第36話 六人で過ごす、初めての休日
土曜日。
午前九時。
「…………」
目が覚める。
スマホ。
見る。
通知。
三件。
全部。
『放課後』
『陽斗:おはよう!』
『陽斗:今日楽しみすぎる!』
『陽斗:もう起きてる人!』
「…………」
送信時間。
午前七時十二分。
早い。
『玲司:朝からうるさい』
『琴葉:おはよう。楽しみだね』
『莉央:陽斗君、遠足前の小学生みたい笑』
『由香:おはよう! 私も楽しみ!』
「…………」
俺。
返信。
『湊:おはよう』
すぐ。
既読。
『陽斗:主催者起きた!』
『湊:主催者って何』
『陽斗:朝倉家ゲーム大会!』
『玲司:勝手に大会にするな』
『莉央:優勝賞品あるの?』
『陽斗:湊の手料理!』
『湊:ない』
『陽斗:即答!?』
「…………」
笑う。
今日。
六人。
俺の家に集まる。
黒瀬は一人で来たことある。
でも。
六人全員は初めて。
「…………」
少し緊張する。
でも。
楽しみの方が大きい。
◇
午前十時。
「湊」
母さん。
「何」
「今日、お友達何人来るんだっけ?」
「五人」
「五人?」
「うん」
「…………」
母さん。
少し。
考える。
「男の子も?」
「二人」
「女の子は?」
「三人」
「…………」
母さん。
俺。
見る。
「湊」
「何」
「すごいわね」
「何が」
「お友達いっぱい」
「…………」
俺。
少し黙る。
いっぱい。
友達。
その言葉。
昔なら。
自分に関係ない。
そう思ってた。
「…………」
「まあ」
「うん」
「増えた」
母さん。
笑う。
「よかったね」
「…………」
「うん」
◇
午前十一時。
部屋。
片づける。
机。
寄せる。
椅子。
追加。
クッション。
床に置く。
「…………」
狭い。
やっぱり。
六人。
無理かもしれない。
そのとき。
母さん。
来る。
「湊」
「何」
「リビング使えば?」
「…………」
「いいの?」
「もちろん」
「でも」
「何?」
「母さんいるだろ」
「私、午後から買い物行くし」
「…………」
「遠慮しなくていいのよ」
「…………」
母さん。
笑う。
「お友達と楽しんで」
「…………」
「ありがとう」
「うん」
◇
午後一時。
インターホン。
鳴る。
「…………」
来た。
玄関に向かう。
ドア。
開ける。
「湊ー!」
陽斗。
「うるさい」
「来たぞ!」
「見れば分かる」
「冷たい!」
後ろには玲司。
「お邪魔します」
「どうぞ」
水瀬。
小宮山。
「こんにちは!」
「お邪魔します」
そして。
黒瀬。
「朝倉君」
「何」
「また来ちゃった」
「…………」
笑う。
「いらっしゃい」
「…………」
黒瀬。
少し。
目。
丸くする。
「…………」
「何」
「いらっしゃいって」
「うん」
「何か嬉しい」
「…………」
「そう?」
「うん」
黒瀬。
笑う。
「お邪魔します」
◇
「初めまして!」
陽斗。
母さん。
見る。
「橘陽斗です!」
「藤堂玲司です」
「水瀬莉央です!」
「小宮山琴葉です」
四人。
挨拶。
母さん。
笑う。
「初めまして。湊の母です」
「いつも湊にはお世話になってます!」
陽斗。
「…………」
俺。
止まる。
「逆だろ」
「え?」
「俺がお世話になってる」
「…………」
陽斗。
笑う。
「どっちも!」
「…………」
母さん。
笑う。
「仲良しなのね」
「はい!」
陽斗。
即答。
「親友です!」
「…………」
母さん。
俺。
見る。
「湊」
「何」
「よかったわね」
「…………」
恥ずかしい。
でも。
嬉しい。
◇
リビング。
「広い!」
陽斗。
「普通だろ」
「俺んちより広い!」
「知らない」
水瀬。
ソファ。
座る。
「落ち着くね」
「うん」
小宮山。
「綺麗なお家」
「ありがとう」
玲司。
テレビ。
見る。
「ここでゲーム?」
「うん」
「機材は?」
「二階から持ってくる」
「手伝う」
「ありがとう」
陽斗。
手。
上げる。
「俺も!」
「じゃあ頼む」
「任せろ!」
◇
二階。
俺の部屋。
「うお!」
陽斗。
「すげえ!」
「何が」
「ゲーム環境!」
玲司。
パソコン。
見る。
「結構いい構成だな」
「まあ」
「モニター何Hz?」
「百四十四」
「十分だな」
陽斗。
椅子。
座る。
「ここでいつもゲームしてんの?」
「うん」
「…………」
陽斗。
少し。
笑う。
「湊」
「何」
「何かさ」
「うん」
「嬉しいな」
「…………」
「何が」
「お前の部屋来れたの」
「…………」
陽斗。
周り。
見る。
「最初」
「うん」
「学校で全然話さなかったじゃん」
「そうだな」
「今」
「うん」
「家来てる」
「…………」
玲司。
頷く。
「確かに」
「…………」
俺。
少し。
考える。
「俺も」
「…………」
「嬉しい」
陽斗。
固まる。
「…………」
「何」
「湊!」
「何」
「抱きついていい!?」
「嫌」
「何で!?」
「暑い」
「理由それ!?」
玲司。
笑う。
◇
午後一時半。
ゲーム。
開始。
「ルール!」
陽斗。
「何」
「チーム戦!」
「何のゲーム?」
水瀬。
「パーティーゲーム!」
玲司。
「FPSじゃないのか」
「初心者いるから」
俺。
「なるほど」
黒瀬。
俺。
見る。
「…………」
少し笑う。
FPSは俺たち二人は得意。
でも。
今日は六人。
全員が楽しめるゲーム。
選んだ。
「朝倉君」
「何」
「優しいね」
「…………」
「普通」
「ふふ」
◇
一試合目。
「待って!」
水瀬。
「操作分かんない!」
「そこ押す!」
陽斗。
「どこ!?」
「右!」
「右ってどっち!?」
「そっち!」
「分かんない!」
小宮山。
笑う。
「莉央ちゃん、逆走してる」
「え!?」
玲司。
「水瀬、画面見て」
「見てる!」
「違う画面」
「…………」
「え!?」
全員。
笑う。
「莉央」
黒瀬。
「何!?」
「それ陽斗君の画面」
「…………」
「嘘!?」
「本当」
「だから操作おかしかったんだ!」
「いや」
俺。
「それは関係ない」
「朝倉君!?」
◇
二試合目。
「よし!」
陽斗。
「俺が一位!」
「まだ途中」
玲司。
「勝ったも同然!」
「…………」
数分後。
「うわああ!」
陽斗。
最下位。
「何で!?」
「調子乗ったから」
玲司。
「玲司!」
「何」
「お前容赦ない!」
「ゲームだから」
小宮山。
笑う。
「藤堂君、強いね」
「まあ」
「朝倉君も」
水瀬。
「強すぎない?」
「慣れてるだけ」
「…………」
黒瀬。
にやにや。
「朝倉君」
「何」
「本気出してないでしょ」
「…………」
「出してる」
「嘘」
「何で」
「分かるもん」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「いつものNagiならもっと強い」
「…………」
俺。
固まる。
「…………」
黒瀬も。
固まる。
「あ」
「…………」
水瀬。
首。
傾げる。
「Nagi?」
「…………」
黒瀬。
慌てる。
「ゲームのキャラ!」
「…………」
「朝倉君がよく使う!」
「そうなの?」
陽斗。
「…………」
俺。
頷く。
「まあ」
「へえ!」
陽斗。
すぐゲームに戻る。
「次こそ勝つ!」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
小声。
「ごめん」
「大丈夫」
「…………」
危なかった。
Yuu。
Nagi。
秘密。
まだ。
四人は知らない。
俺たち。
二人だけの秘密。
◇
午後三時。
「休憩!」
水瀬。
「疲れた!」
「ゲームで?」
玲司。
「頭使った!」
「使ってた?」
「藤堂君!?」
小宮山。
笑う。
「お菓子食べよ」
「賛成!」
陽斗。
テーブルを囲む六人。
お菓子とジュースが並ぶ。
「…………」
俺。
周り。
見る。
陽斗。
玲司。
水瀬。
小宮山。
黒瀬。
全員。
俺の家にいる。
「…………」
不思議。
まだ少し。
信じられない。
「朝倉君」
黒瀬。
「何」
「どうしたの?」
「…………」
「何でもない」
「…………」
黒瀬。
少し。
考える。
「嬉しい?」
「…………」
俺。
黒瀬。
見る。
「うん」
「…………」
「嬉しい」
黒瀬。
笑う。
「私も」
◇
「そういえば!」
陽斗。
「何」
「夏休み!」
「まだ先」
玲司。
「もうすぐだろ!」
「テスト終わってない」
「…………」
陽斗。
止まる。
「そうだった」
水瀬。
笑う。
「現実見たね」
「見たくなかった!」
小宮山。
「でも夏休み楽しみだね」
「うん!」
黒瀬。
「何かしたい!」
「海!」
陽斗。
「遠い」
玲司。
「プール!」
水瀬。
「混む」
「藤堂君、否定ばっかり!」
「事実」
小宮山。
「花火とか?」
「…………」
黒瀬。
目。
輝く。
「花火!」
「いいね!」
水瀬。
「夏祭り!」
陽斗。
「屋台!」
「食べ物ばっかり」
玲司。
「いいじゃん!」
俺。
少し。
止まる。
夏祭り。
花火。
「…………」
夏に告白。
考えてた。
場所はまだ。
決めてない。
でも。
花火…悪くない。
「朝倉君」
黒瀬。
「何」
「花火」
「うん」
「行きたい?」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
期待してる顔。
「行きたい」
「…………」
「六人で」
少し。
間。
「あと」
「うん」
「二人でも」
「…………」
黒瀬。
固まる。
「…………」
水瀬。
口。
押さえる。
陽斗。
俺。
見る。
玲司。
少し。
笑う。
小宮山。
目。
丸い。
「…………」
黒瀬。
顔。
赤い。
「二人でも?」
「…………」
俺。
頷く。
「うん」
「…………」
黒瀬。
小さく。
笑う。
「私も」
「…………」
「二人でも行きたい」
「…………」
心臓。
速い。
でも。
逃げない。
「じゃあ」
「うん」
「夏になったら」
「…………」
「行こう」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「約束」
「約束」
◇
「はいはい!」
水瀬。
手。
叩く。
「二人の話終わった?」
「莉央!」
「何?」
「六人の話!」
「分かってるよ」
陽斗。
笑う。
「じゃあ六人でも行こうぜ!」
「そうだな」
玲司。
「日程調べとく」
「さすが!」
小宮山。
「楽しみだね」
「うん」
俺。
笑う。
六人で花火。
二人でも花火。
どっちも。
楽しみ。
◇
午後五時。
「そろそろ帰るね」
水瀬。
「お邪魔しました!」
小宮山。
「楽しかった」
玲司。
「また来る!」
陽斗。
「勝手に決めるな」
「えー!」
黒瀬。
俺。
見る。
「朝倉君」
「何」
「今日も楽しかった」
「うん」
「また来ていい?」
「もちろん」
「…………」
黒瀬。
笑う。
「ありがとう」
◇
玄関。
母さん。
帰ってくる。
「あら、みんな帰るところ?」
「はい!」
陽斗。
「今日はありがとうございました!」
「こちらこそ」
母さん。
笑う。
「また遊びに来てね」
「はい!」
水瀬。
「お菓子も美味しかったです!」
「よかった」
玲司。
頭。
下げる。
「お邪魔しました」
小宮山。
「ありがとうございました」
黒瀬。
「またお邪魔します!」
「もちろん」
母さん。
嬉しそうに笑う。
◇
五人。
帰る。
俺。
玄関に立つ。
「…………」
静か。
さっきまで。
うるさかった。
リビング。
今は静か。
「湊」
母さん。
「何」
「楽しかった?」
「…………」
俺。
少し。
考える。
「うん」
「…………」
「すごく」
母さん。
笑う。
「そう」
「うん」
「よかったね」
「…………」
俺。
頷く。
◇
夜。
『放課後』
『陽斗:今日は最高だった!』
『莉央:楽しかった!』
『琴葉:また集まりたいね』
『玲司:次は橘の家で』
『陽斗:え!?』
『莉央:決まり!』
『陽斗:俺んち!?』
『湊:楽しみにしてる』
『陽斗:湊まで!?』
「…………」
笑う。
少し。
間。
個人。
通知。
Yuu。
『朝倉君』
『何』
『今日の花火の話』
「…………」
『うん』
『本当に二人でも行ってくれる?』
『うん』
『…………』
『嬉しい』
「…………」
『俺も』
『…………』
『何』
『何でもない!』
「…………」
『朝倉君』
『何』
『花火』
『うん』
『楽しみにしてる』
「…………」
『俺も』
『約束ね』
『約束』
◇
スマホ。
置く。
窓。
見る。
夏はまだ少し先。
でも。
確実に近づいてる。
黒瀬に初めて会った夏。
もうすぐ。
あの日から一年。
ちゃんと伝えたい。
好きだという気持ち。
もう。
黒瀬は知ってるかもしれない。
でも。
まだ言ってない。
ちゃんと言葉にしてない。
「…………」
花火。
二人で行くと約束した。
その日に伝えよう。
俺は逃げない。
友達のその先。
一歩。
踏み出すために。




