
笑う。
「でも、みんなで過ごす最後の夏休みだね」
「…………」
その言葉で。
少し静かになる。
高校三年生。
最後の夏休み。
来年。
六人。
どうなってるか。
分からない。
「…………」
「だから!」
陽斗。
立ち上がる。
「いっぱい思い出作ろうぜ!」
「勉強もしなよ」
玲司。
「分かってるって!」
「本当に?」
「…………」
陽斗。
目。
逸らす。
「……多分」
全員。
笑う。
◇
「朝倉君」
黒瀬。
俺の席。
来る。
「何」
「明日」
「うん」
「いよいよだね」
「…………」
明日。
土曜日。
花火大会。
「そうだな」
「…………」
黒瀬。
少し笑う。
「楽しみ?」
「うん」
「…………」
「黒瀬は?」
「すっごく!」
「…………」
黒瀬。
顔。
近づける。
「ねえ」
「何」
「明日、ちゃんと見つけてね」
「…………」
あの夜。
チャットで。
約束した。
『見つけてね』
『黒瀬なら分かる』
「分かってる」
「本当?」
「うん」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「じゃあ、期待してる」
「…………」
その笑顔見て。
思う。
明日ちゃんと。
伝える。
俺の気持ち。
◇
昼休み。
『放課後』
『陽斗:明日18時集合!』
『莉央:了解!』
『琴葉:駅前でいいんだよね?』
『玲司:南口の時計前』
『由香:分かった!』
「…………」
俺。
スマホ。
見る。
六人で花火大会。
行く約束してる。
でも。
黒瀬と二人。
花火見る。
約束もある。
「…………」
どうする。
少し考えてるとき。
個人。
通知。
玲司。
『朝倉』
『何』
『明日、黒瀬と二人で話すんだろ』
「…………」
玲司。
覚えてる。
『うん』
『タイミング作るから』
『…………』
『ありがとう』
『礼は終わってからでいい』
「…………」
少し。
笑う。
玲司。
相変わらず頼りになる。
◇
翌日。
土曜日。
午後四時。
「…………」
鏡。
見る。
白いシャツ。
黒いパンツ。
いつもより。
少しちゃんとした服。
「…………」
変じゃない。
はず。
髪。
整える。
もう一回。
鏡。
見る。
「…………」
落ち着かない。
「湊ー!」
母さん。
「何!」
「そろそろ行くの?」
「うん!」
階段。
降りる。
「…………」
母さん。
俺。
見る。
「今日はおしゃれね」
「…………」
「普通」
「そう?」
「うん」
「…………」
母さん。
笑う。
「黒瀬さんと?」
「…………」
俺。
頷く。
「うん」
「…………」
「楽しんできなさい」
「ありがとう」
靴。
履く。
「湊」
「何」
「一つだけ」
「…………」
「何」
母さん。
優しく笑う。
「ちゃんと自分の気持ち、伝えてきなさい」
「…………」
止まる。
「…………」
俺。
母さん。
見る。
「……分かった」
「うん」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
◇
午後五時五十分。
駅。
南口。
時計前。
「…………」
まだ。
誰もいない。
少し早かった。
「…………」
スマホ。
見る。
通知。
Yuu。
『もう着いた?』
『着いた』
『早い!』
『黒瀬は?』
『もうすぐ!』
『了解』
少し。
間。
『朝倉君』
『何』
『今日』
『うん』
『ちゃんと見つけてね』
「…………」
笑う。
『分かってる』
『約束!』
『うん』
スマホしまう。
周りを見る。
人。
多い。
浴衣。
着た人。
たくさんいる。
「…………」
黒瀬。
どこから。
来るだろう。
そう考えてるとき。
「朝倉君!」
「…………」
声。
振り返る。
「…………」
止まる。
黒瀬がいた。
淡い水色の浴衣。
白い花模様。
髪。
いつも下ろしてる。
でも。
今日は上げてる。
小さな髪飾り。
揺れる。
「…………」
綺麗だった。
本当に。
綺麗。
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「…………」
少し。
不安そう。
「……どう?」
「…………」
俺。
言葉を探す。
でも。
出てこない。
「朝倉君?」
「…………」
「変?」
「違う」
「…………」
「すごく」
少し。
間。
「似合ってる」
「…………」
黒瀬。
目。
丸くする。
「…………」
「可愛い」
「…………!」
黒瀬。
顔。
真っ赤。
「…………」
「……ありがとう」
小さい声。
「…………」
俺も少し照れる。
「頑張ってよかった」
「…………」
「浴衣」
「うん」
「髪も」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「朝倉君に見せたかったから」
「…………」
心臓。
うるさい。
◇
「由香ー!」
水瀬。
走ってくる。
「可愛い!」
「莉央!」
「やばい! めっちゃ似合ってる!」
「ありがとう!」
水瀬。
桃色の浴衣。
小宮山。
薄紫の浴衣。
二人も似合ってる。
「朝倉君」
小宮山。
「こんにちは」
「こんにちは」
「今日はよろしくね」
「うん」
少しして。
陽斗。
玲司。
来る。
「おー!」
陽斗。
「みんな浴衣!」
「陽斗君、声大きい」
水瀬。
「だって可愛いじゃん!」
「…………」
水瀬。
少し。
顔。
赤い。
「……ありがと」
玲司。
俺の隣に来る。
「朝倉」
「何」
「緊張してる?」
「…………」
「分かる?」
「顔」
「…………」
玲司。
少し笑う。
「大丈夫」
「…………」
「いつも通りでいい」
「…………」
俺。
頷く。
「ありがとう」
◇
午後六時半。
会場。
屋台。
並ぶ人。
多い。
「たこ焼き!」
陽斗。
「早い」
玲司。
「腹減った!」
「さっき何か食べてなかった?」
水瀬。
「それはそれ!」
「…………」
小宮山。
笑う。
「私はりんご飴がいいな」
「私も!」
黒瀬。
「じゃあ買おう!」
水瀬。
六人。
屋台。
回る。
焼きそば。
たこ焼き。
かき氷。
りんご飴。
射的。
「朝倉君!」
黒瀬。
「何」
「射的!」
「やる?」
「うん!」
◇
射的。
屋台。
「これ!」
黒瀬。
指差す。
小さい。
猫のぬいぐるみ。
「欲しい?」
「うん」
「…………」
俺。
銃持つ。
狙う。
撃つ。
外れる。
「…………」
黒瀬。
笑う。
「惜しい!」
「…………」
二発目。
撃つ。
当たる。
でも。
倒れない。
「…………」
「頑張れ!」
三発目。
狙う。
少し下。
撃つ。
ぬいぐるみ。
倒れる。
「やった!」
黒瀬。
とび跳ねる。
「朝倉君!」
「取れた」
「すごい!」
店員。
ぬいぐるみを渡す。
俺。
黒瀬に渡す。
「はい」
「…………」
黒瀬。
目。
丸くする。
「いいの?」
「欲しかったんだろ」
「…………」
黒瀬。
ぬいぐるみ。
受け取る。
「ありがとう」
「うん」
「…………」
胸に抱いて笑う。
「大切にする」
「…………」
そんな。
大げさな。
でも。
嬉しい。
◇
午後七時十五分。
花火。
開始まで。
あと。
三十分。
「そろそろ場所取ろうぜ!」
陽斗。
「そうだな」
玲司。
スマホ。
見る。
「…………」
少しして。
俺。
見る。
「朝倉」
「何」
「ちょっといい?」
「…………」
頷く。
二人で少し。
離れる。
「…………」
玲司。
小声。
「このあと」
「うん」
「黒瀬と二人になりたいんだろ」
「…………」
「うん」
「…………」
玲司。
少し笑う。
「じゃあ、ここから別行動にしよう」
「…………」
「いいの?」
「最初からそのつもり」
「…………」
「陽斗たちには?」
「話してある」
「…………」
俺。
驚く。
「いつ?」
「さっき」
「…………」
「水瀬も小宮山も分かってる」
「…………」
玲司。
俺を見る。
「朝倉」
「何」
「頑張れよ」
「…………」
俺。
頷く。
「ありがとう」
◇
「由香!」
水瀬。
「何?」
「ちょっとこっち!」
「え?」
黒瀬。
水瀬。
小宮山。
少し離れる。
「…………」
何か。
話してる。
黒瀬。
顔。
赤い。
水瀬。
笑ってる。
小宮山。
頷いてる。
「…………」
少しして。
黒瀬。
戻る。
「朝倉君」
「何」
「…………」
少し緊張してる。
「二人で」
「うん」
「花火、見に行こ?」
「…………」
俺。
頷く。
「行こう」
「…………」
黒瀬。
笑う。
◇
人混み。
歩く。
二人だけ。
後ろに四人。
いない。
「…………」
黒瀬。
俺の隣。
歩く。
浴衣の裾。
気にしてる。
歩幅。
小さい。
俺。
少しゆっくり。
歩く。
「朝倉君」
「何」
「ありがとう」
「何が」
「歩くの合わせてくれて」
「…………」
「普通」
「ふふ」
黒瀬。
笑う。
「そういうところ」
「何」
「好き」
「…………」
止まる。
黒瀬。
慌てる。
「あ!」
「…………」
「今のは!」
「…………」
俺。
少し笑う。
「分かってる」
「…………」
黒瀬。
顔。
赤い。
「……本当?」
「うん」
◇
会場から少し離れた。
川沿い。
人の少ない場所。
見つける。
「ここなら見えるかな」
黒瀬。
「見えると思う」
「…………」
二人。
並ぶ。
川の向こう。
夜空が広い。
「…………」
黒瀬。
ぬいぐるみ。
抱いてる。
小さい猫。
「…………」
「何」
「それ」
「うん」
「気に入った?」
「すっごく!」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「今日の宝物」
「…………」
嬉しい。
でも。
恥ずかしい。
◇
午後七時四十五分。
ドン。
「…………」
音が響く。
夜空に光る。
大きい。
花火。
「わあ……!」
黒瀬。
見上げる。
「綺麗……」
「…………」
俺。
空。
見る。
赤。
青。
金。
次々に広がる。
「…………」
黒瀬。
笑ってる。
花火を見てる。
その横顔。
俺。
見る。
「…………」
綺麗。
花火じゃない。
黒瀬。
◇
何発目だろう。
花火が続く。
「朝倉君!」
黒瀬。
「何」
「すごいね!」
「うん」
「来てよかった!」
「…………」
俺。
頷く。
「俺も」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「二人で来られてよかった」
「…………」
心臓。
速い。
今。
言うべきなのか。
でも。
花火の音。
大きい。
人。
少ないとはいえ。
周りにいる。
「…………」
少し。
考える。
「黒瀬」
「何?」
「花火終わったら」
「うん」
「少し話したい」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
少し。
緊張した顔。
「…………」
「うん」
小さく。
頷く。
「待ってる」
「…………」
俺。
頷く。
◇
午後八時半。
最後。
大きい花火。
夜空に広がる。
歓声が上がる。
「…………」
黒瀬。
見上げる。
「綺麗だったね」
「うん」
「…………」
少し。
静かになる。
人。
帰り始める。
「…………」
俺。
黒瀬。
見る。
「黒瀬」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「うん」
「少し歩こう」
「…………」
「うん」
◇
川沿い。
歩く。
人混みから離れる。
少し静かな場所。
見つける。
街灯。
光。
川に映る。
「…………」
黒瀬。
隣に立つ。
ぬいぐるみ。
抱いてる。
「…………」
俺。
深呼吸する。
「黒瀬」
「うん」
「…………」
言葉が出ない。
でも。
逃げない。
「去年」
「うん」
「初めて会ったとき」
「…………」
「まさか」
少し。
笑う。
「同じクラスの黒瀬だと思わなかった」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「私も」
「…………」
「びっくりした」
「うん」
「…………」
俺。
続ける。
「最初」
「うん」
「友達、いなかった」
「…………」
「学校で」
「うん」
「誰とも話さなかった」
「…………」
「でも」
黒瀬。
見る。
「Yuuが」
「…………」
「フレンドになってくれた」
「…………」
黒瀬。
少し。
目。
潤む。
「…………」
「うん」
「…………」
「黒瀬だった」
「…………」
俺。
笑う。
「嬉しかった」
「…………」
黒瀬。
小さく。
頷く。
「私も」
「…………」
「Nagiが朝倉君で」
「うん」
「嬉しかった」
◇
「それから」
俺。
続ける。
「一緒にゲームして」
「うん」
「学校でも話して」
「うん」
「六人で遊んで」
「…………」
「修学旅行も行って」
「…………」
黒瀬。
俺。
見てる。
「…………」
「黒瀬といる時間」
「うん」
「全部」
少し。
息。
吸う。
「楽しかった」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「私も」
「…………」
「すごく楽しかった」
「…………」
俺。
頷く。
「でも」
「…………」
「それだけじゃなくなった」
「…………」
黒瀬。
止まる。
「…………」
俺。
黒瀬を見る。
目。
逸らさない。
「黒瀬」
「…………」
「うん」
「俺」
心臓。
速い。
手。
少し震える。
でも。
ちゃんと言う。
「黒瀬由香が好きです」
「…………」
言った。
初めて。
ちゃんと言った。
「友達としてじゃなくて」
「…………」
「一人の女の子として」
「…………」
黒瀬。
目。
大きく。
開く。
「…………」
俺。
続ける。
「俺と」
少し。
間。
「付き合ってください」
「…………」
静寂。
川の音が遠く聞こえる。
黒瀬。
何も言わない。
「…………」
少し不安になる。
でも。
待つ。
今度は俺が待つ。
◇
「…………」
黒瀬。
俯く。
「…………」
肩。
少し震えてる。
「…………」
「黒瀬?」
「…………」
黒瀬。
顔。
上げる。
「…………」
泣いてる。
「…………」
俺。
驚く。
「え」
「…………」
「ごめん」
「違う!」
黒瀬。
首。
振る。
「違うの」
「…………」
「嬉しくて」
「…………」
黒瀬。
涙。
拭く。
笑う。
「ずっと」
「…………」
「待ってた」
「…………」
胸。
苦しい。
「…………」
「ごめん」
「謝らないで」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「私も」
「…………」
小さい声。
「朝倉君が好き」
「…………」
「ずっと好きだった」
「…………」
黒瀬。
笑う。
涙。
流れたまま。
「友達としてじゃなくて」
「…………」
「男の子として」
「…………」
俺。
何も言えない。
嬉しい。
ただ。
嬉しい。
「…………」
黒瀬。
続ける。
「だから」
「…………」
「こちらこそ」
少し。
間。
「よろしくお願いします」
「…………」
止まる。
時間が止まった。
みたいだった。
「…………」
俺。
笑う。
「ありがとう」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「うん」
◇
少し。
沈黙。
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「朝倉君」
「何」
「今」
「うん」
「私たち」
「…………」
少し。
顔。
赤い。
「付き合ってるんだよね?」
「…………」
俺。
頷く。
「うん」
「…………」
黒瀬。
口元。
押さえる。
「…………」
「どうした」
「…………」
「嬉しい」
「…………」
笑う。
「俺も」
「…………」
黒瀬。
少し近づく。
「ねえ」
「何」
「手」
「…………」
黒瀬。
小さく。
手。
差し出す。
「繋いでもいい?」
「…………」
俺。
手。
見る。
そして。
黒瀬。
見る。
「うん」
手。
伸ばす。
指。
触れる。
少し。
ぎこちない。
でも。
繋ぐ。
「…………」
温かい。
黒瀬の手。
小さい。
「…………」
黒瀬。
笑う。
「緊張するね」
「うん」
「…………」
「俺も」
少し歩く。
手。
繋いだまま。
いつも。
隣を歩いてた黒瀬。
でも。
今日は違う。
友達じゃない。
恋人になった。
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「朝倉君」
「何」
「一つお願いしていい?」
「うん」
「…………」
少し。
迷う。
「名前」
「…………」
「名前?」
「うん」
「…………」
黒瀬。
顔。
赤い。
「由香って呼んでほしい」
「…………」
止まる。
「…………」
今まで。
ずっと。
黒瀬。
そう呼んでた。
でも。
今日。
恋人になった。
「…………」
俺。
少し。
息。
吸う。
「……由香」
「…………!」
黒瀬。
固まる。
「…………」
顔。
真っ赤。
「…………」
「大丈夫?」
「…………」
「大丈夫じゃない」
「…………」
「何で」
「嬉しすぎる」
「…………」
笑う。
黒瀬。
俺。
見る。
「じゃあ」
「うん」
「私も」
少し。
間。
「湊」
「…………」
心臓。
跳ねる。
「…………」
「どう?」
「…………」
「嬉しい」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「よかった」
◇
駅の近くに戻る。
人は少し減ってる。
「…………」
スマホ。
鳴る。
『放課後』
『陽斗:二人とも大丈夫かー?』
『莉央:ちゃんと帰れてる?』
『玲司:駅前で待ってる』
「…………」
俺。
黒瀬。
見る。
「みんな待ってる」
「うん」
「戻ろうか」
「…………」
黒瀬。
少し。
考える。
「ねえ」
「何」
「手」
「うん」
「このままでもいい?」
「…………」
俺。
笑う。
「もちろん」
「…………」
黒瀬。
嬉しそうに笑う。
◇
駅前。
「お!」
陽斗。
俺たち。
見る。
「…………」
止まる。
「…………」
水瀬。
目。
丸くする。
「…………」
小宮山。
口元。
押さえる。
玲司。
少し。
笑う。
「…………」
俺たち。
手。
繋いでる。
「…………」
陽斗。
口。
開く。
「お前ら……」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「…………」
俺。
頷く。
そして。
四人。
見る。
「俺たち」
少し。
間。
「付き合うことになった」
「…………」
静かな間。
一秒。
二秒。
「…………」
「うおおおおおお!!」
陽斗。
叫ぶ。
「湊ーーー!!」
「うるさい!」
「おめでとう!!」
「…………」
水瀬。
黒瀬に抱きつく。
「由香ーー!!」
「莉央!」
「よかったね!」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「うん!」
小宮山。
優しく。
笑う。
「おめでとう、二人とも」
「ありがとう」
玲司。
俺。
見る。
「朝倉」
「よく頑張ったな」
「…………」
俺。
少し。
笑う。
「ありがとう」
◇
帰り道。
六人。
駅に向かう。
陽斗。
ずっと。
騒いでる。
「いやー!」
「…………」
「ついに!」
「…………」
「湊に彼女!」
「うるさい」
「親友として嬉しい!」
「分かった」
「本当に嬉しい!」
「分かったって」
水瀬。
笑う。
「陽斗君、落ち着いて」
「無理!」
玲司。
「今日一日うるさかったな」
「今日は特別!」
小宮山。
笑う。
「でも、よかったね」
「うん」
俺。
頷く。
隣。
由香がいる。
手。
繋いでる。
「…………」
由香。
俺。
見る。
「湊」
「…………」
まだ慣れない。
名前で呼ばれる。
でも。
嬉しい。
「何」
「…………」
由香。
笑う。
「大好き」
「…………」
俺。
止まる。
「…………」
陽斗。
「おおお!」
「陽斗君!」
水瀬。
「静かに!」
「…………」
由香が笑う。
俺。
少し照れる。
でも。
今度は逃げない。
「俺も」
「…………」
「由香が好き」
「…………」
由香。
顔。
赤い。
でも笑う。
◇
夜。
帰宅。
「ただいま」
「おかえり」
母さん。
リビング。
「楽しかった?」
「うん」
「…………」
母さん。
俺。
見る。
「何かあった?」
「…………」
俺。
少し考える。
でも。
隠す必要ない。
「母さん」
「何」
「黒瀬と」
「…………」
「付き合うことになった」
「…………」
母さん。
目。
丸くする。
「…………」
そして。
笑う。
「おめでとう」
「…………」
「ありがとう」
「…………」
母さん。
少し。
目。
潤む。
「…………」
「何」
「何でもない」
「…………」
「ただ」
母さん。
笑う。
「嬉しいだけ」
「…………」
俺。
少し笑う。
◇
午後十一時。
部屋。
スマホが鳴る。
Yuu。
『湊!』
「…………」
名前。
見る。
少し笑う。
『何』
『今日はありがとう!』
『こっちこそ』
『…………』
『何』
『まだ夢みたい』
「…………」
『俺も』
『本当に付き合ってるんだよね?』
『うん』
『…………』
『嬉しい』
「…………」
俺。
笑う。
『俺も』
少し。
間。
『湊』
『何』
『これからもよろしくね』
「…………」
『こちらこそ』
『…………』
『大好き』
「…………」
画面。
見る。
嬉しい。
本当に嬉しい。
『俺も大好き』
送る。
すぐ。
既読。
『…………』
『もう!』
『何』
『幸せすぎる!』
「…………」
笑う。
『おやすみ、湊』
『おやすみ、由香』
◇
スマホ。
置く。
ベッド。
横になる。
「…………」
天井。
見る。
今日。
いろいろあった。
浴衣。
屋台。
花火。
告白。
手。
繋いだ。
名前。
呼んだ。
「…………」
全部。
初めてだった。
でも。
一番覚えてることがある。
『こちらこそ、よろしくお願いします』
由香。
泣きながら。
笑ってた。
あの。
顔。
「…………」
忘れない。
多分。
一生。
忘れない。
スマホ。
もう一回。
見る。
連絡先。
Yuu。
名前。
変える。
『由香』
「…………」
少し笑う。
そして。
画面。
閉じる。
明日。
朝。
何て送ろう。
考える。
いつもだったら。
『おはよう』
それだけ。
でも。
明日は少し。
違う。
初めて。
彼女ができた。
次の朝だから。
「…………」
何て送ろう。
考えてるうちに。
眠くなる。
そのとき。
スマホ。
もう一回鳴る。
由香。
『あ!』
『何』
『明日、デートしない?』
「…………」
俺。
画面。
見る。
そして。
笑う。
『いいよ』
『やった!』
『じゃあ明日!』
『うん』
『おやすみ!』
『おやすみ』
スマホ。
置く。
「…………」
明日。
初めて。
彼女とデートする。
「…………」
寝れる気。
しない。




