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戦う男
午前六時二十五分。私は目覚まし時計がジリリと鳴る、そのジの部分で飛び起きる。寝坊などしない。私は仕事に生きがいを感じているのだ。紺一色で揃えたスリーピースのスーツを着て、襟元をピシリと整える。海外ブランドの高級スーツはファッションに疎い私を思って妻が仕立ててくれた。仕事一筋である私に文句の一つも言わない出来た妻である。ブリーフケースの中にはいくつかの資料と、いつのまにか入れられている今日の弁当とハンカチ。感謝の言葉と行ってきますの挨拶をモゾモゾと言って、私は玄関から飛び出した。眩しい朝の光が私を迎える。さあ、今日も一日頑張ろうではないか。
――気が付くと私は病室で目を天井へと向けていた。ベッドの横には、どこか見慣れた顔をした老人が座っていて私の手を握っている。
老人が優しげな声を出した。「おはよう……。すっかり寝坊しちゃいましたね」




