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『クラスでほとんど誰とも話さない俺の、人生で初めてできた友達は――クラスで一番人気の女子だった。』  作者: 湊


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28/45

第28話 また、同じ教室で


 春休み。


 三日目。


『朝倉君』


『何』


『決めた?』


「…………」


 来た。


『何を』


『どこ行くか!』


『まだ』


『遅い!』


『黒瀬も考えるって言っただろ』


『考えたよ』


『どこ』


『水族館』


「…………」


 水族館。


『嫌?』


『嫌じゃない』


『じゃあ決まり!』


『早い』


『朝倉君に任せたら春休み終わる』


『そこまで遅くない』


『じゃあいつ行く?』


 予定。


 見る。


 バイト。


 ない日。


『27日』


『空いてる!』


『じゃあ27』


『うん!』


 少し。


 間。


『二人でね』


「…………」


 わざわざ。


 言う。


『分かってる』


『確認』


『何の』


『約束の』


「…………」


『朝倉君』


『何』


『楽しみ?』


 以前。


 なら。


 少し。


 迷った。


 今は。


『楽しみ』


 送る。


 すぐ。


『私も!』


「…………」


 スマホ。


 置く。


 水族館。


 二人。


 黒瀬。


 好きな。


 女の子。


 と。


 二人。


「…………」


 無理。


 意識。


 するな。


 という方が。


 無理。


     ◇


 三月二十七日。


 午前十時。


 駅。


「…………」


 十五分前。


 クリスマス。


 二十分前。


 少し。


 成長。


 した。


 何が。


 成長。


 なのか。


 分からない。


「朝倉君!」


 声。


 振り返る。


「おはよ」


 黒瀬。


「…………」


 春。


 薄い。


 コート。


 白っぽい。


 トップス。


 髪。


 少し。


 巻いてる。


「おはよう」


「…………」


「何」


「いや」


「また見てる」


「…………」


 最近。


 すぐ。


 バレる。


「今日」


「うん」


「いつもと髪違う?」


「…………」


 黒瀬。


 目。


 見開く。


「分かるの!?」


「少し」


「…………」


「何」


「朝倉君が」


「うん」


「そういうの気づくと思わなかった」


「失礼」


「だって前なら絶対気づいてない」


「…………」


 否定。


 できない。


「どう?」


「何が」


「…………」


 髪。


 触る。


「変じゃない?」


「変じゃない」


「それだけ?」


「…………」


 試されてる。


「似合ってる」


「…………」


 黒瀬。


 笑う。


「ありがとう」


「うん」


 好きだと。


 気づく前も。


 似たような。


 会話。


 した。


 でも。


 今は。


 その笑顔。


 一つで。


 心臓。


 うるさい。


     ◇


 電車。


 並んで。


 座る。


「春休みって短いよね」


 黒瀬。


「二週間くらい」


「すぐ三年生」


「うん」


「…………」


「何」


「クラス替え」


「ああ」


「気になる」


「俺も」


「ほんと?」


「うん」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 嬉しそう。


「六人一緒だったらすごいよね」


「確率低そう」


「現実言わないで」


「でも」


「うん」


「同じクラスじゃなくても」


 俺。


 言う。


「六人で遊べるだろ」


「…………」


「ゲームもできるし」


「うん」


「昼は」


「クラス違ったら無理かも」


「じゃあ放課後」


「…………」


「会えばいい」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「何」


「朝倉君」


「うん」


「変わったね」


「何が」


「昨年だったら」


 笑う。


「絶対そんなこと言わなかった」


「…………」


「クラス離れたら、そのまま離れそうだった」


「そうかも」


「今は?」


「…………」


 今。


 黒瀬と。


 離れる。


 嫌。


 四人とも。


 離れたくない。


「離れたくない」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 目。


 見開く。


「みんなと」


 付け足す。


「…………」


 また。


 逃げた。


「そっか」


 黒瀬。


 笑う。


「私も」


「うん」


 でも。


 ほんの少し。


 その笑顔が。


 寂しそうに。


 見えた。


     ◇


 水族館。


「うわ」


 黒瀬。


「何」


「見て!」


「見てる」


「クラゲ!」


「うん」


「綺麗!」


「うん」


「反応薄い!」


「綺麗だと思ってる」


「顔に出して」


「無理」


「笑って」


「もっと無理」


「クリスマスの写真は笑ってた」


「あれ黒瀬が勝手に撮った」


「今日も撮ろ」


「…………」


「嫌?」


「嫌じゃない」


「じゃあ後で!」


「うん」


 黒瀬。


 クラゲ。


 見る。


 青い。


 光。


 水槽。


 反射。


 横顔。


「…………」


 また。


 見てる。


 魚。


 見に。


 来た。


 はず。


 なのに。


「朝倉君」


「!」


「今」


「何」


「私見てた?」


「…………」


「見てない」


「絶対見てた」


「水槽」


「私、水槽の前にいるもんね?」


「そう」


「それ逃げてるだけじゃん」


「…………」


 黒瀬。


 笑う。


「変なの」


「何が」


「最近」


「うん」


「朝倉君、よく私見る」


「…………」


「前から?」


「…………」


 前から。


 見てた。


 多分。


 気づいて。


 なかっただけ。


「知らない」


「何それ」


「自分でも分からない」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 黙る。


「私は」


「うん」


「前から結構見てたよ」


「…………」


「何を」


「朝倉君」


「何で」


「…………」


「何」


「秘密」


「また?」


「うん」


 笑う。


「秘密」


 ずるい。


     ◇


「ペンギン!」


「黒瀬」


「何」


「テンション高い」


「可愛いじゃん!」


「まあ」


「ほら」


 黒瀬。


 ガラス。


 近づく。


「朝倉君も」


「見えてる」


「近くで!」


「子ども?」


「いいから!」


 袖。


 掴む。


 引く。


「…………」


 近い。


 肩。


 触れる。


「ほら!」


「うん」


「可愛いでしょ?」


「…………」


 ペンギン。


 見る。


「可愛い」


「でしょ!」


「うん」


 黒瀬。


 嬉しそう。


 笑う。


「…………」


 どっち。


 見て。


 言った。


 のか。


 自分でも。


 少し。


 分からない。


     ◇


 昼。


「朝倉君」


「何」


「これ」


 黒瀬。


 メニュー。


 指。


 差す。


『ペアランチ』


「…………」


「何」


「安い」


「確かに」


「二人分でこれ」


「うん」


「頼む?」


「いいけど」


「…………」


 店員。


 来る。


「ご注文お決まりですか?」


「これ」


 黒瀬。


「ペアランチ一つお願いします」


「かしこまりました」


 店員。


 俺。


 黒瀬。


 見る。


「…………」


 少し。


 笑った。


 気がする。


「…………」


「朝倉君」


「何」


「今」


「うん」


「店員さん」


「うん」


「私たちのこと」


「…………」


「何」


「いや」


 黒瀬。


 水。


 飲む。


「何でもない」


「言えよ」


「いい」


「気になる」


「…………」


 少し。


 赤い。


「カップルだと思ったかなって」


「…………」


 来た。


 前。


 だったら。


『違うだろ』


 そう。


 言った。


 でも。


 今。


「……どうだろ」


「…………」


「否定しないんだ」


「別に」


「…………」


「そう見えるなら」


 俺。


 水。


 飲む。


「そう見えるんじゃない」


「…………」


 黒瀬。


 黙る。


「何」


「いや」


 口元。


 少し。


 笑ってる。


「何で笑う」


「笑ってない」


「笑ってる」


「…………」


「嬉しそう」


「うるさい」


「何で」


「知らない!」


 何だ。


 これ。


     ◇


 午後。


 大水槽。


 ベンチ。


 二人。


 座る。


 目の前。


 魚。


 泳ぐ。


「…………」


「…………」


 静か。


 でも。


 嫌じゃない。


 黒瀬。


 隣。


 いる。


 それだけ。


「朝倉君」


「何」


「高校卒業したら」


「…………」


「どうなるんだろうね」


「急だな」


「水族館って」


「うん」


「考え事したくならない?」


「ならない」


「ならないんだ」


「黒瀬は?」


「ちょっと」


「…………」


「大学」


「うん」


「みんなバラバラになるかもしれないじゃん」


「そうだな」


「…………」


「寂しい?」


「寂しい」


 今度は。


 迷わない。


「…………」


「そっか」


「黒瀬は?」


「私も」


「うん」


「特に」


 止まる。


「…………」


「何」


「いや」


「言えよ」


「言わない」


「…………」


「朝倉君」


「何」


「大学」


「うん」


「県内になる?」


「多分」


「…………」


 家庭。


 金。


 その話。


 まだ。


 してない。


「前」


「うん」


「お金かかるからって言ってたよね」


「…………」


「聞かない方がいい?」


 黒瀬。


 ちゃんと。


 聞く。


 踏み込まない。


 俺。


 いつか。


 話す。


 約束。


 した。


「…………」


「親」


「うん」


「離婚してる」


「…………」


 初めて。


 言った。


「母親と二人」


「うん」


「だから」


 少し。


 息。


 吐く。


「大学も」


「うん」


「できるだけ金かからないところ」


「…………」


「バイトしてるのも」


 黒瀬。


 黙って。


 聞く。


「家がめちゃくちゃ貧乏とか」


「うん」


「そういうわけじゃないけど」


「うん」


「母親に」


「…………」


「これ以上負担かけたくない」


 言った。


 思ったより。


 普通に。


「だから部活も入らなかった」


「…………」


「金かかるし」


「うん」


「バイト」


「…………」


「してる」


 黒瀬。


 何も。


 言わない。


 しばらく。


 水槽。


 見る。


「…………」


「ごめん」


「何で謝るの」


「重い話」


「全然」


「…………」


「朝倉君」


「何」


「話してくれてありがとう」


「…………」


「前」


「うん」


「いつか話すって言ってたでしょ」


「覚えてた?」


「当たり前」


「…………」


 そう。


 黒瀬。


 覚えてる。


「そっか」


「うん」


「…………」


「だから」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「バイトの場所も秘密?」


「…………」


「それは」


「うん」


「秘密」


「まだ!?」


「学校にバレたら困る」


「私言わないよ!」


「知ってる」


「じゃあ教えて」


「嫌」


「何で!」


「いつか」


「…………」


「またいつか?」


「うん」


「分かった」


 黒瀬。


 笑う。


「待ってる」


「…………」


 また。


 その言葉。


     ◇


「朝倉君」


「何」


「写真!」


「忘れてなかったの」


「もちろん」


 大水槽。


 前。


 スマホ。


「ここ」


「うん」


「もっと寄って」


「入ってる」


「ギリギリ!」


「十分」


「もうちょっと」


 黒瀬。


 近づく。


 肩。


 触れる。


「…………」


「朝倉君」


「何」


「笑って」


「無理」


「じゃあ」


 黒瀬。


 考える。


「今日楽しかった?」


「楽しかった」


「…………」


 カシャ。


「またそれ?」


「笑った」


「ずる」


「クリスマスと同じ」


「成長ない」


「いいの」


 写真。


 見る。


「…………」


 俺。


 笑ってる。


 黒瀬。


 笑ってる。


 二人。


 肩。


 近い。


「送るね」


「うん」


 通知。


 来る。


「…………」


 保存。


 クリスマス。


 写真。


 その下。


 今日。


 水族館。


 写真。


 二枚。


「…………」


 増えた。


 黒瀬と。


 二人。


 写真。


 少しずつ。


     ◇


 夕方。


 帰り。


「楽しかった」


 黒瀬。


「うん」


「また来たい」


「水族館?」


「それも」


「?」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 笑う。


「二人でどっか」


「…………」


「行きたい」


「うん」


 今。


 好き。


 分かってる。


 だから。


 ちゃんと。


 答える。


「俺も」


「…………」


「また行きたい」


「ほんと?」


「うん」


「やった」


 笑う。


「じゃあ」


「うん」


「三年になっても」


「うん」


「二人で遊ぼうね」


「…………」


「もちろん」


 黒瀬。


 笑う。


「約束」


「約束」


     ◇


 春休み。


 終盤。


 グループ。


『放課後』


『クラス替え怖い!!!!』


 陽斗。


『まだ学校始まってない』


 玲司。


『でも気になる』


 小宮山。


『六人同じがいいな』


 水瀬。


『私も!』


 黒瀬。


 俺。


『俺も』


 送る。


 もう。


 恥ずかしくない。


 六人。


 同じ。


 クラス。


 なりたい。


 本当に。


     ◇


 四月。


 始業式。


 高校三年生。


「…………」


 昇降口。


 人。


 多い。


 掲示板。


 クラス。


 名簿。


「湊!」


 陽斗。


「おはよう」


「おはようじゃない!」


「何」


「クラス!」


「まだ見てない」


「俺も!」


「じゃあ見ろよ」


「一緒に見ようぜ!」


「何で」


「怖い!」


「女子か」


「偏見!」


「朝倉」


 玲司。


「おはよう」


「おはよう」


「見た?」


「まだ」


「俺も」


「お前も?」


「人多いから」


「…………」


 掲示板。


 近づく。


「三年一組……」


 陽斗。


「俺いない!」


「三年二組」


「…………」


 名前。


 探す。


 朝倉。


 あ。


『朝倉 湊』


「二組」


「俺も!」


 陽斗。


「…………」


「橘 陽斗」


「ほんとだ!」


「うるさい」


「玲司!」


「俺も二組」


「マジ!?」


 藤堂。


 ある。


 三人。


 同じ。


「男子三人!」


 陽斗。


「すごくない!?」


「女子」


「え?」


 俺。


 名簿。


 見る。


 何。


 してる。


 別に。


 誰が。


 同じでも。


「…………」


 違う。


 気になる。


 黒瀬。


 水瀬。


 小宮山。


 探す。


『黒瀬 由香』


「…………」


 あった。


 胸。


 緩む。


「黒瀬いる!」


 陽斗。


「うん」


「莉央!」


「…………」


『水瀬 莉央』


「いる」


「琴葉!」


『小宮山 琴葉』


「…………」


「いる」


 六人。


「…………」


「嘘だろ」


 陽斗。


 名簿。


 見る。


「全員?」


「全員」


 玲司。


「すごいな」


「…………」


 俺。


 もう一度。


 見る。


 朝倉。


 橘。


 藤堂。


 黒瀬。


 水瀬。


 小宮山。


 全員。


 三年二組。


「…………」


 よかった。


 その。


 言葉。


 最初に。


 出る。


「湊」


「何」


「嬉しそう」


「…………」


「顔」


 玲司。


「出てる」


「…………」


 否定。


 しようとして。


 やめる。


「嬉しい」


「…………」


 陽斗。


 固まる。


「何」


「いや」


「湊が!」


「うるさい」


「素直に!」


「嬉しいって!」


「だから何」


「成長!」


「朝からうるさい」


「朝倉君!」


 声。


 後ろ。


「…………」


 振り返る。


 黒瀬。


 水瀬。


 小宮山。


 三人。


「見た!?」


 黒瀬。


「見た」


「二組!」


「うん」


「六人全員!」


「うん」


「…………」


 黒瀬。


 笑う。


「よかった!」


「…………」


「うん」


 俺も。


 笑う。


「よかった」


     ◇


 教室。


 三年二組。


「席まで近かったら奇跡だな!」


 陽斗。


「そこまでいらない」


「ひどい!」


 座席。


 指定。


 俺。


 窓側。


 後ろから。


 三番目。


「…………」


 悪くない。


「朝倉君」


「何」


 黒瀬。


 斜め。


 前。


「近い」


「そうだな」


「…………」


 笑う。


「よろしくね」


「何が」


「三年」


「…………」


「今年一年」


「うん」


「よろしく」


「うん」


「よろしく」


 黒瀬。


 前。


 向く。


「…………」


 昨年。


 同じ。


 教室。


 黒瀬。


 いた。


 でも。


 遠かった。


 クラスで。


 一番。


 人気。


 女子。


 俺とは。


 関係。


 ない。


 そう。


 思ってた。


 今。


 斜め前。


 座ってる。


 人生で。


 初めて。


 できた。


 友達。


 そして。


 好きな人。


「…………」


 不思議だ。


     ◇


 昼休み。


「集合!」


 陽斗。


「何が」


「初日!」


「だから?」


「六人!」


「いつも通りじゃん」


 水瀬。


「それがいいんだよ!」


「珍しくいいこと言った」


 玲司。


「珍しく!?」


「ふふ」


 小宮山。


 机。


 寄せる。


 六人。


 座る。


「…………」


 昨年。


 この時間。


 俺。


 一人。


 弁当。


 食べてた。


 机。


 伏せて。


 寝たふり。


 してた。


 誰にも。


 話しかけられない。


 ように。


 今。


「朝倉君」


「何」


「卵焼き一個ちょうだい」


「嫌」


「何で!」


「黒瀬の何かと交換」


「じゃあ唐揚げ」


「いいよ」


「交渉成立」


「湊」


 陽斗。


「俺も」


「嫌」


「何で黒瀬だけ!?」


「交換するものないだろ」


「友情!」


「いらない」


「ひどい!」


 笑い。


 起きる。


 俺も。


 少し。


 笑う。


「…………」


 昨年。


 俺。


 友達。


 いらない。


 そう。


 思ってた。


 正確には。


 そう。


 思い込んでた。


 いない。


 こと。


 寂しい。


 認めたく。


 なかった。


 だけ。


 なのかもしれない。


「朝倉君」


「何」


「笑ってる」


「悪い?」


「ううん」


 黒瀬。


 笑う。


「いいと思う」


「…………」


「何」


「何でもない」


     ◇


 放課後。


 新しい。


 教室。


 窓。


 夕方。


「朝倉君」


「何」


「帰ろ」


「うん」


 鞄。


 持つ。


「湊!」


 陽斗。


「俺らも!」


「部活は?」


「あ」


「忘れてたの?」


「初日だから!」


「行け」


「冷たい!」


 玲司。


「俺も部活」


「じゃあな」


「また明日」


 水瀬。


 小宮山。


「私たちこっち寄って帰る」


「またね」


「うん」


「じゃあ」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「二人だね」


「…………」


「そうだな」


 教室。


 出る。


     ◇


 廊下。


「朝倉君」


「何」


「朝」


「うん」


「名簿見たとき」


「うん」


「嬉しかった?」


「…………」


「六人一緒」


「嬉しかった」


「即答」


「悪い?」


「ううん」


 笑う。


「私も」


「うん」


「…………」


 階段。


 降りる。


「でも」


「何」


「一番最初に」


 黒瀬。


 少し。


 間。


「誰の名前探した?」


「…………」


 心臓。


 跳ねる。


 誰。


 黒瀬。


 だった。


 最初に。


 黒瀬。


 探した。


「…………」


「朝倉君?」


「黒瀬」


「…………」


 止まる。


 黒瀬も。


 止まる。


「最初」


「うん」


「黒瀬の名前探した」


「…………」


 言った。


「何で?」


「…………」


 ここ。


 答え。


 好きだから。


 それが。


 本当。


 でも。


 まだ。


 言えない。


「同じクラスがいいって」


「…………」


「言ってたから」


「…………」


「それだけ?」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


 逃げる。


 な。


「それだけじゃない」


「…………」


「え」


 俺。


 息。


 吐く。


「黒瀬と」


「うん」


「同じクラスがよかったから」


「…………」


 好き。


 までは。


 言えない。


 でも。


 もう。


『みんなと』


 そう。


 逃げるのは。


 やめる。


「…………」


 黒瀬。


 俯く。


「……そっか」


「うん」


「…………」


「何」


「私も」


 顔。


 上げる。


「朝倉君の名前」


「…………」


「最初に探した」


「…………」


「何で」


 今度。


 俺。


 聞く。


 黒瀬。


 少し。


 笑う。


「同じ」


「…………」


「朝倉君と」


 目。


 合う。


「同じクラスがよかったから」


「…………」


 春。


 廊下。


 窓。


 風。


 入る。


 少し。


 暖かい。


「そっか」


「うん」


 それ以上。


 言えない。


 お互い。


 多分。


 まだ。


     ◇


 校門。


 出る。


 桜。


 少し。


 残ってる。


「三年生か」


 黒瀬。


「うん」


「最後の一年」


「そうだな」


「…………」


「朝倉君」


「何」


「今年」


「うん」


「いっぱい思い出作ろうね」


「…………」


 修学旅行。


 体育祭。


 文化祭。


 受験。


 卒業。


 まだ。


 たくさん。


 ある。


「六人で?」


 俺。


 聞く。


 黒瀬。


 笑う。


「六人でも」


「…………」


 少し。


 間。


「二人でも」


「…………」


 俺も。


 笑う。


「うん」


「いっぱい作ろう」


「約束ね」


「約束」


 昨年。


 春。


 俺は。


 誰とも。


 話さなかった。


 高校生活。


 なんて。


 ただ。


 三年間。


 過ぎれば。


 いい。


 そう。


 思ってた。


 今は。


 違う。


 最後の。


 一年。


 終わって。


 ほしくない。


 そう。


 思う。


 友達が。


 いるから。


 そして。


 好きな人が。


 いるから。


 俺たちの。


 高校生活。


 最後の一年が。


 始まった。


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― 新着の感想 ―
6人全員いっしょは奇跡だ(^^) 神様にお礼参りしなくちゃ 修学旅行、3年生で行くかな
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