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『クラスでほとんど誰とも話さない俺の、人生で初めてできた友達は――クラスで一番人気の女子だった。』  作者: 湊


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33/45

第33話 友達の、その先へ


 修学旅行。


 終わって。


 一週間。


「…………」


 教室。


 いつもの。


 窓際の席。


 いつもの。


 昼休み。


 でも。


 少し。


 違う。


「湊!」


「何」


「修学旅行に戻りたい!」


「無理」


「即答!?」


「終わったから」


「分かってるけど!」


 陽斗。


 机。


 突っ伏す。


「三日間って短すぎない!?」


「帰ってきてから毎日言ってる」


 玲司。


「だって楽しかったじゃん!」


「それは分かる」


「だろ!?」


「でも戻れない」


「冷たい!」


 水瀬。


 笑う。


「陽斗君、もう十回くらい言ってない?」


「二十回は言ってる」


 小宮山。


「そんなに!?」


「数えてたの?」


「数えてないよ」


「…………」


 笑う。


 六人。


 いつもの。


 昼休み。


 修学旅行。


 終わった。


 でも。


 何も。


 終わってない。


 むしろ。


 少し。


 変わった。


「朝倉君」


「何」


 黒瀬。


 スマホ。


 見せる。


「これ」


「…………」


 写真。


 展望台。


 夕日。


 六人。


 笑ってる。


「いい写真だね」


「うん」


「私、これ待ち受けにした」


「…………」


「六人の?」


「そう」


「…………」


「何」


「いや」


 俺。


 スマホ。


 出す。


 同じ。


 写真。


「…………」


 黒瀬。


 目。


 丸くする。


「え!?」


「何」


「朝倉君も!?」


「うん」


「いつから!?」


「帰ってきた日」


「…………」


 黒瀬。


 嬉しそう。


 笑う。


「一緒だ」


「そうだな」


「…………」


「何」


「何でもない」


 また。


 それ。


「ちなみに」


 水瀬。


「二人の写真は?」


「…………」


 黒瀬。


 固まる。


「莉央!」


「何?」


「何で今それ!」


「気になったから」


「…………」


 俺。


 スマホ。


 見る。


 二人。


 夕日。


 写真。


 もちろん。


 保存してる。


「朝倉君」


 水瀬。


「何」


「お気に入り?」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


 答え。


 待ってる。


「うん」


「…………」


「お気に入り」


 黒瀬。


 顔。


 赤くなる。


「…………」


 陽斗。


 口。


 開く。


「湊!」


「何」


「お前最近すごいな!」


「何が」


「いや!」


 玲司。


 陽斗。


 止める。


「橘」


「何」


「今は黙っとけ」


「何で!?」


「面白いから」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 小さく。


 見る。


「朝倉君」


「何」


「私も」


「うん」


「お気に入り」


「…………」


「そっか」


「うん」


 心臓。


 少し。


 速くなる。


 修学旅行。


 終わった。


 でも。


 黒瀬との。


 距離。


 前より。


 近い。


     ◇


 五時間目。


 数学。


「では、この問題」


 先生。


 黒板。


 書く。


「朝倉」


「はい」


「解いてみろ」


「…………」


 立つ。


 黒板。


 向かう。


 数式。


 書く。


 答え。


 出す。


「正解」


「…………」


 席に戻る。


「朝倉君」


 黒瀬。


 小声。


「何」


「すごい」


「普通」


「全然分かんなかった」


「あとで教える」


「…………」


「何」


「いいの?」


「うん」


「やった」


 黒瀬。


 笑う。


「約束ね」


「うん」


 前だったら。


 黒瀬から。


 頼まれるまで。


 待ってた。


 今は。


 自分から。


 言える。


 少し。


 変わった。


 気がする。


     ◇


 放課後。


「湊」


 玲司。


「何」


「今日、時間ある?」


「バイトない」


「じゃあちょっと寄ってかない?」


「どこ」


「駅前」


「何するの」


「話」


「…………」


 嫌な。


 予感。


「陽斗も?」


「いる」


「…………」


 確定。


「朝倉君」


 黒瀬。


 近づく。


「何」


「今日、一緒に帰れる?」


「…………」


 玲司。


 見る。


「…………」


 黒瀬。


 見る。


「今日は玲司たちと約束した」


「あ」


「ごめん」


「ううん!」


 黒瀬。


 笑う。


「じゃあまた明日!」


「うん」


「ゲームは?」


「夜なら」


「やった」


 黒瀬。


 手。


 振る。


「またね」


「また」


 黒瀬。


 水瀬たちのところ。


 戻る。


「…………」


 玲司。


 俺。


 見る。


「朝倉」


「何」


「今の」


「うん」


「黒瀬と帰ってもよかったぞ」


「…………」


「別に急ぎじゃない」


「でも」


「うん」


「先に約束しただろ」


「…………」


 玲司。


 少し。


 笑う。


「そうだな」


「何」


「いや」


「…………」


「友達になれてよかった」


「…………」


 また。


 そういうこと。


 普通に。


 言う。


「俺も」


「…………」


 玲司。


 目。


 丸くする。


「何」


「いや」


「…………」


「最近、素直だな」


「うるさい」


     ◇


 駅前。


 ファストフード店。


「作戦会議!」


 陽斗。


「帰る」


「待て!」


「何の」


「決まってるだろ!」


 陽斗。


 俺。


 指す。


「湊の恋愛!」


「…………」


 玲司。


 見る。


「お前も?」


「俺は普通に話を聞くだけ」


「陽斗は?」


「作戦会議!」


「帰る」


「だから待てって!」


 結局。


 座る。


「で」


 玲司。


「何」


「修学旅行から一週間」


「うん」


「進展は?」


「…………」


「ない」


「…………」


 陽斗。


 頭。


 抱える。


「何で!?」


「何でって」


「ほぼ両想いだろ!?」


「声」


「ごめん!」


 周り。


 見る。


 誰も。


 聞いてない。


 多分。


「朝倉」


 玲司。


「何」


「まだ怖い?」


「…………」


 考える。


 修学旅行。


 夜。


 俺。


 言った。


『黒瀬のこと、好き』


 そして。


『付き合いたい』


 初めて。


 誰かに。


 言った。


 今も。


 気持ち。


 変わらない。


「怖い」


「うん」


「でも」


「うん」


「前とは違う」


「…………」


「何が?」


 陽斗。


「言いたい」


「…………」


「ちゃんと」


 黒瀬に。


「好きって伝えたい」


「…………」


 陽斗。


 笑う。


「そっか」


「うん」


「じゃあいつ!?」


「…………」


 いつ。


 考えてない。


 いや。


 少し。


 考えてた。


「夏」


「夏?」


「うん」


「何で?」


「去年」


 俺。


 飲み物。


 置く。


「黒瀬と初めて会ったの」


「うん」


「夏休みだった」


「…………」


「ゲームの友達が」


「うん」


「黒瀬だって分かった日」


 あの日。


 忘れない。


 待ち合わせ。


 ゲーム用品店。


 振り返ったら。


 黒瀬が。


 驚いた顔してた。


 俺も同じ顔してた。


 と思う。


「もうすぐ一年」


「…………」


「だから」


 少し。


 考える。


「その頃に」


「うん」


「伝えたい」


「…………」


 陽斗。


 黙る。


 玲司も。


 黙る。


「湊」


「何」


「お前」


 陽斗。


 笑う。


「めっちゃ考えてるじゃん」


「悪い?」


「全然!」


「…………」


「いいと思う!」


 玲司。


 頷く。


「ただ」


「何」


「夏まで待たなきゃいけないわけじゃない」


「…………」


「言いたくなったら言えばいい」


「うん」


「逆に、夏になったからって焦るなよ」


「分かってる」


「ならいい」


 陽斗。


 ポテト。


 食べる。


「じゃあそれまでに」


「何」


「もっと仲良くなればいい!」


「もう仲いいだろ」


「そうだけど!」


「何」


「もっと!」


「具体的には?」


「…………」


 陽斗。


 玲司。


 見る。


「玲司!」


「俺に聞くな」


「作戦会議なのに!」


「お前が始めた」


「…………」


 笑う。


 俺。


 普通に。


 笑ってる。


 好きな人の話。


 友達としてる。


 こんな日常。


 想像できなかった。


「陽斗」


「何」


「玲司」


「ん?」


「ありがとう」


「…………」


 二人。


 止まる。


「何が?」


「相談」


「…………」


「聞いてくれて」


 陽斗。


 顔。


 赤くなる。


「お前!」


「何」


「急にそういうこと言うな!」


「いつもお前言ってるだろ」


「俺はいいの!」


「理不尽」


 玲司。


 笑う。


「朝倉」


「何」


「どういたしまして」


「…………」


 少し。


 嬉しい。


     ◇


 夜。


 Yuu。


『今日何してたの?』


『橘と玲司と寄り道』


『珍しい!』


『そう?』


『男子三人だけってあんまりないから』


『確かに』


『楽しかった?』


『うん』


『何話したの?』


「…………」


 言えない。


『色々』


『何それ』


『男同士の話』


『怪しい』


『黒瀬たちも女子だけで話すだろ』


『するよ』


『何話すの』


『秘密』


『同じだろ』


『…………』


『確かに』


「…………」


 笑う。


 少し。


 間。


『朝倉君』


『何』


『今日一緒に帰れなかったから』


『うん』


『明日は一緒に帰りたい』


「…………」


 嬉しい。


 普通に。


『いいよ』


『やった!』


『約束ね』


『約束』


     ◇


 翌日。


 放課後。


「朝倉君!」


「何」


「今日は?」


「バイトない」


「じゃあ!」


「うん」


「一緒に帰ろ!」


「分かった」


 黒瀬。


 笑う。


「莉央たちは?」


「琴葉と図書室」


「そうなんだ」


「陽斗君たちは部活」


「うん」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 笑う。


「二人だね」


「そうだな」


「…………」


「何」


「最近」


「うん」


「二人で帰るの普通になってきたね」


「そうだな」


「…………」


「嫌?」


「全然!」


 即答。


「むしろ」


 止まる。


「何」


「好き」


「…………」


「あ!」


 黒瀬。


 止まる。


「違う!」


「何が」


「一緒に帰るのが!」


「分かってる」


「本当に!?」


「うん」


「…………」


 黒瀬。


 頬。


 膨らませる。


「最近の朝倉君」


「何」


「ずるい」


「何が」


「何でもない!」


 またそれ。


 でも。


 前より少し。


 意味が分かる。


 気がする。


     ◇


 駅まで歩く。


「もうすぐ中間テストだね」


 黒瀬。


「そうだな」


「嫌だなあ」


「英語得意だろ」


「数学がある」


「前も言ってた」


「だって苦手なんだもん」


「…………」


「教えようか?」


「…………」


 黒瀬。


 止まる。


「え?」


「数学」


「…………」


「何」


「朝倉君から言ってくれた」


「いつも教えてるだろ」


「そうだけど!」


 黒瀬。


 笑う。


「じゃあお願い!」


「うん」


「どこで勉強する?」


「図書館とか」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 考える。


「朝倉君の家は?」


「…………」


 止まる。


「家?」


「うん」


「俺の?」


「他に誰の家があるの?」


「…………」


 黒瀬が。


 俺の家に。


 来る。


「…………」


 母さんがいるかもしれない。


 いや。


 そういう問題じゃない。


「嫌だったらいいよ!」


 黒瀬。


 慌てる。


「図書館でも全然!」


「嫌じゃない」


「…………」


「ただ」


「うん」


「友達」


「うん」


「家に呼んだことない」


「…………」


 黒瀬。


 目。


 丸くする。


「一回も?」


「うん」


「小学校の頃も?」


「多分」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 笑う。


「じゃあ」


「何」


「私が初めて?」


「…………」


「そうなる」


「…………」


 黒瀬。


 口元。


 押さえる。


「何」


「嬉しい」


「…………」


「朝倉君の初めて」


「うん」


「また一個増えた」


「…………」


 言い方。


 困る。


「……そうだな」


「ふふ」


「じゃあ」


 俺。


「うん」


「今度来る?」


「…………」


「いいの!?」


「うん」


「やった!」


「勉強するんだぞ」


「分かってる!」


「ゲームは禁止」


「えー!」


「…………」


「やっぱり」


「ちょっとだけ!」


「勉強したあと」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「お願い」


「…………」


「分かった」


「やった!」


 笑う。


 俺も。


 少し笑う。


 家に友達を呼ぶ。


 初めて。


 しかも。


 黒瀬。


 好きな人。


「…………」


 大丈夫。


 なのか。


 俺。


     ◇


 夜。


 夕食。


「母さん」


「ん?」


「今度」


「うん」


「友達、家に呼んでいい?」


 母さん。


 手。


 止まる。


「…………」


「何」


「友達?」


「うん」


「湊の?」


「俺以外に誰がいるの」


「…………」


 母さん。


 振り返る。


「家に?」


「うん」


「…………」


 少し。


 沈黙。


「いいに決まってるじゃない」


「そっか」


「もちろん」


 母さん。


 笑う。


「何人?」


「一人」


「男の子?」


「…………」


 来た。


「女子」


「…………」


 母さん。


 固まる。


「…………」


「何」


「女の子?」


「うん」


「二人きり?」


「多分」


「…………」


 母さん。


 口元。


 押さえる。


「湊」


「何」


「彼女?」


「違う!」


「…………」


「友達」


「…………」


 母さん。


 少し。


 笑う。


「そっか」


「何」


「ううん」


 また。


 それ。


「名前は?」


「黒瀬由香」


「黒瀬さんね」


「うん」


「どんな子?」


「…………」


 どんな子。


 明るい。


 優しい。


 人気者。


 ゲームが好き。


 負けず嫌い。


 数学が苦手。


 英語は得意。


 星が好き。


 猫も好き。


 そして。


 俺の。


 好きな人。


「……いい子」


 答える。


「…………」


 母さん。


 笑う。


「そう」


「何」


「湊がそう言うなら」


「うん」


「きっといい子なんでしょうね」


「…………」


 何も。


 言えない。


     ◇


 翌日。


 昼休み。


「ええええ!?」


 水瀬。


 声。


 大きい。


「水瀬、うるさい」


 玲司。


「だって!」


 俺。


 黒瀬。


 交互に見る。


「由香が朝倉君の家に!?」


「莉央!」


「二人で!?」


「勉強!」


「家で!?」


「だから勉強!」


「…………」


 陽斗。


 俺。


 見る。


「湊」


「何」


「お前の家?」


「そう」


「黒瀬が?」


「そう」


「…………」


 陽斗。


 玲司。


 見る。


「玲司」


「何」


「俺ら」


「うん」


「まだ湊の家行ったことないよな?」


「ない」


「…………」


 陽斗。


 机。


 突っ伏す。


「負けた……!」


「何の勝負」


「親友なのに!」


「…………」


 俺。


 少し。


 考える。


「来たいの?」


「行きたい!」


「じゃあ今度来れば」


「…………」


 陽斗。


 顔。


 上げる。


「いいの!?」


「別に」


「マジ!?」


「うん」


「玲司!」


「聞こえてる」


「今度三人でゲームしようぜ!」


「いいな」


「…………」


 そうか。


 友達。


 家に呼ぶ。


 黒瀬だけじゃなくて。


 いい。


 当たり前。


 なのに。


 今まで。


 考えなかった。


「じゃあ」


 俺。


「うん」


「予定決めよう」


「おう!」


 陽斗。


 笑う。


「楽しみ増えた!」


 小宮山。


 笑う。


「朝倉君」


「何」


「どんどん普通の高校生になってるね」


「前は何だったの」


「…………」


「琴葉?」


「えっと」


「言わなくていい」


「ふふ」


 六人。


 笑う。


     ◇


 放課後。


 黒瀬。


 隣。


「朝倉君」


「何」


「お母さん」


「うん」


「何か言ってた?」


「別に」


「本当?」


「うん」


「…………」


「黒瀬の名前は言った」


「…………!」


 黒瀬。


 止まる。


「え!?」


「何」


「名前!?」


「うん」


「…………」


「何」


「お母さんが」


「うん」


「私のこと知ってるんでしょ?」


「名前だけ」


「それでも!」


「…………」


 黒瀬。


 顔。


 赤い。


「何か緊張してきた」


「普通だよ」


「そういう問題じゃない!」


「じゃあ何」


「…………」


 黒瀬。


 俺を見る。


 少し。


 困った笑顔。


「好きな人のお母さんに会うみたいで」


「…………」


 止まる。


「…………」


 黒瀬も。


 止まる。


「……え?」


「ち、違う!」


 慌てる。


「違うっていうか!」


「…………」


「そういう感じで緊張するって意味!」


「…………」


「例え話!」


「…………」


「朝倉君!」


「……うん」


「今の忘れて!」


「…………」


 無理。


 絶対。


 無理。


「……分かった」


 それしか。


 言えない。


 黒瀬。


 真っ赤。


 歩く。


 俺も。


 隣。


 歩く。


 しばらく。


 無言。


     ◇


 駅。


 改札。


「じゃあまた明日」


 黒瀬。


「うん」


「…………」


「何」


「さっきの」


「…………」


「本当に忘れてね」


「…………」


 考える。


 忘れてほしい。


 そう。


 言われた。


 でも。


 今。


 俺。


 曖昧にしたくない。


「……無理かも」


「…………」


 黒瀬。


 目。


 丸くする。


「え?」


「嬉しかったから」


「…………」


「忘れられない」


 言った瞬間。


 心臓。


 速い。


 何言ってる。


 俺。


 でも。


 嘘じゃない。


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見つめる。


「……ずるい」


 小さく。


 言う。


「何が」


「最近の朝倉君」


「…………」


「本当にずるい」


 黒瀬。


 笑う。


 照れてる。


 でも。


 嬉しそう。


「じゃあね」


「うん」


「また明日」


「また明日」


 黒瀬。


 改札。


 通る。


 俺。


 見送る。


 夏。


 あと少し。


 でも。


 その前に。


 もっと。


 近づける。


 気がした。


     ◇


 夜。


 Yuu。


『朝倉君』


『何』


『家に行く日、楽しみにしてる』


『俺も』


『お母さんに会うの緊張する』


『普通だから大丈夫』


『朝倉君はそう言うけど!』


『何』


『…………』


『ちゃんとした服で行こうかな』


『学校帰りだろ』


『あ』


『制服』


『そうだった』


「…………」


 笑う。


『じゃあ髪だけ頑張る』


『何を』


『秘密!』


『分かった』


 少し。


 間。


『朝倉君』


『何』


『今日言ったこと』


「…………」


『忘れなくてもいいよ』


 画面。


 見る。


『いいの?』


『うん』


『私も』


 少し。


 間。


『朝倉君が嬉しかったって言ってくれたこと』


『忘れたくないから』


「…………」


 胸。


 温かい。


『分かった』


『うん!』


『おやすみ』


『おやすみ』


     ◇


 スマホ。


 置く。


 鞄。


 見る。


 六人。


 お揃いのキーホルダー。


 黒瀬と二人。


 お揃いの猫のストラップ。


 去年。


 もらった。


 ゲーム。


 キーホルダー。


 少しずつ。


 増える思い出。


 友達との。


 黒瀬との。


 そして。


 これから増える。


 まだ。


 知らない思い出。


「…………」


 家に。


 友達を呼ぶ。


 それだけ。


 なのに。


 今の俺には。


 大きい出来事。


 去年だったら。


 絶対なかった。


 黒瀬が来る。


 陽斗。


 玲司。


 来たがってる。


 いつか。


 六人が集まる。


 ことも。


 あるかもしれない。


 俺の世界。


 広がった。


 そして。


 その最初のきっかけ。


 くれた女の子。


 俺は。


 好き。


 夏に初めて。


 会ってから。


 一年。


 その時。


 ちゃんと伝える。


 友達としてじゃなく。


 好きな女の子として。


 黒瀬由香に。


 俺の気持ちを。


 ただ。


 その前にもう一つ。


 初めてが。


 待ってる。


 人生で初めて。


 好きな女の子。


 俺の家に来る。


 その意味。


 俺はまだ。


 少し甘く。


 考えていた。


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