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『クラスでほとんど誰とも話さない俺の、人生で初めてできた友達は――クラスで一番人気の女子だった。』  作者: 湊


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21/45

第21話 二人で出かける、それだけ…



 月曜日。


 朝。


 教室。


「…………」


 黒瀬。


 まだ。


 来ていない。


「…………」


 時計。


 八時十五分。


「湊」


「何」


「何見てんの?」


「時計」


 陽斗。


「何で?」


「別に」


「ふーん」


「何」


「いや?」


「その顔やめろ」


「何もしてないけど?」


 最近。


 水瀬と。


 似てきた。


「おはよー!」


 教室。


 声。


 水瀬。


 小宮山。


 その後ろ。


 黒瀬。


「…………」


 来た。


「おはよう」


 小宮山。


「おはよ」


 水瀬。


「おはよう」


 黒瀬。


「おはよう」


 俺。


「…………」


 黒瀬。


 俺を見る。


「何」


「いや」


「何」


「ちゃんといた」


「学校だから」


「そうだけど」


「?」


「何でもない」


 席。


 向かう。


「…………」


 何だ。


「朝倉君」


 水瀬。


「何」


「今」


「うん」


「由香来るまで待ってた?」


「待ってない」


「即答」


「時計見てただけ」


「何回?」


「…………」


「朝倉君」


「何」


「分かりやすくなってきたね」


「何が」


「さあ?」


「…………」


 意味。


 分からない。


     ◇


 昼休み。


 六人。


「今週の日曜!」


 陽斗。


「暇な人!」


「部活」


 玲司。


「早い!」


「私、家族で出かける」


 小宮山。


「私も予定ある」


 水瀬。


「湊!」


「用事」


「全滅!」


「黒瀬は?」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 俺を見る。


「予定ある」


「えー!」


「残念だったな」


 玲司。


「じゃあ俺一人!?」


「サッカー部の友達いるだろ」


 俺。


「そうだけど!」


「じゃあいいじゃん」


「六人で遊びたかった!」


「また今度」


「湊」


「何」


「お前から『また今度』って」


「何」


「いいな」


「気持ち悪い」


「ひどい!」


 笑い。


 俺。


 弁当。


 食べる。


 でも。


 少し。


 気になる。


 黒瀬。


 日曜日。


 予定。


「…………」


 何で。


 俺が。


 気にする。


     ◇


 五時間目。


 スマホ。


 使えない。


 当然。


 授業。


 受ける。


 黒板。


 見る。


「…………」


 日曜日。


 黒瀬。


 予定。


「…………」


 知らない。


 友達。


 家族。


 買い物。


 何でも。


 いいだろ。


「朝倉」


「はい」


「ここ」


「…………」


 先生。


 黒板。


「答えは?」


「……すみません」


「珍しいな」


 クラス。


 少し。


 ざわつく。


「聞いてなかったか?」


「はい」


「じゃあ橘」


「何で俺!?」


「隣だから」


「理不尽!」


 笑い。


「…………」


 何してんだ。


 俺。


     ◇


 放課後。


「じゃーな!」


 陽斗。


「また明日」


 玲司。


 部活。


 水瀬。


 小宮山。


「由香、行こ」


「あ」


 黒瀬。


「ごめん」


「何?」


「先行ってて」


「どうしたの?」


「ちょっと用事」


「分かった」


「また明日」


「うん」


 二人。


 教室。


 出る。


「…………」


 俺。


 鞄。


 持つ。


「朝倉君」


「何」


 黒瀬。


「今日バイト?」


「ない」


「ゲーム?」


「多分」


「そっか」


「うん」


「…………」


「何」


「…………」


 黒瀬。


 周り。


 見る。


 教室。


 まだ。


 何人か。


 残っている。


「ちょっと来て」


「どこ」


「廊下」


「何で」


「いいから」


「…………」


 ついていく。


     ◇


 廊下。


 人。


 少ない。


「何」


「朝倉君」


「うん」


「日曜日」


「…………」


「空いてる?」


「バイト」


「あ……」


「…………」


 黒瀬。


 分かりやすく。


 落ち込む。


「何時まで?」


「昼」


「え?」


「三時まで」


「…………」


「何」


「じゃあ」


 黒瀬。


 少し。


 明るくなる。


「夕方から空いてる?」


「空いてるけど」


「…………」


 あ。


 もしかして。


『じゃあ今度私から誘う』


『二人で』


「…………」


「朝倉君?」


「うん」


「日曜日」


 黒瀬。


 少し。


 目。


 逸らす。


「一緒に出かけない?」


「…………」


 分かってた。


 はず。


 なのに。


 実際。


 言われると。


 少し。


 違う。


「どこ?」


「駅前」


「何するの?」


「買い物」


「何買うの」


「…………」


「何」


「ヘッドセット」


「また?」


「またって何!」


「夏休み見たじゃん」


「結局買ってない!」


「そうだった」


「あと」


「うん」


「キーボードも見たい」


「ゲーム機材ばっか」


「悪い?」


「いや」


「…………」


「行く」


「…………」


「何」


「いや」


 黒瀬。


 笑う。


「やった」


「そんな?」


「だって」


「うん」


「約束したから」


「約束?」


「私から誘うって」


「…………」


「覚えてた?」


「覚えてる」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 止まる。


「そっか」


「何」


「何でもない」


 笑う。


「じゃあ日曜日ね」


「うん」


     ◇


 夜。


 ゲーム。


『日曜日』


 Yuu。


『うん』


『バイト終わりで大丈夫?』


『大丈夫』


『疲れてない?』


『平気』


『無理しなくていいからね』


『行きたくないとは言ってない』


「…………」


 既読。


 止まる。


『何』


『いや』


『何』


『朝倉君』


『うん』


『楽しみにしてる?』


「…………」


 何で。


 聞く。


『普通』


『普通って何』


『普通に楽しみ』


 送る。


 また。


 止まる。


『…………』


『何』


『私も』


「…………」


『楽しみ』


 それだけ。


 なのに。


 少し。


 心臓。


 うるさい。


     ◇


 日曜日。


 午後三時十分。


「お疲れさまでした」


「お疲れー」


 バイト。


 終了。


 着替える。


 スマホ。


『終わった?』


『今終わった』


『了解!』


『もういる?』


『いる』


「…………」


 早い。


『待ち合わせ4時だろ』


『買い物してた』


『そう』


『急がなくていいよ』


『分かった』


 でも。


 少し。


 急ぐ。


     ◇


 午後三時五十分。


 駅。


「…………」


 黒瀬。


 いる。


 改札前。


 スマホ。


 見てる。


 冬。


 夏休み。


 初めて。


 会ったとき。


 同じ。


 場所。


 あの日は。


 黒瀬だと。


 知らなかった。


 いや。


 少し。


 疑っていた。


 それでも。


 姿を見た瞬間。


 頭。


 真っ白になった。


「黒瀬」


「!」


 顔。


 上げる。


「あ」


 笑う。


「朝倉君」


「待った?」


「全然」


「いつから?」


「三十分くらい」


「待ってるじゃん」


「買い物してたって言ったでしょ」


「何買ったの」


「…………」


 袋。


 後ろ。


 隠す。


「何」


「秘密」


「何で」


「いいの!」


「?」


「ほら行こ!」


「うん」


     ◇


 ゲームショップ。


「これ!」


 黒瀬。


 ヘッドセット。


「どう?」


「重い」


「やっぱり?」


「長時間なら疲れそう」


「朝倉君前もそれ言ってた」


「じゃあ聞くなよ」


「確認!」


「こっち」


「え?」


「軽い」


「…………」


 黒瀬。


 装着。


「どう?」


「いいんじゃない」


「似合う?」


「ヘッドセットに似合うとかある?」


「ある!」


「分からない」


「ちゃんと見て」


「…………」


 見る。


 黒瀬。


 ヘッドセット。


 つけて。


 こっち。


 見てる。


「…………」


「朝倉君?」


「似合ってる」


「…………」


「何」


「いや」


 外す。


「じゃあこれ候補」


「うん」


「…………」


 耳。


 少し。


 赤い。


 店。


 暑いのか。


     ◇


 キーボード。


「青軸!」


 黒瀬。


「うるさい」


「いい音じゃん」


「夜うるさい」


「家族に怒られるかな」


「多分」


「じゃあ赤軸?」


「無難」


「でもカチカチしたい」


「なら買えば」


「朝倉君冷たい」


「黒瀬が使うんだから好きなのにしろよ」


「…………」


「何」


「そういうこと言われると」


「うん」


「余計迷う」


「何で」


「知らない!」


「…………」


 難しい。


     ◇


 一時間。


 店。


 出る。


「結局買わなかった」


 俺。


「高いんだもん」


「見る前に分かるだろ」


「実物見たかったの!」


「そう」


「朝倉君」


「何」


「お腹空いてない?」


「少し」


「何か食べよ」


「うん」


「…………」


 歩く。


「何食べる?」


 黒瀬。


「何でも」


「禁止」


「まだ?」


「ずっと」


「じゃあ」


 周り。


 見る。


「オムライス」


「…………」


「何」


「私も今言おうとした」


「じゃあ決まり」


「うん」


 夏。


 初めて。


 二人で会った日。


 好きな食べ物。


 話した。


 オムライス。


 俺。


 好き。


 黒瀬も。


 好き。


 今は。


 それを。


 知っている。


     ◇


「美味しい」


 黒瀬。


「うん」


「朝倉君」


「何」


「一口いる?」


「何を」


「こっち」


 黒瀬。


 デミグラス。


 俺。


 ケチャップ。


「…………」


「嫌?」


「いや」


「じゃあ」


 スプーン。


 持つ。


「…………」


 俺。


 止まる。


「何?」


「いや」


 黒瀬も。


 止まる。


「…………」


「…………」


 これ。


 どうやって。


 一口。


 もらう。


 普通なら。


 皿。


 交換。


 だろ。


 でも。


 黒瀬。


 スプーン。


 持ってる。


「…………」


「…………」


 黒瀬。


 顔。


 赤くなる。


「あ」


「うん」


「ごめん!」


「何が」


「いや!」


 スプーン。


 戻す。


「お皿!」


「うん」


「お皿交換!」


「そうだな」


「…………」


 皿。


 少し。


 寄せる。


「…………」


 一口。


 食べる。


「どう?」


「美味しい」


「でしょ?」


「うん」


「…………」


「黒瀬?」


「何」


「顔赤い」


「店暑い!」


「そう?」


「暑い!」


「…………」


 夏にも。


 似たこと。


 あった気がする。


     ◇


 店。


 出る。


 午後六時。


 冬。


 もう。


 暗い。


「寒っ」


 黒瀬。


「十一月だから」


「知ってる」


「手」


「え?」


「ポケット入れたら」


「…………」


「寒いんだろ」


「うん」


 黒瀬。


 コート。


 ポケット。


 手。


 入れる。


「朝倉君」


「何」


「優しい」


「普通」


「出た」


「何」


「普通」


「普通だろ」


「そういうことにしとく」


「…………」


 駅。


 向かう。


 街。


 少し。


 クリスマス。


 装飾。


 始まっている。


「もうクリスマスか」


 俺。


「まだ一か月以上あるよ」


「店は早い」


「ね」


「…………」


 黒瀬。


 イルミネーション。


 見る。


「綺麗」


「うん」


「…………」


「…………」


 何か。


 前。


 カップル。


 多い。


「…………」


 そういえば。


 今日。


 日曜日。


 夕方。


 男女。


 二人。


 買い物。


 飯。


 イルミネーション。


「…………」


 これ。


 水瀬なら。


 何て言う。


『デートじゃん』


「…………」


 いや。


 違う。


 ゲーム機材。


 見に来ただけ。


 友達。


 だから。


「朝倉君」


「何」


「またぼーっとしてる」


「してない」


「してた」


「考え事」


「何考えてたの?」


「…………」


 言えるわけない。


「秘密」


「最近秘密多くない?」


「黒瀬もあるだろ」


「まあ」


「なら同じ」


「…………」


「何」


「今日」


「うん」


「楽しい?」


「また聞く?」


「あ」


「何回聞くんだよ」


「だって」


 黒瀬。


 笑う。


「気になる」


「楽しいよ」


「…………」


 今度は。


 すぐ。


 答える。


「黒瀬は?」


「楽しい」


「ならいいじゃん」


「うん」


「…………」


 歩く。


 少し。


 沈黙。


 でも。


 気まずくない。


 前は。


 誰かと。


 沈黙すると。


 何か。


 話さないと。


 そう思っていた。


 黒瀬とは。


 何も話さなくても。


 平気。


 ゲームの中でも。


 現実でも。


 同じ。


     ◇


「あ」


 黒瀬。


「何」


「ちょっと待って」


 鞄。


 探す。


「これ」


「何」


 小さい。


 紙袋。


 さっき。


 駅で。


 隠してたやつ。


「朝倉君に」


「俺?」


「うん」


「何で」


「開けて」


「…………」


 受け取る。


 中。


 小さい。


 箱。


「…………」


 キーホルダー。


 ゲームの。


 俺たちが。


 やっているFPS。


 武器を。


 デフォルメした。


 やつ。


「これ」


「さっき見つけた」


「何で俺に?」


「…………」


 黒瀬。


 少し。


 目。


 逸らす。


「この前」


「うん」


「朝倉君が六人で遊ぶの誘ってくれたでしょ」


「うん」


「嬉しかったから」


「それで?」


「あと」


「うん」


「今日」


「…………」


「バイトのあと来てくれたから」


「別にそれくらい」


「私があげたいの」


「…………」


「嫌?」


「嫌じゃない」


「じゃあもらって」


「……ありがとう」


「うん」


 黒瀬。


 笑う。


「…………」


 キーホルダー。


 見る。


 高いものじゃない。


 多分。


 数百円。


 でも。


 妙に。


 嬉しい。


「使う?」


「使う」


「ほんと?」


「うん」


「どこに?」


「鞄」


「学校の?」


「うん」


「…………」


「何」


「いや」


 黒瀬。


 嬉しそう。


「明日見る」


「何で」


「本当に付けてるか確認」


「信用ないな」


「あるけど確認」


「意味分からない」


     ◇


 駅。


「じゃあ」


 黒瀬。


「ここで」


「うん」


「今日はありがとう」


「こっちこそ」


「…………」


「何」


「朝倉君から」


「うん」


「こっちこそ、って」


「変?」


「変じゃない」


 笑う。


「嬉しい」


「…………」


「じゃあね」


「また明日」


「うん」


 黒瀬。


 数歩。


 歩く。


「あ」


 振り返る。


「朝倉君!」


「何」


「今度は」


「うん」


「ゲーム機材じゃないところも行こうね」


「…………」


「何」


「いや」


「嫌?」


「嫌じゃない」


「じゃあ約束」


「うん」


「また明日!」


「また明日」


 手。


 振る。


 黒瀬。


 人混み。


 消える。


「…………」


 ゲーム機材じゃないところ。


 何するんだ。


 映画。


 買い物。


 飯。


「…………」


 それ。


 もっと。


 デートっぽくない?


「…………」


 違う。


 友達。


 だから。


     ◇


 月曜日。


 教室。


「おはよ」


 玲司。


「おはよう」


「…………」


 玲司。


 俺の鞄。


 見る。


「それ」


「何」


「新しい?」


 キーホルダー。


「ああ」


「ゲームのやつか」


「うん」


「買った?」


「もらった」


「へえ」


「誰に?」


 陽斗。


「黒瀬」


「…………」


「…………」


 陽斗。


 止まる。


 玲司も。


 止まる。


「何」


「黒瀬に?」


「うん」


「何で?」


「昨日」


「昨日?」


「出かけた」


「…………」


「…………」


「湊」


「何」


「二人で?」


「うん」


「…………」


 陽斗。


 頭。


 抱える。


「何」


「お前」


「うん」


「何でそんな普通に言えるの?」


「友達だから」


「それだよ!」


「何が」


「おはよー!」


 声。


 水瀬。


 小宮山。


 黒瀬。


「朝倉君!」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


 次。


 鞄。


 見る。


「…………」


 キーホルダー。


 見つける。


 笑う。


「ちゃんと付けてる」


「言っただろ」


「うん!」


「由香」


 水瀬。


「何?」


「それ何?」


「え?」


「朝倉君の鞄」


「…………」


「あ」


「何で由香が知ってるの?」


「…………」


 黒瀬。


 俺。


 見る。


「昨日もらった」


 俺。


「朝倉君!?」


「何」


「言うの!?」


「ダメなの?」


「ダメじゃないけど!」


「何!?」


 水瀬。


「昨日!?」


「うん」


「二人で会ったの!?」


「うん」


「何したの!?」


「ゲームショップ」


「…………」


 水瀬。


 少し。


 黙る。


「そのあと?」


「飯」


「…………」


「あと歩いた」


「…………」


「何」


「朝倉君」


「うん」


「それ」


「何」


「デートじゃない?」


「違う」


 即答。


「何で?」


「友達だから」


「…………」


 水瀬。


 黒瀬。


 見る。


「由香は?」


「え!?」


「デートじゃないの?」


「…………」


 黒瀬。


 顔。


 赤くなる。


「ち、違うよ!」


「何で?」


「友達だから!」


「…………」


 水瀬。


 ため息。


「琴葉」


「うん」


 小宮山。


 少し。


 笑う。


「どう思う?」


「楽しそうでいいと思う」


「そうじゃなくて!」


「ふふ」


 玲司。


 俺。


 見る。


「湊」


「何」


「多分」


「うん」


「水瀬が言いたいこと、お前にはまだ分からない」


「何それ」


「そのうち」


「またそれ?」


「またそれ」


 陽斗。


「俺は分かった!」


「陽斗は黙ってて」


 水瀬。


「何で!?」


     ◇


 昼。


 六人。


 弁当。


「朝倉君」


 黒瀬。


「何」


「キーホルダー」


「うん」


「ありがと」


「何で黒瀬がお礼言うの」


「使ってくれたから」


「もらったから使ってるだけ」


「…………」


「何」


「それでも嬉しい」


「そう」


「うん」


「…………」


 友達。


 だから。


 プレゼント。


 もらった。


 友達。


 だから。


 二人で。


 出かけた。


 友達。


 だから。


 次の約束も。


 した。


 全部。


 説明できる。


 はず。


 なのに。


 ふと。


 黒瀬を見る。


 友達。


「…………」


 最近。


 その言葉だけでは。


 何か。


 少し。


 足りない気がする。


 でも。


 じゃあ。


 何なのか。


 俺には。


 まだ。


 分からない。


     ◇


 その夜。


『今日大変だったね笑』


 Yuu。


『黒瀬が分かりやすいから』


『朝倉君のせいでしょ!』


『俺何かした?』


『全部正直に言うから!』


『嘘つく必要ないだろ』


『そうだけど!』


『水瀬にデートって言われた』


『…………』


『何』


『いや』


『黒瀬も否定してたじゃん』


『朝倉君も即答だったね』


「…………」


『友達だから』


 送る。


 既読。


『うん』


 少し。


 間。


『そうだね』


「…………」


 何だろう。


 また。


 同じ。


 文化祭の夜と。


 同じ。


 その返事が。


 少しだけ。


 引っかかる。


『黒瀬』


『何?』


『今度』


 止まる。


 俺。


 何を。


 打とうとした。


「…………」


『ゲーム機材じゃないところ』


『どこ行く?』


 送る。


 既読。


 すぐ。


『え』


『黒瀬が言ったんだろ』


『言ったけど』


『行きたいところ考えといて』


『…………』


『何』


『朝倉君』


『うん』


『それって』


 止まる。


『朝倉君から誘ってくれてる?』


「…………」


 確かに。


 そうなる。


『そうなるのかな』


『なる!』


『じゃあそう』


 既読。


『やった』


「…………」


『そんな嬉しい?』


『嬉しい』


『何で』


 返事。


 少し。


 遅い。


『友達だから』


「…………」


 また。


 その言葉。


 でも。


 今度は。


 なぜか。


 俺も。


 すぐには。


『そうだな』


 と。


 返せなかった。


 友達だから。


 それは。


 間違っていない。


 なのに。


 俺は。


 黒瀬から。


 誘われると嬉しい。


 黒瀬と。


 二人で会う日は。


 少し。


 楽しみになる。


 黒瀬が。


 他の誰かと出かけると聞けば。


 少し。


 気になる。


 黒瀬と。


 隣になると。


 最近。


 少しだけ。


 意識する。


 他の四人には。


 ない。


 何か。


「…………」


 でも。


 その正体を。


 俺は。


 まだ。


 知らない。


『朝倉君?』


『何』


『返事ない』


『考えてた』


『何を?』


「…………」


『秘密』


『また!』


『いつか話す』


『…………』


『分かった』


 そして。


『待ってる』


「…………」


 その四文字を。


 俺は。


 少しだけ。


 長く見た。


 十二月は。


 もう。


 すぐそこまで。


 来ていた。

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