「なめられ」プラン
早速冒険者パーティーを組む事となったファースとノジローだったが、二人して最低ランクであるFランク冒険者である。
「ランクはどうすれば上がりますか」
「仕事をこなす事だな。Aランクパーティーなんてそれこそ十年はかかる」
「でも不死鳥の頭って三年でAランクパーティーになったとかって」
「あれは強引にやったからだよ、まあEランクでもAランクでもあんま変わらねえからな」
「それって……」
「ああ、悪いけどFランクパーティーはちっと扱いが、なあ…」
Fランクと言うのは最低ランクであり、それこそ小間使いのような立場でしかない。それこそ何の事はない手紙配達とか雑草狩りとか害獣退治とか言うそればかりであり、大きな魔物を倒すような事はない。
もちろんそれでもキチンと数を重ねれば功績となるし立派に飯を食えるのが冒険者と言う稼業だが、そんな小さな欲望のために「冒険者」になる人間はほとんどいない。そんなのは冒険者と言うより「便利屋」であり、それはそれでと割り切れない人間は次々と廃業して行く。
「とりあえず小さな仕事を幾度も重ねてランクを上げるのが常道だ。小さな仕事ばかりやってBランクにまで上ったその道のエキスパートって奴もこの世界には多い。それもまた道じゃねえかな」
「わかりました」
「納得してねえのか」
「納得はしてます!本当です!」
「いややけに声が小さいから」
「ボクは少しでもお金を稼いで故郷に貢献したいんです」
「その心構えなら大丈夫か」
ファースもドッターも安堵していた。背丈からして十二歳か十三歳ぐらいの少年ノジローは、それこそ世界最強の剣士になるぞとか言い出すのではないかと内心ひやひやしていた。ファースはキャリアこそ年の割に長くないがその手の新米冒険者が無謀な冒険に挑んで帰って来なかったり心根を折られてしまった話を何度も見ている。クツノイなどはそんなボロ雑巾と化した存在を見てあからさまに笑っていたが、ファースはとても笑う気になれなかった。
「あの、ボクは一応剣士なんですけど、お兄さんは」
「お兄さんなんて年じゃないよ、ちなみに俺は保険屋だ」
「保険屋?」
「何か不都合な事が起きた時にパワーアップする技能だな。先払いでも後払いでもいいけど保険料を貰えるのならば」
「それってお金とか」
「お金か経験値だな。仕事によって得た報酬及び戦闘によって得た経験値の何%をもらう事になる」
「それでAランクパーティーの一員になってたんですね、うらやましいなあ」
「ほとんど小間使いだったけどね」
ファースがうらやましいと言われた事はほとんどない。
最初の頃はあったが、だんだんとそれを聞かされるたびに三人とも不機嫌になって行った。誰にも彼にもファースをお荷物扱いする事を強要し、要らねえならば引き取れよと言わんばかりに顔をしかめるようになると共にその声も消えた。
寂寥の念を感じさせるその風貌は年齢以上に枯れ感を出しており、その手の男性が好きそうな女性ならば一発で落ちそうだったがそんな女性はこの場にはいない。
「あの、お兄さん…」
「お兄さんなんて年じゃないよ、それに俺にはファースって名前があるんだ。ってかファースって呼び捨てでいい。それに敬語もやめよう」
「はい」
「俺もFランク冒険者だしレベルも大差ないからな」
「わか…ったよファース」
「じゃ早速ボクに契約させてください」
しかしそれとは関係なく、ノジローはファースの勧めもあって一気に距離を詰める。
まだ何も成果を見せていない存在に対し、いきなり契約を望むと言うのだ。
「それは少し…」
「大丈夫だよ、ボクはファースの事を信じてるから!」
「で、どんなプランが必要なんだ」
「ギルドマスターさんの言った通り、ボクは急に強くならなくてもいいです。ですから経験値を半分」
「半分!……」
その彼の半分と言う素っ頓狂な数に、ファースはひっくり返りそうになった。
「半分って、それこそとんでもないプランが用意できてしまうぞ!」
「ダメかな…」
「そのとんでもないプランに慣れると後で反動が来る。まずは小さい所からにしてくれ」
「保険ってのはいつまで有効なの」
「条件が満たされている限り有効だ。例えば対オーク保険と言うのはオークが全滅してしばらく経つと効力がなくなる」
実際不死鳥の頭が強敵を倒すために報奨金の五割を払うと言う契約を結んだ際には反動で体が重くて三人ともまともに動けなくなり、その後しばらく逆ギレされた。それがトラウマと言う訳でもないがまだこんな少年にそんな思いをさせるわけには行かないし肉体が付いて行けるかもわからないと言うのがファースの思いだった。
「じゃあ5%ぐらいで…」
「わかった。それじゃ「なめられ」プランってのはどうかな」
「なめられプラン?」




