第26話 誰にあげるの?
三学期。
始まって。
二週間。
「朝倉」
「はい」
「次」
「…………」
英語。
教科書。
読む。
「――That’s why I decided to――」
読む。
終わる。
「はい、次。黒瀬」
「はい」
黒瀬。
立つ。
読む。
「…………」
普通に。
上手い。
発音。
綺麗。
「…………」
何で。
俺。
聞いてる。
授業だから。
当たり前。
「朝倉」
「はい」
「どこ見てる」
「…………」
先生。
俺。
見る。
「教科書」
「なら次の文を訳せ」
「…………」
やば。
◇
「朝倉君」
休み時間。
黒瀬。
「何」
「怒られてたね」
「誰のせいだと思ってる」
「え?」
「…………」
言ってから。
気づく。
「私?」
「いや」
「何で私?」
「違う」
「絶対今私って言った」
「忘れろ」
「何で?」
「忘れろ」
「怪しい」
「…………」
黒瀬。
顔。
近づける。
「何見てたの?」
「教科書」
「先生に怒られてたじゃん」
「…………」
「朝倉君?」
「黒瀬」
「え?」
「…………」
「何?」
「いや」
「私見てたの?」
「…………」
沈黙。
正解。
言ってる。
ようなもの。
「…………」
黒瀬。
顔。
少し。
赤くなる。
「何で?」
「英語上手いなと思って」
「あ」
「それだけ」
「…………」
「何」
「それだけ?」
「それ以外何があるの」
「別に!」
黒瀬。
戻る。
「…………」
何だ。
◇
昼休み。
「もうすぐだな」
陽斗。
「何が」
玲司。
「バレンタイン!」
「まだ三週間くらいある」
「三週間しかない!」
「クリスマスも同じこと言ってたよね」
小宮山。
「イベントは準備期間から始まってる!」
「誰目線?」
水瀬。
「もらう側!」
「もらえる前提なんだ」
「莉央!」
「何」
「俺、何個もらえると思う?」
「知らない」
「予想して!」
「ゼロ」
「ひどい!」
「…………」
弁当。
食べる。
バレンタイン。
毎年。
関係ない。
中学。
ゼロ。
高校一年。
ゼロ。
昨年。
ゼロ。
母。
除く。
「玲司は?」
陽斗。
「何が」
「チョコ」
「知らない」
「絶対もらうだろ!」
「部活で何個かは」
「ほら!」
「義理だろ」
「義理でもチョコはチョコ!」
「陽斗君」
小宮山。
「私あげようか?」
「ほんと!?」
「うん」
「琴葉!」
「市販のでいい?」
「何でもいい!」
「よかったね」
水瀬。
「一個確定」
「莉央は!?」
「何で私まで」
「友達だろ!」
「考えとく」
「黒瀬は!?」
「え?」
箸。
止まる。
俺も。
なぜか。
止まる。
「由香、チョコ作る?」
水瀬。
「…………」
「まだ決めてない」
「昨年作ってたじゃん」
「昨年はみんなに」
「今年は?」
「…………」
黒瀬。
一瞬。
俺。
見る。
「…………」
目。
合う。
「……考え中」
「へえ」
水瀬。
笑う。
「何」
「別に?」
「その顔やめて」
「何もしてない」
「してる!」
「湊」
陽斗。
「何」
「黒瀬がくれるか気になる?」
「…………」
「何で俺」
「友達だから?」
「…………」
友達。
「別に」
「出た」
水瀬。
「何」
「久しぶりの『別に』」
「普通に別にだから」
「ふーん」
「…………」
黒瀬。
弁当。
食べてる。
誰に。
あげる。
「…………」
いや。
何で。
気にする。
◇
放課後。
「湊」
「何」
陽斗。
廊下。
「さっき」
「うん」
「気になってたろ」
「何が」
「黒瀬のチョコ」
「気になってない」
「即答」
「…………」
「別にいいけど」
「何が」
「俺さ」
陽斗。
少し。
真面目。
「前に聞いたじゃん」
「何を」
「黒瀬のこと好きなのって」
「…………」
「まだ分かんない?」
「…………」
分からない。
そう。
言おうとして。
止まる。
「……分からない」
「そっか」
「何」
「いや」
陽斗。
笑う。
「前より答えるの遅くなったな」
「…………」
「じゃあな!」
「おい」
逃げた。
◇
夜。
『今日』
Yuu。
『うん』
『陽斗君バレンタインうるさかったね笑』
『いつもだろ』
『確かに』
『朝倉君』
『何』
『チョコ欲しい?』
「…………」
急。
『甘いものは好き』
『そういう意味じゃなくて』
『何』
『バレンタインのチョコ』
「…………」
『もらったことない』
既読。
止まる。
『え!?』
『そんな驚く?』
『中学も?』
『ない』
『高校一年も?』
『ない』
『昨年は?』
『ない』
『…………』
『何』
『意外』
『何が』
『朝倉君普通に』
止まる。
『何』
『なんでもない』
『気になる』
『言わない』
『黒瀬』
『言わない!』
「…………」
何だ。
『じゃあ』
黒瀬。
『今年もらえたら嬉しい?』
「…………」
誰から。
聞こうとして。
止める。
『まあ』
『まあ?』
『嬉しいと思う』
『そっか』
「…………」
『黒瀬は』
『何』
『作るの?』
既読。
『まだ秘密』
『何で』
『バレンタインだから』
『意味分からない』
『当日まで秘密』
「…………」
『誰にあげるかも?』
送る。
「…………」
何。
聞いてる。
既読。
つく。
返事。
来ない。
「…………」
『黒瀬?』
『秘密』
それだけ。
「…………」
何で。
少し。
モヤモヤ。
する。
◇
翌日。
「黒瀬さん!」
昼休み前。
男子。
別の。
クラス。
「ん?」
黒瀬。
廊下。
呼ばれる。
「ちょっといい?」
「うん」
「…………」
俺。
席。
座ってる。
見る。
必要。
ない。
でも。
見える。
黒瀬。
廊下。
出る。
男子。
話す。
知らない。
誰。
「湊」
「何」
玲司。
「消しゴム」
「え?」
「落ちた」
「あ」
拾う。
「ありがとう」
「…………」
「何」
「いや」
玲司。
廊下。
見る。
俺。
見る。
「気になる?」
「何が」
「黒瀬」
「…………」
「別に」
「そう」
「何その反応」
「別に」
「真似するな」
数分。
黒瀬。
戻る。
男子。
いない。
「由香」
水瀬。
「何だった?」
「委員会のこと」
「ほんと?」
「ほんと!」
「告白?」
「違う!」
「バレンタイン近いから」
「関係ない!」
「…………」
告白。
「…………」
もし。
そうだったら。
黒瀬。
どうする。
「朝倉君」
「!」
黒瀬。
「何」
「どうしたの?」
「何が」
「こっち見てた」
「見てない」
「見てたよ」
「…………」
「何?」
「委員会?」
「うん」
「そう」
「…………」
「何」
黒瀬。
少し。
笑う。
「気になった?」
「…………」
「別に」
「…………」
黒瀬。
少し。
頬。
膨らませる。
「そっか」
「…………」
何で。
ちょっと。
不機嫌。
◇
昼。
「朝倉君」
小宮山。
「何」
「これ」
小さい。
チョコ。
「試作品」
「何の」
「バレンタイン」
「早くない?」
「お菓子作り慣れてないから」
「なるほど」
「食べてみて」
「ありがとう」
一口。
「どう?」
「美味しい」
「ほんと?」
「うん」
「よかった」
「琴葉!」
陽斗。
「俺は!?」
「あるよ」
「やった!」
「玲司君も」
「ありがとう」
「莉央と由香にも」
「ありがとー!」
「ありがとう」
全員。
同じ。
チョコ。
「…………」
普通。
友達。
こういう。
感じ。
「朝倉君」
黒瀬。
「何」
「美味しい?」
「うん」
「…………」
「何」
「別に」
「?」
黒瀬。
自分の。
チョコ。
食べる。
「……私も作ろうかな」
小声。
「え?」
「何でもない!」
「聞こえたけど」
「忘れて!」
「…………」
やっぱり。
作る。
誰に。
「…………」
また。
それ。
◇
数日後。
グループ。
『放課後』
『バレンタインまであと10日!』
陽斗。
『カウントダウンやめて』
水瀬。
『楽しみなんだよ!』
玲司。
『部活で毎年もらってるだろ』
『玲司は黙れ!』
『何で』
『格差を感じる!』
小宮山。
『陽斗君にもあげるから大丈夫』
『琴葉!!!!』
『結婚して』
『嫌』
『即答!?』
「…………」
笑う。
黒瀬。
個人。
通知。
『朝倉君』
『何』
『質問』
『うん』
『チョコ』
「…………」
『ミルクとビター』
『どっち好き?』
「…………」
これ。
聞く。
意味。
『ミルク』
『了解』
『何で』
『アンケート』
『誰の』
『秘密』
『怪しい』
『秘密です』
「…………」
期待。
するな。
ただ。
聞いただけ。
六人。
全員。
好み。
聞いてる。
かもしれない。
陽斗。
玲司。
他の。
友達。
「…………」
でも。
少し。
嬉しい。
◇
二月十三日。
前日。
教室。
「明日!」
陽斗。
「うるさい」
「玲司!」
「何」
「勝負!」
「何を」
「チョコの数!」
「嫌」
「何で!」
「興味ない」
「余裕あるやつの発言!」
「面倒なだけ」
「湊!」
「やらない」
「まだ言ってない!」
「分かる」
「何でみんな冷たい!?」
「陽斗君」
水瀬。
「何」
「明日ゼロでも私が一個あげるから」
「莉央!」
「市販ね」
「何でもいい!」
「安いのでいい?」
「チョコなら!」
「ハードル低い」
俺。
笑う。
「朝倉君」
黒瀬。
「何」
「明日」
「うん」
「学校来るよね?」
「…………」
「平日だから来る」
「そうだけど!」
「何」
「休まない?」
「何で休むの」
「体調とか」
「今は元気」
「ならいい」
「…………」
何だ。
「黒瀬」
「何?」
「明日何かある?」
「…………」
止まる。
「別に?」
「…………」
「何」
「黒瀬もそれ言うんだ」
「朝倉君のが移った」
「…………」
笑う。
でも。
黒瀬。
どこか。
落ち着かない。
◇
その夜。
九時。
ログイン。
「…………」
Yuu。
いない。
珍しい。
十分。
二十分。
『今日やらない?』
送る。
返事。
五分。
『ごめん!』
『今日は無理!』
『何かある?』
『ある』
『何』
『秘密』
「…………」
秘密。
多い。
『明日分かる』
「…………」
心臓。
少し。
速くなる。
『そう』
『朝倉君』
『何』
『明日』
止まる。
『放課後』
『すぐ帰らないでね』
「…………」
『何で』
『いいから』
『バイト』
『何時から!?』
『明日はない』
『よかった』
「…………」
『じゃあ』
『絶対残ってて』
『分かった』
『約束』
『うん』
「…………」
スマホ。
置く。
もう。
ほぼ。
分かる。
明日。
黒瀬。
チョコ。
くれる。
多分。
「…………」
でも。
どんな。
チョコ。
義理。
友達。
みんなと。
同じ。
俺だけ。
違う。
「…………」
何を。
期待。
してる。
俺。
◇
二月十四日。
朝。
教室。
「湊!」
「何」
「ゼロ!」
「まだ朝」
「現在ゼロ!」
「知らない」
「お前は!?」
「ゼロ」
「仲間!」
「嬉しくない」
「玲司!」
「二個」
「…………」
「朝から!?」
「部活の後輩」
「敵!」
「何で」
いつも通り。
でも。
俺。
入口。
何度も。
見る。
「…………」
まだ。
来ない。
「湊」
「何」
「誰か待ってる?」
「待ってない」
「…………」
陽斗。
にや。
「何」
「いや?」
「その顔やめろ」
扉。
開く。
「おはよー!」
水瀬。
小宮山。
黒瀬。
「…………」
来た。
黒瀬。
大きめ。
鞄。
「おはよう」
小宮山。
「おはよ」
水瀬。
「おはよう」
黒瀬。
「おはよう」
俺。
目。
合う。
「…………」
黒瀬。
少し。
笑う。
でも。
何も。
言わない。
「…………」
朝。
なし。
◇
昼休み。
「はい」
水瀬。
陽斗。
「チョコ」
「莉央ぉぉぉ!」
「うるさい」
「ありがとう!」
「百円くらい」
「値段言うな!」
「玲司君も」
「ありがとう」
「朝倉君」
「俺も?」
「友チョコ」
「ありがとう」
市販。
小さい。
チョコ。
「琴葉からも」
「ありがとう」
小宮山。
同じ。
陽斗。
玲司。
俺。
女子。
三人。
交換。
「由香は?」
水瀬。
「え?」
「ないの?」
「…………」
「あとで」
「へえ」
水瀬。
俺。
見る。
「何」
「何も?」
「…………」
黒瀬。
俺に。
まだ。
くれない。
あとで。
誰に。
◇
放課後。
陽斗。
「湊! 結果!」
「二個」
「俺も二個!」
「よかったな」
「義理でも勝ち!」
「何と戦ってるの」
「玲司!」
「七個」
「…………」
「帰る!」
「お疲れ」
「陽斗君」
小宮山。
「部活は?」
「行く!」
走る。
「元気だな」
玲司。
「じゃあ俺も行く」
「うん」
「また明日」
「また」
水瀬。
小宮山。
「由香」
「うん」
「私たち先行くね」
「…………」
黒瀬。
「え」
「じゃあね」
「ちょ、莉央!」
「頑張って」
小声。
でも。
聞こえた。
「莉央!」
「また明日ー!」
二人。
出る。
教室。
人。
減る。
俺。
黒瀬。
「…………」
「…………」
「黒瀬」
「待って!」
「何」
「心の準備」
「何の」
「いいから!」
「…………」
鞄。
探す。
紙袋。
出す。
小さい。
箱。
包み。
「…………」
「朝倉君」
「うん」
「これ」
差し出す。
「…………」
「バレンタイン」
「うん」
「チョコ」
「見れば分かる」
「そうだけど!」
「…………」
受け取る。
「ありがとう」
「…………」
「何」
「それだけ?」
「え?」
「いや!」
黒瀬。
顔。
赤い。
「それでいい!」
「何なんだ」
「…………」
箱。
見る。
水瀬。
小宮山。
もらった。
市販。
違う。
ラッピング。
されてる。
「黒瀬」
「何」
「これ」
「うん」
「作った?」
「…………」
「うん」
やっぱり。
「昨日?」
「うん」
「だからゲームいなかった?」
「…………」
「うん」
「…………」
俺の。
ため。
チョコ。
作った。
「…………」
「朝倉君」
「何」
「重く考えないでね」
「え?」
「その」
黒瀬。
視線。
落とす。
「友達だから」
「…………」
来た。
その言葉。
「最初の友達だし」
「うん」
「いつもゲームしてるし」
「うん」
「クリスマスもプレゼントもらったし」
「うん」
「だから」
少し。
早口。
「友達として!」
「…………」
「特別に作っただけだから」
「…………」
特別。
「黒瀬」
「何?」
「今」
「うん」
「特別って」
「…………」
固まる。
「違う!」
「何が」
「そういう意味じゃなくて!」
「どういう意味」
「だから!」
黒瀬。
顔。
真っ赤。
「他のみんなとはちょっと違う友達っていうか!」
「…………」
「一番最初の友達だから!」
「…………」
「そういう特別!」
「…………」
俺。
何も。
言えない。
だって。
同じ。
だった。
俺も。
黒瀬を。
他の四人と。
同じ。
だと。
思えない。
でも。
それを。
友達の中で。
特別。
そう。
呼んでいた。
「…………」
「朝倉君?」
「うん」
「何か言って」
「嬉しい」
「…………」
「普通に」
「…………」
「かなり」
「…………」
黒瀬。
目。
少し。
見開く。
「ほんと?」
「うん」
「よかった」
笑う。
「…………」
その顔。
見たら。
胸。
苦しい。
嬉しい。
のに。
苦しい。
「黒瀬」
「何?」
「俺も」
「うん」
「黒瀬は」
「…………」
言う。
友達。
特別な。
友達。
それで。
いい。
はず。
「……特別だと思う」
「…………」
黒瀬。
止まる。
「友達の中で」
「…………」
逃げた。
自分で。
分かった。
「……そっか」
黒瀬。
笑う。
「私も」
「うん」
「同じ」
「…………」
嬉しい。
はず。
なのに。
また。
何か。
足りない。
◇
帰り。
「じゃあ」
黒瀬。
「また夜」
「うん」
「チョコ」
「何」
「家で食べて」
「分かった」
「感想送って」
「うん」
「絶対」
「分かった」
「…………」
「何」
「朝倉君」
「うん」
「今日」
「うん」
「渡せてよかった」
「…………」
「朝からずっと緊張してた」
「何で」
「…………」
「知らない!」
「何それ」
「じゃあね!」
「おい」
走る。
黒瀬。
駅。
向こう。
「…………」
緊張。
俺に。
チョコ。
渡すだけ。
なのに。
何で。
「…………」
考える。
でも。
答え。
怖い。
◇
家。
部屋。
箱。
開ける。
「…………」
チョコ。
小さい。
生チョコ。
形。
少し。
不揃い。
「…………」
一つ。
食べる。
甘い。
ミルク。
「…………」
『ミルクとビター、どっち好き?』
思い出す。
「…………」
俺に。
聞いた。
俺の。
好み。
覚えて。
作った。
「…………」
もう一つ。
食べる。
普通に。
美味しい。
スマホ。
『食べた』
送る。
既読。
一秒。
『どう!?』
『美味しい』
『ほんと!?』
『うん』
『よかったあああ』
『そんな心配だった?』
『初めて作ったから』
「…………」
『初めて?』
『うん』
『昨年は?』
『市販のお菓子詰めただけ』
「…………」
初めて。
作った。
チョコ。
俺。
もらった。
『朝倉君』
『何』
『全部食べてね』
『食べる』
『やった』
「…………」
『黒瀬』
『何?』
『ありがとう』
少し。
間。
『うん』
『どういたしまして』
また。
少し。
『友達だからね』
「…………」
友達。
だから。
今まで。
何度。
聞いた。
だろう。
最初は。
嬉しかった。
黒瀬が。
俺を。
友達。
そう。
呼ぶ。
それだけで。
嬉しかった。
人生で。
初めて。
できた。
友達。
だったから。
でも。
今。
『友達だからね』
その文字。
見る。
胸。
少し。
痛い。
「…………」
何で。
分かってる。
気がする。
もう。
分からない。
ふり。
してるだけ。
じゃないのか。
◇
ベッド。
横。
チョコ。
箱。
置く。
黒瀬。
俺の。
好み。
聞いた。
ゲーム。
休んで。
作った。
朝から。
緊張。
してた。
二人。
残って。
渡した。
『特別に作った』
「…………」
でも。
『友達だから』
「…………」
もし。
黒瀬が。
他の男に。
同じ。
チョコ。
渡してたら。
「…………」
嫌。
即答。
もし。
黒瀬が。
誰かに。
告白。
されたら。
嫌。
もし。
付き合ったら。
もっと。
嫌。
もし。
黒瀬が。
俺じゃない。
誰かを。
好きになったら。
「…………」
嫌だ。
胸。
苦しくなる。
そこまで。
考えて。
もう。
逃げられなくなる。
友達。
だから。
じゃない。
黒瀬が。
俺に。
笑うと。
嬉しい。
黒瀬から。
連絡。
来ると。
嬉しい。
黒瀬に。
会える日。
楽しみ。
黒瀬と。
二人で。
出かけたい。
黒瀬が。
他の男と。
近くなるのは。
嫌。
黒瀬の。
特別で。
いたい。
「…………」
これ。
もう。
答え。
一つ。
しか。
ないんじゃ。
ないか。
「…………」
でも。
言葉に。
する。
直前。
スマホ。
鳴る。
Yuu。
『朝倉君』
『何』
『来年も』
『うん』
『チョコあげてもいい?』
「…………」
来年。
その言葉。
胸。
温かくなる。
『いいよ』
『やった』
『じゃあ来年はもっと上手く作る』
『今年も美味しい』
『そういうこと言う』
『何が』
『ずるい』
「…………」
『黒瀬』
『何?』
指。
動く。
『俺』
止まる。
「…………」
何を。
送る。
好き。
その。
二文字。
たった。
それだけ。
なのに。
送れない。
今。
言ったら。
全部。
変わる。
もし。
黒瀬が。
俺を。
本当に。
友達としてしか。
見てなかったら。
ゲーム。
毎日。
できる?
学校。
普通に。
話せる?
二人で。
出かけられる?
今まで。
みたいに。
いられる?
「…………」
『俺』
消す。
『来年も楽しみにしてる』
送る。
既読。
『うん!』
『約束ね』
『うん』
「…………」
逃げた。
また。
でも。
今までとは。
違う。
答えが。
分からないから。
逃げたんじゃない。
答えを。
知ってしまったから。
怖くなった。
◇
翌朝。
教室。
「おはよう」
玲司。
「おはよう」
「湊!」
陽斗。
「何」
「昨日!」
「うん」
「黒瀬からもらった!?」
「…………」
「何で知ってる」
「莉央」
「水瀬……」
「で!?」
「もらった」
「手作り!?」
「…………」
「顔」
「何」
「答え出てる」
「うるさい」
「手作りか!」
「声でかい」
「湊!」
「何」
「よかったな!」
「…………」
「うん」
「…………」
陽斗。
止まる。
「何」
「いや」
笑う。
「そっか」
「何」
「何でもない」
扉。
開く。
「おはよー!」
水瀬。
小宮山。
黒瀬。
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
目。
合う。
昨日まで。
何度も。
してきた。
それだけ。
なのに。
「…………」
心臓。
速い。
「おはよう、朝倉君」
「…………」
「朝倉君?」
「おはよう」
「うん」
笑う。
「…………」
ああ。
多分。
もう。
無理だ。
友達として。
好き。
それだけ。
じゃない。
俺は。
黒瀬由香が。
好きなんだ。
人生で。
初めて。
できた。
友達を。
俺は。
いつの間にか。
一人の女の子として。
好きになっていた。
そして。
それを。
自覚してしまった瞬間。
いつもと同じはずの。
黒瀬の笑顔が。
今までより。
ずっと。
眩しく見えた。




