第22話 クリスマスは、友達と
十二月。
寒い。
「…………」
以上。
冬に対する感想。
「湊」
「何」
「お前死にそうだぞ」
「寒い」
「十二月だからな!」
「知ってる」
「元気出せ!」
「無理」
朝。
教室。
暖房。
ついている。
でも。
寒い。
「朝倉君」
「何」
小宮山。
「カイロいる?」
「え」
「余ってる」
「…………」
差し出される。
「ありがとう」
「うん」
「琴葉優しい!」
陽斗。
「俺にも!」
「もうない」
「そんな!」
「朝倉君」
水瀬。
「何」
「カイロ持ってないの?」
「忘れた」
「由香いっぱい持ってるよ」
「莉央!」
黒瀬。
鞄。
抱える。
「何個持ってるの」
俺。
「…………」
「黒瀬?」
「三個」
「何で」
「寒いから!」
「一個でよくない?」
「朝倉君には分からないの!」
「そう」
「…………」
黒瀬。
俺を見る。
「……いる?」
「小宮山にもらった」
「…………」
「あ」
「そう」
「何」
「別に」
「?」
何だ。
◇
昼休み。
「もうすぐクリスマス!」
陽斗。
「まだ三週間ある」
玲司。
「三週間しかない!」
「何かあるの?」
小宮山。
「ない!」
「じゃあ何でテンション高いの」
水瀬。
「クリスマスだから!」
「意味分からない」
俺。
「湊!」
「何」
「クリスマスだぞ!」
「知ってる」
「予定は!?」
「バイ…用事」
「…………」
陽斗。
固まる。
「終わり」
「何が」
「青春」
「何で」
「高校二年のクリスマスだぞ!?」
「だから?」
「バイト!?」
「多分…てか、声でかい!」
「悲しすぎる!」
「働いてる人全員に謝れ」
「そういう意味じゃない!」
「朝倉君」
水瀬。
「何」
「クリスマスイブは?」
「二十四?」
「そう」
「分からない」
「バイト?」
「シフトまだ」
「ふーん」
水瀬。
次。
黒瀬。
見る。
「由香は?」
「え?」
「クリスマス」
「…………」
「何」
「特にないけど」
「ほんと?」
「ほんと!」
「家族?」
「多分」
「彼氏?」
「いない!」
「知ってる」
「じゃあ聞かないで!」
黒瀬。
顔。
少し。
赤い。
「琴葉は?」
「家族かな」
「玲司」
「部活」
「陽斗」
「何もない!」
「聞く必要なかった」
「莉央ひどくない!?」
「私は友達と遊ぶかも」
「俺も入れて!」
「嫌」
「即答!?」
「…………」
六人。
いつも通り。
くだらない話。
でも。
「…………」
クリスマス。
黒瀬。
予定。
ない。
「…………」
何で。
俺。
それを。
覚えてる。
◇
放課後。
「朝倉君」
「何」
黒瀬。
「今日バイト?」
「ない」
「じゃあ」
「ゲーム?」
「…………」
「違うの?」
「ゲームもするけど」
「うん」
「ちょっと」
黒瀬。
鞄。
持つ。
「駅まで一緒に帰らない?」
「いいけど」
「…………」
「何」
「いや」
笑う。
「最近、即答してくれるなって」
「嫌なら断る」
「じゃあ嫌じゃない?」
「うん」
「…………」
「何」
「何でもない」
また。
嬉しそう。
◇
駅。
向かう。
十二月。
夕方。
もう。
暗い。
「寒っ」
黒瀬。
「カイロ三個あるだろ」
「もう冷たい」
「早くない?」
「朝から使ってるから」
「そりゃそうだろ」
「朝倉君の」
「何」
「まだ温かい?」
「多分」
「…………」
俺。
ポケット。
手。
入れる。
カイロ。
取り出す。
「いる?」
「え」
「寒いんだろ」
「…………」
「黒瀬?」
「いいの?」
「家帰るだけだし」
「…………」
「ありがとう」
渡す。
黒瀬。
両手。
包む。
「あったか」
「小宮山のだけど」
「そこ言わなくていい」
「何で」
「何となく!」
「?」
歩く。
街。
クリスマス。
装飾。
店。
赤。
緑。
光。
「ねえ」
黒瀬。
「何」
「クリスマス」
「うん」
「本当にバイト?」
「まだ分からない」
「そっか」
「何」
「いや」
少し。
間。
「もし」
「うん」
「バイトなかったら」
「…………」
黒瀬。
前。
見る。
「何かする?」
「何かって?」
「ゲームとか」
「いつもしてる」
「そうだけど」
「…………」
「じゃあ」
黒瀬。
俺を見る。
「どっか行く?」
「…………」
クリスマス。
二人。
出かける。
「…………」
『デートじゃない?』
水瀬。
頭。
出てくる。
「朝倉君?」
「何」
「嫌?」
「嫌じゃない」
「じゃあ」
「でも」
「何?」
「クリスマスに二人で出かけたら」
「…………」
言うか。
迷う。
「水瀬に」
「莉央?」
「デートって言われそう」
「…………」
黒瀬。
止まる。
「…………」
俺も。
止まる。
「何」
「朝倉君」
「うん」
「それ」
「何」
「気にしてるの?」
「何を」
「デートって言われること」
「…………」
「最近」
黒瀬。
少し。
笑う。
「前は全然気にしてなかったじゃん」
「そう?」
「うん」
「…………」
確かに。
「何で?」
「知らない」
「…………」
「黒瀬は?」
「え?」
「気にしないの?」
「…………」
黒瀬。
黙る。
「…………」
「…………」
何で。
聞いた。
「……私は」
「うん」
「別に」
「そう」
「…………」
「…………」
「友達だし」
「…………」
その言葉。
また。
少し。
引っかかる。
「そうだな」
「うん」
「友達だし」
「…………」
俺が。
言う。
黒瀬。
少し。
笑う。
でも。
なぜか。
いつもの笑顔と。
少し。
違って見えた。
◇
夜。
『今日やる?』
Yuu。
『やる』
『二人?』
『うん』
『了解!』
ログイン。
招待。
参加。
マッチング。
『朝倉君』
『何』
『さっきの話』
『何』
『クリスマス』
『うん』
『本当に行く?』
『バイトなかったら』
『…………』
『何』
『やった』
「…………」
『そんな行きたい?』
『行きたい』
即答。
「…………」
『どこ』
『まだ考えてない』
『じゃあ考えといて』
『朝倉君も考えて!』
『何でもいい』
『禁止』
『まだ禁止なの』
『一生禁止』
『厳しい』
ゲーム。
始まる。
降下。
『じゃあ』
黒瀬。
『朝倉君』
『何』
『クリスマスにしたいこと』
『…………』
『何かない?』
クリスマス。
したいこと。
特に。
ない。
毎年。
家。
バイト。
ゲーム。
それくらい。
『ケーキ』
『食べたいの?』
『普通』
『じゃあ食べよ!』
『決定?』
『決定』
『早い』
『あと』
『何』
『プレゼント』
「…………」
『交換する?』
『何で』
『クリスマスだから』
『…………』
『嫌?』
『嫌じゃない』
『じゃあ決まり!』
『いくら』
『現実的』
『大事だろ』
『じゃあ3000円まで』
『分かった』
『ゲーム用品禁止ね』
『何で』
『またゲームショップになるから』
『…………』
『朝倉君』
『うん』
『ゲーム以外の私が欲しいもの考えて』
「…………」
『難易度高い』
『友達でしょ?』
「…………」
また。
友達。
『友達なら分かるはず!』
『無茶言うな』
『頑張って』
「…………」
プレゼント。
黒瀬。
何が。
欲しい。
甘いもの。
猫。
音楽。
ゲーム。
でも。
ゲーム用品禁止。
「…………」
知らない。
いや。
結構。
知ってる。
はず。
なのに。
何を。
渡せば。
喜ぶ。
『朝倉君?』
『何』
『考えてる?』
『今から』
『早い笑』
『黒瀬も考えろ』
『もう考えてる』
「…………」
『早くない?』
『秘密』
『そう』
『楽しみにしてて』
「…………」
楽しみ。
か。
『うん』
送る。
それだけで。
十二月二十四日が。
少し。
遠く感じた。
◇
翌日。
「おはよう」
玲司。
「おはよう」
「湊」
陽斗。
「何」
「昨日何してた?」
「ゲーム」
「黒瀬と?」
「うん」
「…………」
「何」
「普通に言うようになったな」
「もう知ってるだろ」
「そうだけど」
陽斗。
少し。
笑う。
「何」
「いや」
「何」
「お前ら本当に仲いいよな」
「友達だから」
「…………」
「何」
「それ」
「うん」
「最近よく聞く」
「そう?」
「うん」
「…………」
黒瀬も。
俺も。
よく。
言う。
「おはよー!」
水瀬。
黒瀬。
小宮山。
「おはよう」
「おはよ」
黒瀬。
俺。
見る。
少し。
笑う。
「おはよう、朝倉君」
「おはよう」
「…………」
水瀬。
「何」
俺。
「いや?」
「朝からその顔やめろ」
「まだ何もしてないけど」
「これからする顔」
「失礼」
◇
昼休み。
「クリスマス!」
陽斗。
「また?」
玲司。
「予定決まった人!」
「何で報告するの」
小宮山。
「気になる!」
「陽斗君は?」
黒瀬。
「ない!」
「じゃあ聞かなくていいじゃん」
水瀬。
「湊!」
「何」
「バイト決まった?」
「まだ」
「黒瀬は?」
「…………」
「何」
水瀬。
「何かある?」
「…………」
黒瀬。
俺。
見る。
「…………」
何で。
俺を見る。
「由香?」
「まだ分かんない」
「ふーん」
「何」
「別に?」
「…………」
絶対。
気づく。
水瀬なら。
クリスマス。
二人。
出かける。
言ったら。
絶対。
「…………」
俺。
黙る。
「朝倉君」
水瀬。
「何」
「何で黙ったの?」
「飯食ってるから」
「さっきまで喋ってたじゃん」
「…………」
「怪しい」
「何が」
「二人とも」
「何で!」
黒瀬。
「ほら」
「何がほらなの!」
「…………」
小宮山。
少し。
笑っている。
玲司も。
こっち。
見る。
陽斗だけ。
「え?」
分かってない。
「何?」
「橘はそのままでいて」
水瀬。
「何で!?」
◇
数日後。
バイト。
シフト。
貼られる。
「…………」
二十四日。
休み。
二十五日。
夕方。
「朝倉君」
店長。
「はい」
「二十四日休みで大丈夫だった?」
「はい」
「珍しいね」
「何がですか」
「去年はクリスマス入ってくれたから」
「…………」
「予定?」
「…………」
黒瀬。
浮かぶ。
「……まあ」
「お」
「何ですか」
「いや」
店長。
笑う。
「楽しんできな」
「違います」
「まだ何も言ってないけど」
「…………」
最近。
これ。
多い。
◇
店。
出る。
スマホ。
開く。
Yuu。
『シフト出た』
送る。
既読。
早い。
『どうだった!?』
『24休み』
数秒。
『やった!!!!』
「…………」
びっくりマーク。
四つ。
『そんな?』
『そんな!』
『じゃあ』
『うん』
『24日』
『空けといてね』
「…………」
『分かった』
『絶対だよ』
『分かったって』
『約束』
『うん』
約束。
クリスマスイブ。
黒瀬と。
二人。
「…………」
改めて。
考えると。
やっぱり。
少し。
変な感じ。
◇
翌日。
「朝倉君」
「何」
朝。
黒瀬。
俺の席。
「二十四日」
「…………」
「学校で言うなよ」
「何で?」
「水瀬」
「あ」
二人。
水瀬。
見る。
「…………」
向こう。
こっち。
見てる。
「由香」
「何!?」
「何話してるの?」
「何でもない!」
「二十四日って聞こえたけど」
「…………」
聞こえてる。
「クリスマスイブ?」
「違う!」
「何が違うの?」
「…………」
「朝倉君」
水瀬。
「何」
「二十四日」
「うん」
「何かある?」
「…………」
嘘。
つく。
必要。
ある?
「黒瀬と出かける」
「朝倉君!?」
「…………」
教室。
一瞬。
俺たちの周り。
静か。
「…………」
水瀬。
「え?」
「二十四日」
「うん」
「クリスマスイブ」
「うん」
「二人で?」
「うん」
「…………」
黒瀬。
机。
顔。
伏せる。
「何で隠すの」
俺。
「朝倉君のせい!」
「何が」
「普通に言う!?」
「聞かれたから」
「そうだけど!」
水瀬。
俺。
黒瀬。
交互。
見る。
「…………」
「何」
「いや」
笑う。
「ついに?」
「何が」
「デート?」
「違う」
「即答!」
「友達だから」
「…………」
「由香?」
「…………」
黒瀬。
顔。
上げる。
「……友達だから」
「…………」
水瀬。
少し。
黙る。
「そっか」
「何」
「ううん」
今度は。
からかわない。
「楽しんできな」
「…………」
黒瀬。
「うん」
「…………」
何だ。
いつもなら。
もっと。
言うのに。
◇
昼。
「湊」
陽斗。
「何」
「二十四日黒瀬と遊ぶの?」
「うん」
「俺」
「うん」
「予定ない」
「そう」
「…………」
「何」
「誘って?」
「嫌」
「何で!?」
「二人で約束したから」
「…………」
陽斗。
止まる。
玲司。
止まる。
俺も。
「…………」
何か。
変なこと。
言った?
「湊」
玲司。
「何」
「それ」
「うん」
「本人の前で言うなよ」
「何で」
「…………」
黒瀬。
顔。
赤い。
「朝倉君!」
「何」
「もう!」
「何で怒られるの」
「知らない!」
水瀬。
笑う。
「由香」
「何!」
「よかったね」
「莉央!」
◇
放課後。
黒瀬。
俺。
駅。
「朝倉君」
「何」
「陽斗君」
「うん」
「誘わなくてよかったの?」
「何で」
「みんなで行く方が」
「黒瀬」
「何?」
「二人で行きたいって言っただろ」
「…………」
「約束したし」
「…………」
「何」
「いや」
黒瀬。
マフラー。
少し。
上げる。
口元。
隠す。
「何」
「何でもない」
「寒い?」
「うん」
「カイロいる?」
「今日はある」
「そう」
「…………」
「朝倉君」
「何」
「楽しみ」
「うん」
「朝倉君も?」
「楽しみだよ」
「…………」
また。
マフラー。
上がる。
「黒瀬?」
「寒い!」
「そう」
俺も。
前。
向く。
十二月。
冬。
寒い。
なのに。
なぜか。
さっきから。
少し。
暑かった。
◇
そして。
十二月二十三日。
夜。
『明日』
Yuu。
『うん』
『13時』
『駅』
『分かってる』
『遅刻禁止』
『黒瀬がな』
『しない!』
『前30分前にいたしな』
『あれは買い物してたの!』
『はいはい』
『あと』
『何』
『プレゼント』
「…………」
『買った?』
『買った』
『ほんと!?』
『うん』
『何!?』
『言うわけない』
『ヒント!』
『嫌』
『ケチ!』
『明日分かる』
『…………』
『何』
『楽しみ』
「…………」
『黒瀬は?』
『買ったよ』
『何』
『言うわけない』
『真似するな』
『明日分かる』
『…………』
『楽しみにしてて』
「…………」
プレゼント。
机。
上。
紙袋。
俺が。
選んだ。
ゲーム用品じゃない。
黒瀬への。
クリスマスプレゼント。
買うとき。
かなり。
悩んだ。
似合うか。
使うか。
喜ぶか。
何度も。
考えた。
他の誰かへの。
プレゼントで。
こんなに。
悩んだこと。
ない。
「…………」
何で。
そこまで。
考えたんだろう。
スマホ。
『朝倉君』
『何』
『明日』
『うん』
『いっぱい楽しもうね』
「…………」
『うん』
送る。
十二月二十四日。
クリスマスイブ。
黒瀬と。
二人で。
出かける。
友達と。
遊ぶだけ。
そう。
思っている。
はずなのに。
その夜。
俺は。
なかなか。
眠れなかった。




