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『クラスでほとんど誰とも話さない俺の、人生で初めてできた友達は――クラスで一番人気の女子だった。』  作者: 湊


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36/45

第36話 六人で過ごす、初めての休日


 土曜日。


 午前九時。


「…………」


 目が覚める。


 スマホ。


 見る。


 通知。


 三件。


 全部。


『放課後』


『陽斗:おはよう!』


『陽斗:今日楽しみすぎる!』


『陽斗:もう起きてる人!』


「…………」


 送信時間。


 午前七時十二分。


 早い。


『玲司:朝からうるさい』


『琴葉:おはよう。楽しみだね』


『莉央:陽斗君、遠足前の小学生みたい笑』


『由香:おはよう! 私も楽しみ!』


「…………」


 俺。


 返信。


『湊:おはよう』


 すぐ。


 既読。


『陽斗:主催者起きた!』


『湊:主催者って何』


『陽斗:朝倉家ゲーム大会!』


『玲司:勝手に大会にするな』


『莉央:優勝賞品あるの?』


『陽斗:湊の手料理!』


『湊:ない』


『陽斗:即答!?』


「…………」


 笑う。


 今日。


 六人。


 俺の家に集まる。


 黒瀬は一人で来たことある。


 でも。


 六人全員は初めて。


「…………」


 少し緊張する。


 でも。


 楽しみの方が大きい。


     ◇


 午前十時。


「湊」


 母さん。


「何」


「今日、お友達何人来るんだっけ?」


「五人」


「五人?」


「うん」


「…………」


 母さん。


 少し。


 考える。


「男の子も?」


「二人」


「女の子は?」


「三人」


「…………」


 母さん。


 俺。


 見る。


「湊」


「何」


「すごいわね」


「何が」


「お友達いっぱい」


「…………」


 俺。


 少し黙る。


 いっぱい。


 友達。


 その言葉。


 昔なら。


 自分に関係ない。


 そう思ってた。


「…………」


「まあ」


「うん」


「増えた」


 母さん。


 笑う。


「よかったね」


「…………」


「うん」


     ◇


 午前十一時。


 部屋。


 片づける。


 机。


 寄せる。


 椅子。


 追加。


 クッション。


 床に置く。


「…………」


 狭い。


 やっぱり。


 六人。


 無理かもしれない。


 そのとき。


 母さん。


 来る。


「湊」


「何」


「リビング使えば?」


「…………」


「いいの?」


「もちろん」


「でも」


「何?」


「母さんいるだろ」


「私、午後から買い物行くし」


「…………」


「遠慮しなくていいのよ」


「…………」


 母さん。


 笑う。


「お友達と楽しんで」


「…………」


「ありがとう」


「うん」


     ◇


 午後一時。


 インターホン。


 鳴る。


「…………」


 来た。


 玄関に向かう。


 ドア。


 開ける。


「湊ー!」


 陽斗。


「うるさい」


「来たぞ!」


「見れば分かる」


「冷たい!」


 後ろには玲司。


「お邪魔します」


「どうぞ」


 水瀬。


 小宮山。


「こんにちは!」


「お邪魔します」


 そして。


 黒瀬。


「朝倉君」


「何」


「また来ちゃった」


「…………」


 笑う。


「いらっしゃい」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 目。


 丸くする。


「…………」


「何」


「いらっしゃいって」


「うん」


「何か嬉しい」


「…………」


「そう?」


「うん」


 黒瀬。


 笑う。


「お邪魔します」


     ◇


「初めまして!」


 陽斗。


 母さん。


 見る。


「橘陽斗です!」


「藤堂玲司です」


「水瀬莉央です!」


「小宮山琴葉です」


 四人。


 挨拶。


 母さん。


 笑う。


「初めまして。湊の母です」


「いつも湊にはお世話になってます!」


 陽斗。


「…………」


 俺。


 止まる。


「逆だろ」


「え?」


「俺がお世話になってる」


「…………」


 陽斗。


 笑う。


「どっちも!」


「…………」


 母さん。


 笑う。


「仲良しなのね」


「はい!」


 陽斗。


 即答。


「親友です!」


「…………」


 母さん。


 俺。


 見る。


「湊」


「何」


「よかったわね」


「…………」


 恥ずかしい。


 でも。


 嬉しい。


     ◇


 リビング。


「広い!」


 陽斗。


「普通だろ」


「俺んちより広い!」


「知らない」


 水瀬。


 ソファ。


 座る。


「落ち着くね」


「うん」


 小宮山。


「綺麗なお家」


「ありがとう」


 玲司。


 テレビ。


 見る。


「ここでゲーム?」


「うん」


「機材は?」


「二階から持ってくる」


「手伝う」


「ありがとう」


 陽斗。


 手。


 上げる。


「俺も!」


「じゃあ頼む」


「任せろ!」


     ◇


 二階。


 俺の部屋。


「うお!」


 陽斗。


「すげえ!」


「何が」


「ゲーム環境!」


 玲司。


 パソコン。


 見る。


「結構いい構成だな」


「まあ」


「モニター何Hz?」


「百四十四」


「十分だな」


 陽斗。


 椅子。


 座る。


「ここでいつもゲームしてんの?」


「うん」


「…………」


 陽斗。


 少し。


 笑う。


「湊」


「何」


「何かさ」


「うん」


「嬉しいな」


「…………」


「何が」


「お前の部屋来れたの」


「…………」


 陽斗。


 周り。


 見る。


「最初」


「うん」


「学校で全然話さなかったじゃん」


「そうだな」


「今」


「うん」


「家来てる」


「…………」


 玲司。


 頷く。


「確かに」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「俺も」


「…………」


「嬉しい」


 陽斗。


 固まる。


「…………」


「何」


「湊!」


「何」


「抱きついていい!?」


「嫌」


「何で!?」


「暑い」


「理由それ!?」


 玲司。


 笑う。


     ◇


 午後一時半。


 ゲーム。


 開始。


「ルール!」


 陽斗。


「何」


「チーム戦!」


「何のゲーム?」


 水瀬。


「パーティーゲーム!」


 玲司。


「FPSじゃないのか」


「初心者いるから」


 俺。


「なるほど」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「…………」


 少し笑う。


 FPSは俺たち二人は得意。


 でも。


 今日は六人。


 全員が楽しめるゲーム。


 選んだ。


「朝倉君」


「何」


「優しいね」


「…………」


「普通」


「ふふ」


     ◇


 一試合目。


「待って!」


 水瀬。


「操作分かんない!」


「そこ押す!」


 陽斗。


「どこ!?」


「右!」


「右ってどっち!?」


「そっち!」


「分かんない!」


 小宮山。


 笑う。


「莉央ちゃん、逆走してる」


「え!?」


 玲司。


「水瀬、画面見て」


「見てる!」


「違う画面」


「…………」


「え!?」


 全員。


 笑う。


「莉央」


 黒瀬。


「何!?」


「それ陽斗君の画面」


「…………」


「嘘!?」


「本当」


「だから操作おかしかったんだ!」


「いや」


 俺。


「それは関係ない」


「朝倉君!?」


     ◇


 二試合目。


「よし!」


 陽斗。


「俺が一位!」


「まだ途中」


 玲司。


「勝ったも同然!」


「…………」


 数分後。


「うわああ!」


 陽斗。


 最下位。


「何で!?」


「調子乗ったから」


 玲司。


「玲司!」


「何」


「お前容赦ない!」


「ゲームだから」


 小宮山。


 笑う。


「藤堂君、強いね」


「まあ」


「朝倉君も」


 水瀬。


「強すぎない?」


「慣れてるだけ」


「…………」


 黒瀬。


 にやにや。


「朝倉君」


「何」


「本気出してないでしょ」


「…………」


「出してる」


「嘘」


「何で」


「分かるもん」


「…………」


 黒瀬。


 笑う。


「いつものNagiならもっと強い」


「…………」


 俺。


 固まる。


「…………」


 黒瀬も。


 固まる。


「あ」


「…………」


 水瀬。


 首。


 傾げる。


「Nagi?」


「…………」


 黒瀬。


 慌てる。


「ゲームのキャラ!」


「…………」


「朝倉君がよく使う!」


「そうなの?」


 陽斗。


「…………」


 俺。


 頷く。


「まあ」


「へえ!」


 陽斗。


 すぐゲームに戻る。


「次こそ勝つ!」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


 小声。


「ごめん」


「大丈夫」


「…………」


 危なかった。


 Yuu。


 Nagi。


 秘密。


 まだ。


 四人は知らない。


 俺たち。


 二人だけの秘密。


     ◇


 午後三時。


「休憩!」


 水瀬。


「疲れた!」


「ゲームで?」


 玲司。


「頭使った!」


「使ってた?」


「藤堂君!?」


 小宮山。


 笑う。


「お菓子食べよ」


「賛成!」


 陽斗。


 テーブルを囲む六人。


 お菓子とジュースが並ぶ。


「…………」


 俺。


 周り。


 見る。


 陽斗。


 玲司。


 水瀬。


 小宮山。


 黒瀬。


 全員。


 俺の家にいる。


「…………」


 不思議。


 まだ少し。


 信じられない。


「朝倉君」


 黒瀬。


「何」


「どうしたの?」


「…………」


「何でもない」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 考える。


「嬉しい?」


「…………」


 俺。


 黒瀬。


 見る。


「うん」


「…………」


「嬉しい」


 黒瀬。


 笑う。


「私も」


     ◇


「そういえば!」


 陽斗。


「何」


「夏休み!」


「まだ先」


 玲司。


「もうすぐだろ!」


「テスト終わってない」


「…………」


 陽斗。


 止まる。


「そうだった」


 水瀬。


 笑う。


「現実見たね」


「見たくなかった!」


 小宮山。


「でも夏休み楽しみだね」


「うん!」


 黒瀬。


「何かしたい!」


「海!」


 陽斗。


「遠い」


 玲司。


「プール!」


 水瀬。


「混む」


「藤堂君、否定ばっかり!」


「事実」


 小宮山。


「花火とか?」


「…………」


 黒瀬。


 目。


 輝く。


「花火!」


「いいね!」


 水瀬。


「夏祭り!」


 陽斗。


「屋台!」


「食べ物ばっかり」


 玲司。


「いいじゃん!」


 俺。


 少し。


 止まる。


 夏祭り。


 花火。


「…………」


 夏に告白。


 考えてた。


 場所はまだ。


 決めてない。


 でも。


 花火…悪くない。


「朝倉君」


 黒瀬。


「何」


「花火」


「うん」


「行きたい?」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


 期待してる顔。


「行きたい」


「…………」


「六人で」


 少し。


 間。


「あと」


「うん」


「二人でも」


「…………」


 黒瀬。


 固まる。


「…………」


 水瀬。


 口。


 押さえる。


 陽斗。


 俺。


 見る。


 玲司。


 少し。


 笑う。


 小宮山。


 目。


 丸い。


「…………」


 黒瀬。


 顔。


 赤い。


「二人でも?」


「…………」


 俺。


 頷く。


「うん」


「…………」


 黒瀬。


 小さく。


 笑う。


「私も」


「…………」


「二人でも行きたい」


「…………」


 心臓。


 速い。


 でも。


 逃げない。


「じゃあ」


「うん」


「夏になったら」


「…………」


「行こう」


「…………」


 黒瀬。


 笑う。


「約束」


「約束」


     ◇


「はいはい!」


 水瀬。


 手。


 叩く。


「二人の話終わった?」


「莉央!」


「何?」


「六人の話!」


「分かってるよ」


 陽斗。


 笑う。


「じゃあ六人でも行こうぜ!」


「そうだな」


 玲司。


「日程調べとく」


「さすが!」


 小宮山。


「楽しみだね」


「うん」


 俺。


 笑う。


 六人で花火。


 二人でも花火。


 どっちも。


 楽しみ。


     ◇


 午後五時。


「そろそろ帰るね」


 水瀬。


「お邪魔しました!」


 小宮山。


「楽しかった」


 玲司。


「また来る!」


 陽斗。


「勝手に決めるな」


「えー!」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「朝倉君」


「何」


「今日も楽しかった」


「うん」


「また来ていい?」


「もちろん」


「…………」


 黒瀬。


 笑う。


「ありがとう」


     ◇


 玄関。


 母さん。


 帰ってくる。


「あら、みんな帰るところ?」


「はい!」


 陽斗。


「今日はありがとうございました!」


「こちらこそ」


 母さん。


 笑う。


「また遊びに来てね」


「はい!」


 水瀬。


「お菓子も美味しかったです!」


「よかった」


 玲司。


 頭。


 下げる。


「お邪魔しました」


 小宮山。


「ありがとうございました」


 黒瀬。


「またお邪魔します!」


「もちろん」


 母さん。


 嬉しそうに笑う。


     ◇


 五人。


 帰る。


 俺。


 玄関に立つ。


「…………」


 静か。


 さっきまで。


 うるさかった。


 リビング。


 今は静か。


「湊」


 母さん。


「何」


「楽しかった?」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「うん」


「…………」


「すごく」


 母さん。


 笑う。


「そう」


「うん」


「よかったね」


「…………」


 俺。


 頷く。


     ◇


 夜。


『放課後』


『陽斗:今日は最高だった!』


『莉央:楽しかった!』


『琴葉:また集まりたいね』


『玲司:次は橘の家で』


『陽斗:え!?』


『莉央:決まり!』


『陽斗:俺んち!?』


『湊:楽しみにしてる』


『陽斗:湊まで!?』


「…………」


 笑う。


 少し。


 間。


 個人。


 通知。


 Yuu。


『朝倉君』


『何』


『今日の花火の話』


「…………」


『うん』


『本当に二人でも行ってくれる?』


『うん』


『…………』


『嬉しい』


「…………」


『俺も』


『…………』


『何』


『何でもない!』


「…………」



『朝倉君』


『何』


『花火』


『うん』


『楽しみにしてる』


「…………」


『俺も』


『約束ね』


『約束』


     ◇


 スマホ。


 置く。


 窓。


 見る。


 夏はまだ少し先。


 でも。


 確実に近づいてる。


 黒瀬に初めて会った夏。


 もうすぐ。


 あの日から一年。



 


 ちゃんと伝えたい。


 好きだという気持ち。


 もう。


 黒瀬は知ってるかもしれない。


 でも。


 まだ言ってない。


 ちゃんと言葉にしてない。


「…………」


 花火。


 二人で行くと約束した。


 その日に伝えよう。



 


 俺は逃げない。


 友達のその先。


 一歩。


 踏み出すために。


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