(元パーティー)ダンジョン踏破失敗
ざまぁのターン、パート2!
「ったくどうしてこうなるのよ……………………!」
クツノイは、拳すら飛ばしたくないほどに頭に来ていた。
Aランクパーティーらしくもない安宿の部屋で、唯一まともに動く舌だけを動かしながら壁にもたれかかる。
コクチョとアタムロも似たような調子で、ため息ばかり吐きながらかろうじて背筋を伸ばす。
失敗。
他にどう言いようもない結果。
それこそ「不死鳥の頭」が「不死鳥の頭」と名乗るようになってから、と言うかパーティ名も名乗れない時代から数えても初めての失敗。
余裕のつもりで臨んだ地下七階のダンジョンの、わずか地下二階でのリタイア。道中の段階でひどく消耗し、宿屋に入って来た時は既にこの有様である。当然宿の主人たちにもあの不死鳥の頭がどうしたんだと言われたが、つい調子に乗ってと嘘ではない返答で追い払った。
「今日は一体何なの……!」
「本当ですね」
「俺だってそう言いたいよ!」
三人とも、言いたい事は同じだ。
—————こんなはずじゃなかった。
「なんでだろうな、せっかく身軽になってひょいひょい進んだのによ」
「あの口ばっかりの奴がいなくなって本当に何もかもうまく行くと思ったのによ」
三人して足を投げ出しながら嘆く。
混乱ならここに帰って来るまで目一杯して来た。
どうしてこうなったと誰にも見られないまま十秒に一回つぶやきながら十分歩き、もう十分無言で無表情のまま歩き、さらに十分かけて顔だけでも取り繕った。さらにその道中でモンスターに襲われ体力を減らし飲み干した回復薬のビンを捨てずに背負いカバンに放り込み、重くなった足で進む。苦虫を嚙み潰したようと言うか食い潰したような顔で三人して歩き、その敗北の色を消すまで三十分かかった。
要するに、延々一時間以上敗戦を引きずっていたのである。
「何なんだよ一体……」
「何って、いきなりモンスターに襲われたのにちっとも対処できなかった事?ダンジョンであっちこっちぐるぐる回ってたかが地下二階であきらめるはめになった事?ついでに帰り道に奇襲喰らって無駄に回復薬を使ってしまった事?」
「…全部だ」
「本当何なの一体!何が悪かったと言うの!運とか言わないでよ!」
「…………」
「押し黙るんじゃないわよ、と言うか運だって言いたかったわけ!?」
実質四文字しか喋らないコクチョ、無言をもって肯定に変えるアタムロ。
そのふたりの百倍近く喋ると言うか怒鳴るクツノイ。
そこに、Aランクパーティー・「不死鳥の頭」の姿はなかった。
「いや、それはあれです!ファースです!ファースとか言うお荷物がいなくなった事でもっと楽に行けるのではないかと思い込んでしまったのです!」
そしてアタムロが重苦しい空気を壊すようにそう見栄も外聞もなく叫ぶと共に、クツノイの顔から急に赤みが消えた。
「そう、だな……」
「そうよね。あいつがいなくなって気持ちが大きくなってねー」
「浮かれ上がり過ぎた、としか言えません……」
「浮かれ上がった、か……そうだな、それしか思い付かねえ……クツノイは」
「同じく…!」
散々口うるさいくせにちっとも役に立たないお荷物を放り出して身軽になったのに、なぜこうなるのか。
いや違う、もうずっとお荷物に過ぎないと思っていた存在を放り出すと言う悲願を達成してしまったゆえに、何をやってもうまく行くと思い込んでいた—————。
三人の見解は、随分とあっけなく一致した。
ファースとか言うレベル3の戦闘職でも何でもない「保険屋」のくせにああだこうだと悲観的な事ばかり口にするし、そのくせ保険がどうとかとやたら恩着せがましい。誰のおかげで暮らせてると思ってるんだとか言ってやった事は一度や二度ではないくせに、最後の最後までそのスタンスを変えようとしない。
もしファースがいなければ三年どころか三十カ月でAランクパーティーになれたのにとかファースに聞かせる形聞かせない形でつぶやきまくった事はそれこそ五度や六度ではない。
「いっその事今からでも金を巻き上げたら」
「それはいけません!」
「ジョークだっつーの、そうだろ」
「そうよそうよ、アタムロもお堅いんだからははははは」
「ははははは」
「ははははは」
クツノイは笑っていない目のままHとAを5連続で出し続け、リーダーのはずのコクチョと、アタムロも追従する。
そしてその5連続は失敗を追い出し、笑顔を作った。
冒険者となってから初めての失敗だったにもかかわらず、三人の関係は相変わらず良好だった。




