第20話 今度は、俺から
十一月。
文化祭が終わって。
体育祭も終わって。
学校は。
驚くほど普通の日常に戻った。
「湊」
「何」
「暇」
「知らない」
「遊ぼうぜ」
「今授業中」
「小声ならいいだろ」
「よくない」
「朝倉」
「はい」
前。
先生。
「橘と何を話してる?」
「橘が暇らしいです」
「湊!?」
クラス。
笑い。
「橘」
「はい!」
「暇ならこの問題解け」
「えっ」
「前出ろ」
「湊ぉ……」
「頑張れ」
「裏切り者!」
「朝倉」
「はい」
「お前も前出ろ」
「…………」
余計なこと。
言わなければよかった。
◇
「最悪だった」
昼休み。
陽斗。
「湊のせい」
「話しかけてきたの陽斗だろ」
「先生に売ったの湊!」
「事実を言っただけ」
「玲司!」
「陽斗が悪い」
「琴葉!」
「授業中は静かにした方がいいと思う」
「莉央!」
「自業自得」
「由香!」
「朝倉君面白かった」
「…………」
「誰も味方いない!」
六人。
机。
囲む。
「ていうか」
水瀬。
「最近この六人で学校の外遊んでなくない?」
「ゲーセン行っただろ」
玲司。
「朝倉君いなかったじゃん」
「用事だった」
「そう!」
陽斗。
「だから六人じゃない!」
「文化祭の打ち上げ」
俺。
「あれファミレスだけじゃん」
「十分じゃない?」
「足りない!」
「何が」
「青春が!」
「…………」
「湊」
玲司。
「触れるな」
「うん」
「聞いて!」
「で」
黒瀬。
「どっか行きたいの?」
「行きたい!」
水瀬。
「どこ?」
「それを今から決める!」
「決まってないんだ」
「…………」
水瀬。
スマホ。
出す。
「カラオケ」
「いいね!」
陽斗。
「ボウリング」
玲司。
「それもいい!」
小宮山。
「映画?」
「あり!」
黒瀬。
「買い物とか?」
「あり!」
全員。
俺を見る。
「…………」
「何」
「朝倉君は?」
水瀬。
「何でも」
「出た!」
「何」
「一番困るやつ!」
「…………」
また。
言われた。
「じゃあ」
黒瀬。
「朝倉君が決めて」
「何で」
「たまには」
「嫌」
「即答!」
水瀬。
「朝倉君って」
「何」
「自分からどっか行きたいとかないの?」
「…………」
考える。
ゲームショップ。
なら。
行きたい。
でも。
六人で行く場所ではない。
温泉。
高校生六人で行くものなのか。
「……特に」
「ほら!」
水瀬。
「朝倉君、いつも誘われる側じゃん」
「そう?」
「そうだよ」
陽斗。
「俺からばっか誘ってる!」
「別にいいだろ」
「たまには湊から誘え!」
「何で」
「友達だから!」
「…………」
友達だから。
最近。
よく聞く。
「友達って誘わないとダメなの?」
「ダメじゃないけど」
陽斗。
「誘われたら嬉しい」
「…………」
「俺はな」
「そう」
「だから今度、湊から誘って」
「覚えてたら」
「絶対忘れるやつ!」
笑い。
俺も。
少し笑う。
でも。
『誘われたら嬉しい』
その言葉だけ。
少し。
残った。
◇
放課後。
「じゃあな!」
陽斗。
「部活行ってくる!」
「おう」
「また明日」
玲司も。
バスケ部。
水瀬。
小宮山。
黒瀬。
三人。
廊下。
「朝倉君」
「何」
黒瀬。
「今日バイト?」
「ない」
「じゃあゲーム?」
「多分」
「私も」
「じゃあ夜」
「うん」
「…………」
水瀬。
止まる。
「何」
俺。
「いや」
「その顔やめろ」
「二人って」
「何」
「毎日そんな感じなの?」
「そんな感じって?」
「『じゃあ夜』」
「…………」
「夫婦みたい」
「は!?」
黒瀬。
「何でそうなるの!」
「だって」
「ゲームするだけ!」
「分かってるって」
「絶対分かってない!」
水瀬。
笑う。
「じゃあね、朝倉君」
「うん」
小宮山。
「また明日」
「また明日」
三人。
行く。
「…………」
俺も。
帰ろうとする。
でも。
『たまには湊から誘え!』
「…………」
誘う。
何を。
どこへ。
六人。
「…………」
難しい。
◇
その夜。
『今日やる?』
Yuu。
『やる』
『二人?』
「…………」
『玲司呼ぶ?』
『どっちでも』
『朝倉君は?』
『どっちでも』
『それ禁止』
『何が』
『どっちでも』
『何で』
『私が困る』
「…………」
『じゃあ二人』
送る。
既読。
『了解!』
何となく。
嬉しそう。
ゲーム。
開始。
降下。
物資。
集める。
『敵いる』
『二人』
『右行く』
『じゃあ左』
挟む。
一人。
撃破。
二人目。
黒瀬。
撃破。
『ナイス』
『朝倉君も』
次。
移動。
『朝倉君』
『何』
『今日莉央が言ってたやつ』
『何』
『六人で遊ぶ話』
『うん』
『どこ行きたい?』
『分からない』
『また?』
『六人で遊んだことあんまりないから』
『そっか』
『黒瀬は』
『私は』
少し。
間。
『みんなで行けたらどこでも楽しいと思う』
『俺と同じじゃん』
『違います』
『何が』
『私は行きたいんです』
『…………』
なるほど。
同じ。
ではないらしい。
『朝倉君は?』
『誘われたら行く』
『じゃなくて』
『何』
『朝倉君から』
「…………」
『誰かを誘ってみたいとかない?』
今日。
二回目。
「…………」
ない。
そう。
答えようとして。
止まる。
以前。
陽斗に。
初めて誘われた。
駅前。
玲司と三人。
断ろうとした。
でも。
行った。
楽しかった。
体育祭。
文化祭。
六人。
全部。
俺が。
誘ったものじゃない。
いつも。
誰かが。
俺を。
連れていってくれた。
『……あるかも』
送る。
『お』
『何その反応』
『成長』
『うるさい』
『誰誘うの?』
『まだ決めてない』
『私も誘って』
「…………」
『何で』
『友達だから』
また。
それ。
『分かった』
『やった』
◇
翌日。
昼。
「…………」
スマホ。
見る。
調べる。
「湊」
「何」
「何見てんの?」
陽斗。
「別に」
「ゲーム?」
「違う」
「珍しい」
「何が」
「湊が休み時間にゲーム以外調べてる」
「失礼」
「何?」
「…………」
スマホ。
隠す。
「何でもない」
「怪しい」
「朝倉君」
小宮山。
「何?」
「次、移動教室だよ」
「あ」
「あと五分」
「ありがとう」
立つ。
そのとき。
「…………」
黒瀬。
目。
合う。
俺のスマホ。
見る。
首。
少し。
傾げる。
『何見てるの?』
多分。
そういう顔。
「…………」
何で。
言葉なくても。
分かるんだ。
俺。
首。
横。
振る。
『秘密』
黒瀬。
目。
細くする。
『怪しい』
「…………」
「何してんの二人?」
水瀬。
「何も」
俺。
「何もしてない!」
黒瀬。
「…………」
「何で同時?」
「偶然」
「偶然!」
「また同時」
「…………」
最近。
隠す気。
あるんだろうか。
◇
土曜日。
バイト。
休憩。
スマホ。
開く。
「…………」
見つけた。
駅。
二つ先。
大型。
複合施設。
映画。
ボウリング。
ゲームセンター。
飯。
全部。
ある。
「…………」
ここなら。
六人。
何か。
できる。
でも。
問題。
誘い方。
「…………」
陽斗なら。
『行こうぜ』
それだけ。
俺には無理。
「…………」
グループ。
『放課後』
開く。
最後。
水瀬。
『月曜英語小テストだから忘れないで!』
陽斗。
『今知った』
玲司。
『終わったな』
黒瀬。
『陽斗君頑張れ笑』
小宮山。
『範囲送ろうか?』
「…………」
メッセージ。
打つ。
『来週の日曜』
止まる。
消す。
『来週日曜暇?』
止まる。
消す。
「…………」
何で。
こんなことで。
緊張する。
もう一回。
『来週の日曜、暇な人いる?』
送信。
「…………」
送った。
既読。
一。
早い。
黒瀬。
『暇!』
「…………」
二秒。
陽斗。
『暇!!!』
水瀬。
『何!?』
玲司。
『多分空いてる』
小宮山。
『私も大丈夫だよ』
「…………」
全員。
『どうしたの?』
水瀬。
『珍しい』
玲司。
『湊から誘い!?』
陽斗。
『スクショした』
黒瀬。
『私も笑』
小宮山。
「…………」
『うるさい』
送る。
でも。
少し。
笑う。
『駅の近くに色々あるところ見つけた』
『行く?』
送る。
一瞬。
グループ。
止まる。
「…………」
何。
変だった?
そして。
『行く!!!!』
陽斗。
『行く!』
水瀬。
『行きたい』
小宮山。
『俺も』
玲司。
最後。
黒瀬。
『行く!絶対!』
「…………」
全員。
来る。
たった。
それだけ。
なのに。
何か。
胸が少し温かい。
『じゃあ決まり』
送る。
『朝倉君』
黒瀬。
『何』
『誘ってくれてありがとう』
「…………」
『何でお礼』
『嬉しかったから』
「…………」
陽斗。
『俺も!!!!』
玲司。
『俺も嬉しい』
小宮山。
『私も』
水瀬。
『朝倉君成長したね』
『お前ら』
『何』
陽斗。
『やっぱなし』
『ごめんなさい』
水瀬。
『撤回します』
玲司。
『行かせてください』
小宮山。
『ふふ』
黒瀬。
『朝倉君拗ねた笑』
「…………」
笑う。
初めて。
俺から。
友達を。
誘った。
◇
日曜日。
午前十時。
駅。
「湊ー!」
陽斗。
声。
でかい。
「おはよう」
「お前!」
「何」
「本当に来た!」
「誘ったの俺」
「そうだった!」
「朝倉君!」
水瀬。
「おはよ」
「おはよう」
「今日は記念日だね」
「何の」
「朝倉君初主催!」
「帰る」
「ごめん!」
「朝倉君」
小宮山。
「おはよう」
「おはよう」
「誘ってくれてありがとう」
「…………」
「小宮山まで」
「嬉しかったから」
「…………」
「湊」
玲司。
「何」
「諦めろ」
「何を」
「今日は全員に言われる」
「…………」
そして。
「朝倉君!」
最後。
黒瀬。
走ってくる。
「ごめん、待った?」
「今来た」
「ほんと?」
「うん」
「よかった」
「…………」
黒瀬。
私服。
夏休み。
何度か。
見ている。
なのに。
「…………」
「何?」
「いや」
「何」
「別に」
「見てた」
「見てない」
「見てた!」
「朝倉君」
水瀬。
「何」
「由香今日可愛い?」
「莉央!?」
「…………」
俺。
黒瀬。
見る。
「…………」
「何で見るの!?」
「聞かれたから」
「見なくていい!」
「じゃあ答えられない」
「そういう意味じゃない!」
「で?」
水瀬。
「…………」
面倒。
「似合ってるんじゃない?」
「服の話じゃないんだけど」
「じゃあ知らない」
「朝倉君!」
黒瀬。
「何」
「もう行こ!」
「うん」
「由香顔赤い」
「莉央!」
朝から。
うるさい。
でも。
嫌じゃない。
◇
ボウリング。
「チーム戦!」
陽斗。
「何で」
俺。
「盛り上がるから!」
「三対三?」
小宮山。
「そう!」
「どう分ける?」
水瀬。
「男女?」
玲司。
「それじゃ普通」
水瀬。
「じゃんけん!」
結果。
チームA。
俺。
黒瀬。
玲司。
チームB。
陽斗。
水瀬。
小宮山。
「勝った方!」
陽斗。
「負けた方がジュース!」
「勝手に決めるな」
「いいじゃん」
黒瀬。
「やろ!」
「…………」
「朝倉君」
「何」
「負けたくない」
「ゲームじゃない」
「勝負は勝負」
「…………」
負けず嫌い。
「分かった」
「勝とうね」
「うん」
「湊!」
陽斗。
「何」
「黒瀬と組んだ瞬間やる気出すな!」
「出してない」
「出てる!」
「気のせい」
「由香も!」
水瀬。
「何?」
「朝倉君と組んで嬉しそう」
「チームだから!」
「はいはい」
◇
結果。
「うそだろ……」
陽斗。
百二十七。
水瀬。
九十八。
小宮山。
百一。
俺。
百十四。
玲司。
百四十二。
黒瀬。
百三十六。
「黒瀬」
「何?」
「上手いな」
「ふふ」
得意げ。
「私、ボウリングも強い」
「負けた」
「朝倉君に勝った!」
「ゲームじゃないけど」
「勝ちは勝ち」
「…………」
「ジュース!」
黒瀬。
「陽斗君たちよろしく!」
「くそー!」
「由香」
水瀬。
「何」
「めっちゃ嬉しそう」
「勝ったから!」
「朝倉君に?」
「チームで!」
「へえ」
「もう!」
◇
ゲームセンター。
「湊!」
「何」
「クレーンゲーム教えて!」
「嫌」
「黒瀬には取ってあげたんだろ!?」
「…………」
「差別!」
「陽斗は自分で取れ」
「友達だろ!」
「友達だから自分で頑張れ」
「友達の使い方おかしい!」
隣。
黒瀬。
笑ってる。
「朝倉君」
「何」
「猫いる」
「…………」
景品。
猫。
クッション。
「欲しい?」
「いや」
「嘘」
「今日は自分で取る」
「へえ」
「前は取ってもらったから」
「じゃあ頑張れ」
「うん!」
百円。
投入。
一回。
失敗。
二回。
失敗。
三回。
「…………」
「黒瀬」
「何」
「下手」
「うるさい!」
四回。
「惜しい」
「今のいけると思った!」
五回。
「…………」
「朝倉君」
「何」
「一回だけ」
「自分で取るんじゃないの」
「アドバイス」
「…………」
景品。
見る。
「右」
「これくらい?」
「もうちょい」
「ここ?」
「そう」
「奥」
「うん」
「…………」
黒瀬。
操作。
アーム。
降りる。
掴む。
ずれる。
落ちる。
出口。
「…………」
「あ」
「取れた!」
「やった!」
黒瀬。
振り返る。
「朝倉君!」
「うん」
「取れた!」
「見てた」
「私が取った!」
「俺のアドバイス」
「操作したの私!」
「はいはい」
嬉しそう。
猫。
抱える。
「…………」
俺も。
少し。
嬉しい。
◇
昼。
フードコート。
六人。
「楽しいな!」
陽斗。
「まだ昼」
玲司。
「このあと映画!」
水瀬。
「何見るの?」
小宮山。
「候補三つ!」
スマホ。
出す。
一。
恋愛映画。
二。
アクション。
三。
ホラー。
「ホラー」
陽斗。
「嫌」
黒瀬。
即答。
「早っ」
「嫌」
「由香怖いんだ」
水瀬。
「苦手」
「認めた」
俺。
「…………」
黒瀬。
俺を見る。
「誰のせいだと思ってるの」
「俺?」
「文化祭でバレたから!」
「元から知ってた」
「そうだった!」
「何で朝倉君が知ってたの?」
水瀬。
「…………」
黒瀬。
「ゲームで話したの!」
「へえ」
「もういいでしょ!」
「はいはい」
結果。
アクション。
決定。
◇
映画。
席。
六人。
並び。
陽斗。
玲司。
俺。
黒瀬。
小宮山。
水瀬。
「…………」
また。
黒瀬。
隣。
「朝倉君」
小声。
「何」
「ポップコーンいる?」
「後で」
「うん」
上映。
始まる。
暗い。
映画。
普通に。
面白い。
中盤。
アクション。
派手。
「…………」
横。
黒瀬。
真剣。
見てる。
「…………」
何で。
俺。
映画じゃなく。
横。
見てるんだ。
前。
向く。
「…………」
少しして。
ポップコーン。
手。
伸ばす。
同時。
黒瀬。
「…………」
指。
少し。
触れる。
「……ごめん」
黒瀬。
「うん」
「…………」
「…………」
それだけ。
なのに。
何か。
妙に。
気になる。
映画。
見る。
でも。
しばらく。
内容。
頭に入らなかった。
◇
映画。
終了。
「面白かった!」
陽斗。
「あの最後やばくない!?」
「分かる!」
水瀬。
「続編ありそう」
玲司。
「琴葉どうだった?」
「面白かったよ」
「朝倉君?」
黒瀬。
「…………」
「何」
「面白かった?」
「うん」
「途中ぼーっとしてなかった?」
「してない」
「してた」
「気のせい」
「…………」
黒瀬。
少し。
俺を見る。
「何」
「何でもない」
「…………」
何だ。
その顔。
◇
夕方。
「疲れたー!」
水瀬。
「めっちゃ遊んだ!」
陽斗。
「朝からだからな」
玲司。
駅。
「でも楽しかった」
小宮山。
「うん!」
黒瀬。
「朝倉君」
「何」
「ありがとう」
「何が」
「今日」
「…………」
「誘ってくれて」
「俺も楽しかったから」
「…………」
黒瀬。
少し。
驚く。
「何」
「いや」
「何」
「朝倉君」
笑う。
「本当に変わったね」
「そう?」
「うん」
「…………」
「前なら」
黒瀬。
「誘われたら行く、だったのに」
「陽斗に言われた」
「え?」
「誘われたら嬉しいって」
「…………」
「だから」
五人。
見る。
「俺も」
少し。
恥ずかしい。
「誘ってみようかなって」
「…………」
静か。
「湊」
陽斗。
「何」
「俺」
「うん」
「泣きそう」
「気持ち悪い」
「ひどい!」
笑い。
「でも」
小宮山。
「私も嬉しかったよ」
「俺も」
玲司。
「私も!」
水瀬。
「うん」
黒瀬。
笑う。
「私も」
「…………」
友達を。
誘う。
それだけ。
普通の人なら。
何でもない。
こと。
でも。
俺にとっては。
初めてだった。
◇
駅。
陽斗。
玲司。
水瀬。
小宮山。
順番に。
別れる。
最後。
俺。
黒瀬。
「…………」
「…………」
最近。
この形。
多い。
「朝倉君」
「何」
「また誘ってね」
「…………」
「何」
「いや」
「嫌?」
「違う」
「じゃあ」
「……分かった」
「やった」
「黒瀬も誘えばいいだろ」
「誘うよ?」
「うん」
「二人でも?」
「…………」
足。
少し。
止まりそうになる。
「……いいんじゃない」
「何その返事」
「普通」
「怪しい」
「何が」
「今日ちょっと変だった」
「どこが」
「映画」
「…………」
「途中」
黒瀬。
俺を見る。
「何かあった?」
「ない」
「ほんと?」
「うん」
指。
触れた。
それだけ。
「…………」
「朝倉君?」
「何」
「やっぱ変」
「疲れた」
「そっか」
黒瀬。
それ以上。
聞かない。
「じゃあ」
分かれ道。
「また明日」
「うん」
「今日はありがとう」
「何回言うの」
「何回でも」
「…………」
「じゃあね」
「また明日」
◇
夜。
ベッド。
スマホ。
『放課後』
今日の写真。
ボウリング。
ゲームセンター。
昼飯。
映画前。
六人。
大量。
『今日はありがとう!』
水瀬。
『また行こう』
玲司。
『次は俺が企画する!』
陽斗。
『不安』
俺。
『ひどい!』
小宮山。
『ふふ』
黒瀬。
『次も楽しみ!』
「…………」
俺。
『俺も』
送る。
以前なら。
絶対。
送らなかった。
通知。
個人。
Yuu。
『今日はゲームなし?』
『疲れた』
『私も』
『寝る』
『待って』
『何』
『一個だけ』
『うん』
『今日』
『朝倉君から誘ってくれたの』
『ほんとに嬉しかった』
「…………」
『何で』
『友達だから』
「…………」
また。
それ。
『友達から誘われたら嬉しいでしょ?』
『陽斗も言ってた』
『でしょ』
『うん』
少し。
考える。
『俺も』
『?』
『黒瀬から誘われたら嬉しい』
送る。
「…………」
既読。
つく。
でも。
返信。
来ない。
「…………」
何。
変だった?
一分。
『…………』
「…………」
『何』
『そういうの』
『何』
『普通に言うのずるい』
『何が』
『なんでもない!』
「…………」
意味。
分からない。
『じゃあ今度私から誘う』
『うん』
『二人で』
「…………」
また。
指。
止まる。
今日。
映画館。
指。
触れた。
思い出す。
『うん』
送る。
『約束ね』
『分かった』
『おやすみ』
『おやすみ』
スマホ。
置く。
暗い。
部屋。
俺は。
天井を見る。
友達。
陽斗。
玲司。
水瀬。
小宮山。
黒瀬。
五人。
みんな。
大切。
今日。
全員で遊べて。
本当に。
楽しかった。
でも。
「…………」
『二人で』
その言葉だけ。
なぜか。
少し。
違って聞こえた。
六人で遊びたい。
また。
みんなで。
どこかへ行きたい。
それは。
本当。
なのに。
黒瀬と。
二人で会う約束も。
同じくらい。
いや。
もしかしたら。
それ以上に。
楽しみにしている。
自分がいた。
「…………」
どうして。
黒瀬だけ。
少し。
違うんだろう。
その答えは。
まだ。
分からない。
ただ。
次に。
黒瀬から。
『会おう』
そう言われる日を。
俺は。
もう。
少しだけ。
待っていた。




