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追放された「保険屋」、「保険プラン」でのんびり生きます~えっ!?この状態からでも入れる保険があるんですか!?~  作者: ウィザード・T
第一章 保険屋、追放される

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宝箱は…

ダンジョンを行くファースとノジロー!


伊勢路を駆ける学生たち!!

「それで聞いてないんだけど」

「何をだ」

「どうやってダンジョンを踏破したのか証明するのかって」

「見えるだろ、青い点が」


 ノジローの頭には、地下二階のダンジョンの地図が見えている。


 階段と、道と、行き止まり。


 そして階段とほぼ対極の位置に、青い点。


「その青い点の所にある紋章の書いてある石に触れればミッションコンプリートだ。あくまでも目的を達成する事が第一だからな」

「そういう風にやるんだね」

「無事に帰るまでが冒険者だ。目的を達成したが帰って来られずに死んだ冒険者を俺は何人も見て来た。保険があると言ってもダンジョンを出たら保険は切れてパワーダウンするから」

「でもダンジョンにいる間は有効なんでしょ。その間はその力を生かすに越した事はないじゃない」


 足取りは軽く、迷いのないノジロー。

 二人分の荷物を抱えながらついて行くファース。


 二人のFランク冒険者は着実にその目的を達成しようとしていた。

「…!」

 まだ悪あがきのようにファースを狙うモンスターをノジローが一刀両断する。それがとどめの一撃となったかもう他のモンスターは二人を黙って見送るだけの存在になり、石壁を照らす松明の灯りだけが主張を強めていた。




「あれ」


 そんな二人が足を止めたのは、目的の紋章の一歩手前。


 いかにも注目してくださいと言わんばかりに置かれた、小さな箱。

 

「これ行っていいの」

「まあ一種の早い者勝ちだな。ダンジョンってのはこういうのが置いてあることは少なくない」

「もしかして遺品…」

「だとしても証拠がない以上どうにもならない。とりあえず確認はしておく」


 ダンジョン内にはそこで死んだ冒険者が遺した遺品が数多く転がっている物だが、それとは別によくここまで来ましたと言わんばかりにある種の報酬としてこの手の箱が置かれている事は珍しくない。


「開けるぞ」


 ファースはゆっくりと開ける。



 中には、金属の小さな輝きが二つ。

 要するに、銀貨二枚。


「………………これ、取っちゃっていいのかな」

「いいぞ、ってかためらわず取れ」


 銀貨と聞くと凄そうに聞こえるが、宿屋の一人分の二食付きの一泊のプランが銅貨六十枚から八十枚と言うのが相場なのでそれほどの大金でもない。ちなみにファースが手切れ金として渡された金は銀貨六十枚と銅貨千枚であり、何もしなければ三ヶ月程度で消える金でしかない。もし四人平等に分けていたならば桁がひとつ違うほどの金を受け取っていてしかるべきであったが、ファースは特段気にもしていない。

 ちなみにレートとしては銅貨一万枚=銀貨百枚=金貨一枚であり、ダンジョンに入る前に食べたパンの値段がだいたい銅貨二枚である。もちろんこれまで倒して来たモンスターから奪い取ったそれも報酬とはなっているが、正直二人とも言うか冒険者と言う稼業は金銭的にはそれほど豊かでもない。任務をこなして得る報酬が主な「給料」であり、しかも体を張った仕事である。

(ランクアップさせたいけどな…)

 ランクアップするとギルドからの一般的な仕事の報酬だけでなく高額な仕事も請け負えるようになる。その報酬が普通の仕事よりかなり高いため冒険者を志す人間は多いが、それに挑めるだけでもランクとか以前にそれなりに優秀な冒険家でなければならない。

 ファースはノジローのように故郷の村のためにお金を稼ぎたいと言う冒険者は山と見て来たつもりだが、その冒険者たちを作為不作為にせよ踏み越えて来たのが自分を含む「不死鳥の頭」である。何事も一人の勝者の下に多くの敗者の屍があるものだが、誰だってその屍にはなりたくない。なりたくないために各々腕を磨き、スキルを振りかざす。「保険」もまた、そのスキルの一環のはずだ。


 そんな事を考える間にも、ノジローはファースの忠告通り銀貨を懐に入れ箱も何となくファースに渡す。ファースもまた使えるかもしれないしと受け取り、足取りの軽くなったノジローを追いかける。


 そしてそのまま、ついにと言うには簡単に終着点にたどり着いた。



「これ…」

「ああ、間違いない」



 木の芽の形の紋章。

 冒険者として一歩を踏み出したのだと言う事を示すように、冷たいはずの石に掘られたその紋章は水色に輝いていた。いや本来はもう少し濃く青く輝くはずだったのかもしれないが、これまで多くの冒険者に触られて来たせいかやや弱まっていた。それでも新米に存在を認めさせるには十分であり、ノジローも黙って手を触れた。


「あー」


 だがノジローの顔にも声にも、いまいち達成感がない。

 保険のおかげとは言えあっけなく行きすぎたのかとファースは思ったが、次の瞬間目を見開いた。


 


 宝箱だ。

 しかもさっきのそれとは訳が違う、明らかに豪華なそれ。


 ノジローの目は、明らかにそっちに向いていた。




「帰るぞ!」

「ダメ!」

「ダメじゃないだろ!」


 こんな分かりやすい場所に置いてあるのはなぜか、目的を達成しているのだからそれ以上を無暗に求めるな!

 必死にノジローの手首を引っ張ろうとしたファースだったが、保険が二重にかかっているノジローに追い付けるはずがない。


 ノジローは、宝箱を開けてしまった。




「アーッハッハッハッハ!」

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